近くて遠い朝鮮半島の今

「近くて最も遠い国」といえば北朝鮮なのですが、最近は韓国もとみに遠い国になってきたようです。理由は日本人の韓国への積み重なる不信感やコロナでの人的交流の激減はネガティブでした。韓国のニュースも芸能やエンタメ以外、極めて少なくなり、話題にならなくなったことは大きいと思います。

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長年本ブログをお読みの方はご承知と思いますが、朝鮮半島問題については私も一過言ありますが、最近は書きたいという気すら起きず、ブログネタとしてしばし振っていませんでした。

ここにきて韓国の大統領選が3月9日と2か月後に迫っていること、北朝鮮が意味不明の弾道ミサイルを一発飛ばしたことを含め、朝鮮半島の様子を伺ってみましょう。

まず、韓国の大統領選です。相変わらずのドタバタ劇で小学生の学芸会のようなレベルに見えるのはいつまでたってもかの国は変わらぬのだということを改めて示したのでしょう。今回の寸劇は野党の有力大統領候補、尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏の大失速です。理由は2つ、1つは選挙選挙対策委員会が解散に追い込まれたこと、もう1つは尹候補の妻、金建希氏の経歴詐称問題で妻が12月末に謝罪会見をしたことです。与党としては「こんな妻がファーストレディーの候補か?」とネガキャンペーンをはり、いつもの韓流ドラマのような状態になっています。

選挙対策委員会の解散の方は私の読み取る限り、いつもの内紛で権力闘争だったとみています。特に尹氏は個性が強いので選対のトップ、金鍾仁氏が実力で請われたことでガチのぶつかり合いとなったとみています。世論調査から見ると尹候補の大統領の芽は7割方、消えたのではないでしょうか?

現状を見る限り与党候補の尹錫悦(イ・ジェミョン)候補が順当に大統領になるように見えます。第三の候補である安哲秀(アン・チョルス)候補も毎度選挙に出ており、現在は支持率が2番になっているのですが、いつも攻め方が下手というか、意固地なところで損をしてきました。仮に尹候補が安哲秀氏に野党候補一本化を託したとしても安氏の「国民の党」そのものが野党の泡沫に近い政党だけに情勢は変わらないとみています。

とすれば文政権をあれだけ叩き、ことあるごとに文句を言ってきた国民も結局、また与党「共に民主党」にすがることになるのかもしれません。その李在明氏は文氏と同様、日本とは相当距離感がある発言を繰り返しているので日韓関係の進展はほとんどない、とみてよいと思います。

日韓関係が動くときは歴史的に見ても韓国世論が変わる時しかなく、それは中国との関係が悪化した時か日本との関係が喉から手が出るほど欲しい時のどちらかしかありません。つまり日本から働きかけてもよくなることがないのが日韓関係の歴史だとみています。徴用工問題や10年目を迎えた慰安婦像問題などを抱えている中、日本から歩み寄ることは考えられないのでメンタル的には「最も近くて最も遠い国」となりそうです。

さて、北朝鮮ですが、忘れたころに一発、弾道ミサイルを放ちました。昨年10月以来ですが、この弾道ミサイルの政治的意味合いは小さいとみています。敢えて言うなら世界の目が北朝鮮に向いていないので気を引くために花火を打ち上げたとも考えらますが、軍事的実験の一環とみた方がよいのでしょう。北朝鮮の国民の疲弊度は限界に達しており、最近では金正恩氏の悪口を書いた落書きが見つかるなど不満感は相当溜まっているものと察します。とすれば国内向けの「ガス抜き」とも取れます。

北朝にももう少し国力があれば暴発する選択肢もあるのですが、腹をすかせた戦士では筋肉どころか「骨皮筋右衛門」でしょう。また金委員長が求めるアメリカとの対話もバイデン氏の放置プレーでにっちもさっちもいかないため、手詰まり感が強いとみています。アメリカの中間選挙でバイデン氏の不人気ぶりが結果に出たとしても大統領任期はまだ2年残っているわけで北朝鮮は我慢の数年になるのではないかと思います。

一部ではアメリカが南北和平工作を少しずつ進めているとも言われますが、韓国大統領選を控え、少なくともそれがあったとしても表面化するには早くてもアメリカ中間選挙以降の話と思われます。

最後に中国から見た朝鮮半島ですが、習近平氏にとって難問山積の中、半島情勢は優先課題ではない上に中国政府も「半島は面倒くさい」ことを察知しているので政治的にメリットがあるタイミングが来るまでやはり放置プレーではないかとみています。

2022年もあの半島が大きく変わることはないとみています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年1月6日の記事より転載させていただきました。