大離職時代、11月は低賃金職がけん引し過去最多

大離職時代=Great Resignationを迎える米国で、驚きの数字が上がってきました。以下、米11月雇用動態調査をおさらいしていきます。

米労働省が発表した米11月雇用動態調査(JOLTS)によると、求人数は1,056万人と過去最多を更新した前月の1,109万人(修正値)を4.8%下回った。過去4ヵ月間で3回目の減少となる。求人数は7ヵ月連続で失業者数を上回った

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チャート:求人数と失業者数の推移

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(作成:My Big Apple NY)

採用数は前月比2.9%増の670万人だった。過去5カ月間で2回目の増加を迎え、過去最高を更新した6月の683万人に近い水準となった。

離職者数は627.3万人と、前月の589.1万人(修正値)6.5%上回り過去6ヵ月間で5回目の増加となる。離職者数を押し上げたのは定年や自己都合による自発的離職者で前月比8.9%減の453万人と過去最多を更新した。解雇者数は137万人、過去最低をつけた前月の135万人から1.4%増加した。

雇用者数に占める求人数を表す求人率は6.6%と、過去最高に並んだ前月の7.0%を下回った。採用率は前月まで3ヵ月連続で4.4%だったところ4.5%とへ上昇、6月につけた過去最高の4.7%に近付いた。

チャート:求人数は減少も高止まりを維持、採用数は過去3番目の高水準ながら乖離は続く

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(作成:My Big Apple NY)

自発的および引退、解雇などを含めた離職率は4.2%と、前月の4.0%を上回った。自発的離職率は3.0%と前月の2.8%を超え、過去最高に並び、離職率を押し上げた格好。解雇率は4ヵ月連続で0.9%となり、統計開始以来で最低を保った。

チャート:自発的離職者数、引き続き離職者数を押し上げ。

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(作成:My Big Apple NY)

自発的離職率は3.0%と過去最高だったが、内訳は以下の通り。デルタ株の感染拡大が収束したというのに、娯楽・宿泊が6.4%と前月の5.4%から上振れし全体を押し上げた。続いて小売、輸送・倉庫が並ぶ。13業種中では、8種が前月を上回った。11月26日に南アでオミクロン株が検出された影響が考えられるが時期的に限定的であれば、より高い賃金を求め離職した可能性を示唆する。同時に、感染拡大を受け今後さらに増加するリスクをはらむ。

チャート:自発的離職率、対面サービスを提供する低賃金職が上位を占める

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(作成:My Big Apple NY)

求人数の高止まりの割りに採用者数が伸びず、失業者も低水準とあって、有効求人倍率は2.51倍と2ヵ月連続で急伸し過去最高を更新した。自発的離職率を背景に大幅に上昇し、賃上げ圧力の長期化を示唆する結果といえよう。

チャート:有効求人倍率、求人数の急増を受け指数関数的に上昇

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(作成:My Big Apple NY)

――12月FOMC議事要旨では、早期利上げや量的引き締め(Quantitative Tightening)が取り沙汰されていましたが、Fedをタカ派にシフトさせずにはいられない結果となりました。賃金インフレ収束に時間が掛かる雲行きに加え、オミクロン株感染拡大に伴い就業者がさらに減少するリスクが浮上。3月FOMCでの利上げ開始の織り込み度は、約8割まで上昇してきました。パウエルFRB議長率いるFedがこのままタカ派路線を突き進むのか、米12月雇用統計の結果が待たれます。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2022年1月6日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。