カタルーニャの5歳の幼児がスペイン語授業を要望し、差別の被害に

12月10日、カネット・デ・マールの街頭で行われた、学校でのカタルーニャ語のデモ
出典:El Periódico

カタルーニャで5歳の幼児がスペイン語による授業を要望

カタルーニャの独立問題に絡む出来事としてつい先日、カタルーニャの人口1万4000人の都市トゥロー・デル・ドゥラックにある小学校の幼稚園部の5歳の幼児が教室での授業で、その25%はスペイン語(カスティーリャ語とも表現される)による授業を要望した。

それがカタルーニャで差別問題に発展。カタラン語を擁護する同学校の生徒の親たち、州警察の独立支持派の警官、さらに州政府から差別を受けるという事態が起きている。しかも、該当する小学校の前でスペイン語の受け入れに反対する集会を独立擁護派が開いたのである。

差別の対象にされているのは僅か5歳の幼児だ。それとその幼児の両親だ!

正常な社会だとそのようなことは起きないはず。ところが、2014年頃からプロセスと称してカタルーニャの独立を推進して来た人たちにとって、それに釘を刺すような動きには敏感に反応するのである。

カタルーニャの高裁は最低25%のスペイン語による教育を義務づけた

そもそもこの幼児を差別することの発端になったのは、この幼児の両親がカタルーニャでの学校教育の一部はスペイン語で行われるべきだと要求してカタルーニャの高裁に訴えたことだ。その根拠になったのは、スペイン憲法第3条において「スペイン語はスペインの公用語であり、全てのスペイン人がそれを知る義務があり、それを使用する権利を持っている」と規定されているということ。

更に、昨年11月のスペイン政府による教育法の改正で、「学校ではスペイン語並びに自治州が指定する言語による教育を保障する」と規定されていることからである。

ところが実際にはカタルーニャ州では大半の学校でスペイン語による授業が行われていないというのが現状である。その不満をこの両親が高裁に訴えたということなのである。

その結果、カタルーニャの高裁は昨年12月、カタルーニャ州における学校教育の少なくとも25%はスペイン語による教育が実施されることを義務づけたのである。それは語学の授業だけではなく、全ての科目において適用されるべきだとした。ところが、スペイン語による授業の実施に全く関心のない州政府はこの判決を不服だとして上訴した。が、却下された。

このような背景があった上で、今回の5歳の幼児によるスペイン語による授業の要望したということから、カタルーニャの独立派がまた気炎を上げたのである。

最初に反応したのがカタルーニャ州警察の中の独立派のチーフのひとりアルベル・ドナイレ氏である。彼は「この子供はクラスで完全にひとりぼっちにさせるべきだ。スペイン語で授業をしようとしたら、他の生徒はクラスから出て行くべきだ。反発しようではないか。それとも言語(スペイン語)が我々を負かすようになるのを好むのか」と述べたのである。

驚くべきことは、僅か5歳の幼児に対して市民の安全と治安を守るべき州警察のチーフという身分の警官がこのような反応を示したことだ。しかも、それを州警察の上司が許すというのは、カタルーニャの社会そのものがもう異常でしかないということだ。

この州警官はカタルーニャのすべての学校に対し、高裁の判決に従わないように訴え、またその権利を要求する親たちに対し激しいメッセージでもって応酬すべきだとした。

ジャーナリストでユーモア作家でもある独立派のジャイル・ドミンゲス氏は学校でゲットーを作るべきだと表明し、「(スペイン語の授業を要求する)家族の子供たちだけを一緒にして一つのクラスに入れることだ。そこでは100%スペイン語の授業をやればよい。そこからノーベル賞でも出ることだろうよ」と皮肉った。文化人であろう人物がゲットーをやれと言っているのである。これも異常でしかない。

また料理研究家でバルセロナ自治大学の元教師ジャウメ・ファブレガ氏は「あの子供の家に投石することに私も参加する。スペイン語を喋って優越感に浸る奴はいらない」と語った(12月6日付「リベルターディヒタル」から引用)。元大学の講師の身分だった人物が問題の家に投石することに賛成しているのも異常でしかない。

更に、州政府のパトゥリシア・プラッジャ報道官までが批判に乗り出し、「それは学校の(カタラン語を望む)大半の生徒とその家族の権利を明白に中傷するものだ。一人の生徒が望む言語に他の生徒が従う義務はない」と述べたのである(12月8日付「ABC」から引用)。

州政府のジュセップ・ゴンサレズ・カムブライ教育長官も問題の学校を視察し、学校の責任者と2時間に亘る会談を持ったが、その後のスペイン語によるジャーナリストからの質問には一切回答を拒否した。カタラン語で尋ねる質問だけに応じたのである。 

スペイン語教育の擁護市民団体は差別を受けた幼児と家族の為に始動

カタラン語とスペイン語のバイリンガルを擁護する2つの組織「カタルーニャ市民社会」と「バイリンガル学校の為の議会」は12月7日、マドリードの教育省の建物の前に集合してカタルーニャ高裁での判決を州政府が順守するようにスペイン政府が指令することを要求した。というのも、州政府自体がバイリンガルを要望する両親とその子供を差別することを擁護しているからである(12月7日付「ザ・オブジェクティブ」から引用)。

今回はひと家族だけが差別の対象にされているが、他にもバイリンガルを望んでいる生徒を持っている両親は多くいる。しかし、周囲から差別されることを恐れてこれまでそれを表に出さないのでいる。また、州外の学校に移転して合宿生活を送るようにした生徒もいる。当然その親たちも差別を受ける。経営していた店を閉めねばならなくなった親もいるという。

カタルーニャ市民社会の会長は「55%のカタラン人はスペイン語がルーツだ」と指摘している。それが意味するものは、1950年代からスペイン語を話す他の地方から仕事を求めてカタルーニャに移住した家族が多くいるということなのである。特に、移住民の多いバルセロナ県ではスペイン語を喋る年配者が多くいる。彼らが移住者である。しかし、その息子や娘たちはカタラン語を喋って生活するようになる若者もいれば、家庭内では常にスペイン語を喋っている関係からスペイン語を日常生活でも使うようにしている若者もいる。

スペイン政府がこの問題に毅然たる姿勢を示さない理由

今回の差別問題を前に、なぜスペイン政府が毅然たる姿勢でもってカタルーニャ州政府に高裁が下した判決に従うように指令できないのかという理由は、来年度予算の議会承認で過半数の議席を満たすにはカタルーニャ州政府の独立派政党の下院議員からの賛成が必要だからである。

本来であれば野党第1党の国民党からの支持を得れば過半数には十分に達するのであるが、社会労働党と極左ポデーモスの連合政府はカタルーニャとバスクの独立支持派政党からの賛成を得る方を選んでいる。元テロ組織エタと関係している政党ビルドゥからも賛成も得ることになっている。その為には賛成票をくれる代わりにその交換条件が必要となっている。カタルーニャの場合はその交換条件のひとつがカタルーニャの政治にスペイン政府があまり干渉しないということである。

情けないかな、これも政権維持に執着するサンチェス首相の判断がそうさせているのである。そこには国家の統一を犠牲にしていることは明らかである。

野党の国民党、ボックス、シウダダノスの3政党はEU委員会でこの問題を調査させるべく始動した。

問題の幼児と家族は身の安全を求めて高裁に保護を要求し受理されている。

カタルーニャで独立への動きが消えない限り、州民は独立支持派と反対派に二分し、州外に本社を移転させた企業もカタルーニャに戻って来ることはない。また、外国からの投資も今後も期待できない状態が続くだけだ。よってカタルーニャの経済は後退を続けるだけである。