私は書籍の輸入販売事業も展開しているので今週発表された芥川賞、直木賞、更には本屋大賞のノミネーションの発表は書籍業界として興味深いものがありました。直木賞受賞2作品はともに戦国時代の話で本を読まない世代の人には厳しいかもしれません。芥川賞受賞作品は現代の時代背景にマッチしています。本屋大賞候補作品は読みやすい作品が多いのが特徴です。しかし、多くの読者ファンが待ち望むのは図書館で読むか文庫本待ち。今時、単行本が売れる時代ではありません。価格も高いけれど家に書籍が増えれば邪魔になる、ここに出版社が気がついてほしいです。
では今週のつぶやきをお届けします。
午前と午後で天気が変わる今の株式市場は異常事態
東京市場の木曜日と金曜日の値動きは迷走を重ねたと申し上げてよいでしょう。まるで指南役がなくてどうしてよいかわからないお手上げ状態でした。ニューヨーク市場ではその動きがもっと顕著です。金曜日の主役は何と言ってもネットフリックスの大暴落で前日比22%安となっています。ここまで売り込まれるのか、というより信用で買っている人たちがギブアップし、ショート筋が追い打ちをかけているというのが背景かと思います。
ただ、私が要注意銘柄とみているのはアマゾンでGAFAMで本日先陣を切って年初来安値をつけたこの会社の株価が崩れる可能性はあります。私の見立ては配達コストの上昇による利益圧迫の可能性です。ここが崩れるとナスダック銘柄は本当に厳しくなります。一方でFRBはそれでも本気で金融政策を加速度的に引き締めるつもりなのか、これが疑問なのです。コストプッシュ型のインフレは決して消費者の懐が温かいことにはなりません。特に一般大衆は株式や暗号資産投資などであぶく銭を稼いできたわけですからそれらが急速な逆回転をすればプラスが消えるどころか大きなマイナスを抱え、立ちいかなくなる人も増えるでしょう。
世界情勢もきな臭い話があちらこちらにあります。私はFRBがまだある程度、変心する可能性はあるとみています。市場関係者も決算発表に併せ、先行きの読み合い様相となっており、一日の株価の動きが数百ドルや数百円になり、午前中大きく上昇して午後に急落、あるいはその逆といった乱気流状態がしばらく続くとみています。一般の投資家はできれば参入を避けるべき市場環境にあるとみています。
「佐渡金山」文化遺産登録問題の行方
世界文化遺産の登録候補として今年は「佐渡金山」があったのですが、政府としてその登録申請を見送る方針と伝えられています。その理由が「関係国との調整が出来ていない」(外務省)です。関係国とは韓国で強制労働の舞台だったという一件が残っているという訳です。ところが申請自体は「江戸時代までの佐渡金山」という計画で、あの時代はかの国の懸念対象にならないのではないか、という意見も出て各方面から異論百出です。
強制労働という言葉のニュアンスもおかしいです。そもそも半島労働者もきちんと賃金をもらっていたのです。これは慰安婦問題も同じなのですが、彼らはもらうものをもらっています。(誰がもらったかは別問題です。)それをこねくり回して文化遺産とごっちゃになってしまったのは残念無念ですが、外務省の「事なかれ主義」にも当然厳しい声が出てくるでしょう。何度も言うようですが、岸田、茂木、林各氏は外務大臣経験をしながらも非常に軟弱姿勢で目に余るものがあります。特に茂木、林両氏はリベラル思想だろうと思わせます。その林氏が将来は首相の座を狙うというのですから悩ましい時代です。
ただ、外務省の懸念もわからないでもありません。かの国はとにかくうるさいのです。それにしつこいし感情論だけで論理的説明ができません。そしていつの間にか世界中で声を上げ、「日本はひどい、弱い者いじめ」とあることないこと好き勝手言いたい放題なのです。それに対して誰が声を上げるかといえば外務省だけで援軍がありません。一方、自民党の外交部会が頭に湯気を立てて「弱腰外務省!」と後ろからせっつくのがパタンです。かの国は人海戦術、ウソでもでっかい声を上げれば本当に聞こえる、というやり方には私も当事者の一人として困っているのであります。
人材の選別競争が始まった
この1年、現業についていて一番感じるのが従業員の質です。長く務めている人は社会の変化に少しずつ対応してきているので経験と積み重ねをする余裕がありました。ところが新規や若手で採用するとレベルに大きなギャップがあり、時としてキャッチアップ出来ないのです。日経ビジネスのインタビューでサイバーエージェントの藤田晋氏が「小粒になっているのではなく、やることが難しくなっているんです」「当社も、スピードと情熱で突っ切れるという分野を新入社員にも任せながらやってきたんですが、新規事業としてOKを出せる領域が本当に狭くなった」と述べています。その通りかと思います。
社会の要求度が異様に高くなってきています。クオリティもスピードも求められます。例えばメールの返事は内容次第で30分以内で返すようにしています。メールの長さもしっかり説明するときと1-2行で読み切れる即レスの2つを使い分けます。現場のスキルやノウハウは「教えてもらったことがないこと」だらけなのです。それだけ覚えるべき新領域が増えたわけですが、それを未経験者に「勉強不足」というのは酷。かといってできない分を補うため更に人を補充する余裕もないとなれば作業が遅延するとういうのが世の流れです。日本はそれでも予定通りに動くのかもしれませんが、北米はもはや「予定は未定」の世界です。
年末私どもの事務所ビルでエレベーター6基全部が浸水し、歩いて13階まで通っていた話をしたと思います。幸いにして1基は直ったのですが、残りは修繕に3カ月の診断。理由は部品も人もないと。部品は半導体の問題だろうと察しています。こうなると業者も忙しさを通り越えて開き直りの域になり、できないものは出来ないとなります。航空便が数日送れようが船便の通関で3週間かかろうが関係なしなのです。何が起きたか、一言で言えばIT技術の発展と労働者の技術知見処理能力のギャップだとみています。これは必ず社会問題になるでしょう。労働の質は同じでも会社やITがより効率を求めます。つまり、IT化のパラドックス、これが私の水晶玉に映って見えます。
後記
世界中、各方面で値上げラッシュになっています。2%のインフレは黒田総裁の意図に反してすぐに到達するかもしれません。私は4月からのマリーナ年間係留料の最終調整をしていますが、コストプッシュの部分だけで5%、今後の上昇見込み分も考えると6-8%程度の上昇を提示することになります。これに文句を言う客もいません。売る側も買う側もほかに選択肢がないからです。これが今のインフレの最大の問題点で他に逃げ道がないのです。インフレに慣れていない日本では春以降、悲鳴が聞こえるかもしれません。参議院選の主題はそこになるかもしれません。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年1月22日の記事より転載させていただきました。