米12月小売売上高は前月比1.9%減と、市場予想の0.1%増に反し減少した。前月の0.2%増(0.3%増から下方修正)に届かず、4ヵ月ぶりに減少。豪雪の影響で急減した2月に続き、年間で2番目に大きな落ち込みとなる。自動車とガソリンを除いた場合は2.5%減と、前月の0.1%減(0.2%増から上方修正)より下げ幅を拡大。国内総生産(GDP)の個人消費のうち約4分の1を占めるコントロール小売売上高(自動車、燃料、建築材、外食などを除く)は3.1%減と、市場予想の0.1%増に反し減少しただけでなく、10ヵ月ぶりに大きな減少率となった。前月も上方修正(0.1%減→0.5%減)と、2ヵ月連続で減少した。敗因は、①オミクロン株の感染拡大、②インフレ高進、③年末商戦をめぐる需要の先食い、④供給制約に伴う在庫薄――などが挙げられよう。
チャート:米12月小売売上高、年間で4回目の減少に
内訳をみると、主要13カテゴリー中、前月比で3種のみが増加し、11月の速報値時点での10種を下回った。逆に、最も落ち込んだ費目はコロナ果で恩恵を受けたはずの無店舗で、年末商戦のスタートである感謝祭からサイバーマンデーまで、オンライン売上高がセール前倒しによる需要の先食いなどを受け予想以下でだったように弱い結果となった。家具やスポーツ用品・趣味等など、前月好調だった費目も反動減に直、供給制約による在庫不足を受け面。オミクロン株感染拡大の影響で、外食は2ヵ月連続で減少した。費目別の詳細は、以下の通り。
(プラス項目)
・雑貨→1.8%増>前月は0.7%増、6ヵ月平均は1.8%増
・建築材/園芸→0.9%増<前月は2.2%増、6ヵ月平均は1.1%増
・ヘルスケア→0.5%増<前月は0.9%増、6ヵ月平均は0.1%減
(マイナス項目)
・無店舗(オンライン含む)→8.7%減、2ヵ月連続で減少<前月は0.5%増、6ヵ月平均は0.9%減
・家具→5.5%減>前月は0.5%増、6ヵ月平均は0.4%減
・スポーツ用品/書籍/趣味→4.3%減<前月は2.1%増、6ヵ月平均は0.5%減
・服飾→3.1%減<前月は1.2%増、6ヵ月平均は0.2%減
・電気製品→2.9%減>前月は9.7%減、6ヵ月平均は2.4%減
・一般小売→1.5%減<前月は1.2%減、6ヵ月平均は0.2%増
(*百貨店は7.0%減、2ヵ月連続で減少<前月は5.5%減、6ヵ月平均は1.6%減)
・外食→0.8%減<前月は0.6%増、6ヵ月平均は0.4%増
・ガソリン・スタンド→0.7%減>前月は2.2%増、6ヵ月平均は2.1%増
・食品/飲料→0.5%減<前月は0.4%増、6ヵ月平均は0.5%増
・自動車/部品→0.4%減<前月は0.2%増、6ヵ月平均は0.7%減
チャート:12月、費目別の前月比
――インフレ高進という下駄を履いた名目の数値ながら、米12月小売売上高は衝撃的な落ち込みを記録しました。お陰で、一般小売に含まれる百貨店は20年2月比で10ヵ月ぶりにマイナスに落ち込む有様。その他、電気製品(20年2月比0.2%増)もマイナス圏へ接近しつつあります。
チャート:12月小売売上高、費目別の20年2月比
チャート:20年2月比のコロナ禍以降の推移、全体的にQ4から伸び悩み傾向
単月の結果とあって、個人消費が今後下方トレンドに傾くと結論づけるのは当然ながら時期尚早です。しかし、実質賃金がマイナスで貯蓄率もコロナ禍以前の水準まで低下し、インフレが高止まりするならば、個人消費の伸びが鈍化してもおかしくありません。しかも、バイデン政権肝煎りの社会保障・気候変動対策向けの1.75兆ドルの歳出法案の議論が棚上げされる状況では、子育て世帯向けの税額控除額は2021年の3,000ドル(6歳以下は3,600ドル)から、今年は2,000ドルに削減されます。家計の財政支援効果が低減するなか、個人消費には逆風が吹きつけつつあります。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2022年1月14日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。