このブログを始めて17年、ネット上で日記を書き始めて21年。毎年の恒例企画、今年の振り返りを。
ふと岡崎京子の『ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね』(平凡社)を思い出す。この本の中身というよりも、この秀逸すぎるタイトルを、だ。振り返りをしようとしても、何かこう呆然としてしまい、あまり思い出せない。そうだ、昨年の今頃は年末年始に感染者が増え、年明けとほぼ同時に緊急事態宣言だった。新年の講義が突然、完全オンラインになり。通勤の手間が減ったことをこっそり喜びつつも、ひたすら戸惑ったりもした。4年生向けの最後の講義もオンラインだった。懐かしい。
新聞の2021年振り返り特集を読みつつ、国内外で、政治経済、さらには文化など様々な分野でたくさんの出来事があったのに、すっかり忘れてしまっている。
それは時代のスピードが速いからか、歳をとったからか。バイデン大統領就任も、ミャンマーのクーデターも、アフガニスタンの首都をタリバンが制圧したのもトランプ支持者が議事堂を選挙したのも、中国恒大の危機も、もちろん、コロナの感染者が世界で爆発したのも今年なのに、すっかり忘れてしまったかのような気分でいる。
東京五輪、大谷翔平や松山英樹の活躍も今年なのに、やはり忘れてしまったかのような気分でいる。そういえば、夏までは菅政権だった。
いや、実際には忘れているはずはないのだけど。ものすごいスピード感で動いていく中、先行き不透明感がある中、いかに冷静さと情熱のバランスを保つのか。それが問題だ。
個人的には、今年も執筆の仕事がはかどらなかった。本来であれば、数冊本が出ているはずだったのだが。大学の仕事に忙殺され。さらに、限りなく専業に近い主夫として、家事労働と向き合い続け。
テレワーク疲れで妻が体調を崩し、そのケアもあり。仕事も家庭も、目の前のことで精一杯だった。家族全員が濃厚接触者になり、何もできない時期もあった。
オミクロン株の脅威が目の前にありつつも。いったん感染拡大もおさまり。人と会う機会が増えた11月、12月だった。いや、ここで安心しても、よくないし、未来は先行き不透明なのだが。
とはいえ、「生感」によって自分自身を再確認する。いちいち愛と怒りを胸にできるような、いちいち感動できるような、そんな感性と体力を大切に。
朝日新聞コメントプラスがいい感じになってきたこと、本を書こうという気力と体力が戻りつつあること、買い物依存症が一段落しつつあること、自分の立ち位置がはっきりしてきたこと、娘や教え子の成長などがよい兆し、かな。久々に若い友人と会い、「常見さんはこれからどうするんですか?」という言葉にハッとしたり。
さ、今年は年男。なんせ、本を書く。勤務先も家族も大事だけど、自分のことを大切にする度合いを少しだけ上げようかな。
昨年もお世話になりました。今年もよろしくおねがいします。
編集部より:この記事は千葉商科大学准教授、常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2021年12月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。