中米ニカラグアの中国との国交復活で台湾の外交は多難に

中米ニカラグアの中国との国交復活で台湾の中米における国交ある国は僅か3か国に減少した。

中米の中国との国交樹立はコスタリカが引き金

2007年まで中米諸国は台湾と同盟関係にあった。ところが、同年コスタリカが60年間の親交を深くしていた台湾と断交。中国と国交を結んだのを皮切りに、中米諸国はコスタリカの後を追うようにして中国と国交を結んで行った 。

当時のコスタリカの大統領オスカル・アリアス氏は台湾を蹴って中国と国交を結んだのは将来の経済成長を図るには中国との関係強化が必要であると考えたもので、政治的イデオロギーによるものではないとした。

またそれを容易にしたのも当時ニカラグアはダニエル・オルテガ氏(同国の現大統領)の主導による革命政権が誕生していたが、米国はそれを打倒しようとして反主流派を背後から支援して双方の間で紛争が生じていた。オスカル・アリアス氏は米国の姿勢を批判し、1987年和平条約の締結に主導的な役割を果たした。この貢献によって彼は同年ノーベル平和賞を授与した。

それ以後もアリアス氏は米国とは疎遠な関係にあり、同国が支援する台湾と断交することに米国からの圧力は弱く中国との国交樹立にはそれほどの支障はなかったということである。

コスタリカに続いて2017年にはパナマ、2018年にエルサルバドルがそれぞれ台湾と断交して中国と国交を結んだ。そして先月12月にニカラグアが30年の台湾との外交関係に終止符を打って同じく中国と国交を結んだ。

ニカラグアが中国との国交を30年振りに復活させた

1985年にダニエル・オルテガ氏が政権に就くと、それまで55年間の台湾との関係を断った。しかし、その5年後に当初の予測を裏切ってビオレタ・チャモッロ氏が選挙に勝利して大統領に成ると、彼女は再び台湾との外交関係を復活させた。それが今日まで続いていたのであった。そして今月ダニエル・オルテガ大統領は再び中国と国交を結んだということである。

台湾の大使館職員の退去に伴い大使館の建物とそれに関連した資材を首都マナグアの大司教区に寄贈した。ところが、オルテガ氏は外交慣例を無視してそれを没収し、中国に譲渡したのである。これには台湾政府は憤慨し国際裁判所に訴えることを検討している。

オルテガ氏の有力対立候補者は全員拘束

因みに、ビオレタ・チャモッロ氏の娘クリスチアナ・チャモッロ氏が昨年11月の大統領選に立候補する予定であったが、オルテガ政権は彼女を拘束して自宅軟禁させた。彼女の家族からの影響力を警戒して彼女を収監することはオルテガ氏も恐れたのであろう。オルテガ氏は彼女以外に有力候補者は全員拘束した。

チャモッロ家はニカラグアでは最も裕福な家族であり、最も影響力を持っている家族だとされている。しかも、これまで5人の大統領を出している家系でもある。だからクリスチアナ・チャモッロ氏が大統領として立候補する意向であることが明らかになった時点でオルテガ大統領は彼女を最も警戒を要する強敵の登場だと見なしたのであった。

台湾と断交した理由

オルテガ氏が台湾と断交を決めた発火点となったのは、昨年11月の大統領選挙でオルテガ氏が75%の得票率で再選されたが、米州機構(OSA)がそれを不正選挙による結果だとして批判したことだ。それを不服だとしてニカラグアは同機構から離脱を決定したのである。また米国がニカラグア政府のネストル・モンカダ氏をニカラグア政府の資金洗浄で活動したとして同した。それも今回の台湾との断交と中国との国交復帰に影響している。

中米においてロシアから最も信頼を寄せられているオルテガ政権は米国からの批判を良い契機だとして中国との関係強化に動いたということである。これによって、ニカラグアはロシアそして中国から支援を受けることができる。そして、米国に対抗する姿勢を強めることにしたのである。

一方、台湾にとってはこれまで27のプロジェクトをニカラグアの発展の為に実施。その投資額は3000万ドルから5000万ドルと推測されている。その投資の主要内容は食料の生産量を拡大するためのものだ。

この断交によって1990年代に台湾からニカラグアに進出していた企業も撤退を余儀なくさせられる。

台湾の中米における国交ある国は僅か2か国だけになる可能性あり

この結果、中米における台湾と国交を結んでいる国はホンジュラス、グアテマラ、ベリーズの3か国だけになった。ところが、来年1月27日にホンジュラスでチオマラ・カストロ氏が大統領に就任することになっているが同国も台湾と断交する可能性が高い。何しろ、選挙戦中に彼女はそれを表明していたからだ。彼女はマヌエル・セラヤ元大統領の妻である。セラヤ氏は再選が禁止されているのを無視して再選を果たそうとしたが軍部によって拘束されてコスタリカに移送されたという経歴を持つ人物である。

嘗ては米国の裏庭とされていた中米諸国であるが、中国が投資と現地からの資源の輸入によって次第にラテンアメリカにおける影響力を強めて行った。そのような現状を前にして米国はこれらの国からの不法移民の流入の減少と中米諸国の産業発展の為に投資することを約束したのである。