カタカナ語について考える

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あちこちに記事を書いていると「安易にカタカナ語を使い過ぎだ」という批判がちょくちょくある。そこについては色々考えるところがあって、結論だけ言えば、ボクはカタカナ賛成派だ。

もちろん無闇に分かりにくい言葉を使うのはどうかと思うときもあるけれど、ではカタカナを排除すると分かりやすくなるのかというとそれはまた違うと思うのだ。

ということで、以下実験の始まりである。レクサスのリリースを、逐語訳風にカタカナを日本語に置き換えてみる。果たしてそれが分かりやすいかどうか。

ちなみにルールとしては固有名詞はもう仕方ないのでそのまま。固有名詞以外は外来語を禁ずるという基準だ。

LEXUS、NX PHEV OFFROAD Conceptと水素エンジン搭載ROV Conceptを東京オートサロンに初出展

→LEXUS、NX PHEV OFFROAD Conceptと水素内燃機関搭載ROV Conceptを東京オートサロンに初出展

自然と共生しながら、上質で楽しいライフスタイルと走る楽しさの両立を追求した2つのコンセプトモデル

→自然と共生しながら、上質で楽しい生活態様と走る楽しさの両立を追求した2つの技術提示実験車両

クルマをカスタマイズする楽しさとアドベンチャーライフスタイルを提案する「NX PHEV OFFROAD Concept」

→車両を自分好みに仕様変更する楽しさと冒険的生活態様を提案する「NX PHEV OFFROAD Concept」

乗用車では味わえない走りや自然と触れ合う楽しさを提供する「ROV*Concept」

→乗用車では味わえない走りや自然と触れ合う楽しさを提供する「ROV*Concept」

本年開幕するエアレース世界選手権に参戦する室屋義秀選手のエアレース機体1/3スケールモデルを展示

→本年開幕する航空競争競技の世界選手権に参戦する室屋義秀選手の競技機体1/3縮小模型を展示

LEXUSは、2022年1月14日(金)から16日(日)の3日間、幕張メッセ(千葉市)で開催される東京オートサロン2022に、「NX PHEV OFFROAD Concept」と「ROV Concept」を初出展します。

→LEXUSは、2022年1月14日(金)から16日(日)の3日間、幕張メッセ(千葉市)で開催される東京オートサロン2022に、「NX PHEV OFFROAD Concept」と「ROV Concept」を初出展します。

今回出展する2台のコンセプトカーは、カーボンニュートラル社会の実現と、お客様の選択肢を拡げ、多様なライフスタイルの提案に挑戦するLEXUSの想いを体現したモデルです。自然と共生しながら、お客様にクルマがもたらす上質で楽しいライフスタイルや走る楽しさの両立を目指しています。

→今回出展する2台の技術提示実験車両は、炭素中立社会の実現と、お客様の選択肢を拡げ、多様な生活態様の提案に挑戦するLEXUSの想いを体現した車型です。自然と共生しながら、お客様に車両がもたらす上質で楽しい生活態様や走る楽しさの両立を目指しています。

NX PHEV OFFROAD Conceptは、2021年11月に発売開始したLEXUS初のPHEVモデルである「NX450h+」をベースに、EV走行とHV走行がもたらすCO2排出をおさえた優れた環境性能や上質な走りと、電動モーター駆動ならではの低μ路面での安心の走破性を提供します。加えて、悪路走破性に優れた大径のオールテレーンタイヤとホイールの装着や、ブロンズとブラックのマット塗装によるエクステリアのカラーコーディネートなどのカスタマイズを施した、アドベンチャーライフスタイルを提案するモデルです。

→NX PHEV OFFROAD Conceptは、2021年11月に発売開始したLEXUS初のPHEV車型である「NX450h+」を基に、電力のみ走行と原動機と電力併用走行がもたらすCO2排出をおさえた優れた環境性能や上質な走りと、電動動力駆動ならではの低摩擦路面での安心の走破性を提供します。加えて、悪路走破性に優れた大径の全天候型車の輪と金属車輪の装着や、銅色と黒の艶無し塗装による外装の色按分などの顧客好みに仕様変更を施した、冒険的生活態様を提案する車型です。

ROV Conceptは、コンパクトなボディサイズとROVならではの悪路走破性を備え、乗用車では味わえない走る楽しさや、雄大な自然との触れ合いを提供することを目指しています。また、LEXUS初の水素エンジンを採用し、環境への配慮とエンジン車ならではのリアルなエンジンの鼓動を感じ取れる走りの楽しさを両立しています。

→ROV Conceptは、こぢんまりして経済的な車両外寸とROVならではの悪路走破性を備え、乗用車では味わえない走る楽しさや、雄大な自然との触れ合いを提供することを目指しています。また、LEXUS初の水素内燃機関を採用し、環境への配慮と内燃機関車ならではの臨場感のある内燃機関の鼓動を感じ取れる走りの楽しさを両立しています。

レスポンスの良さと、五感を刺激するサウンドを楽しみながらオフロード車でも行けない場所へ一歩踏み込み、自然と触れ合う事で、自然と共生しながら、走りを楽しむライフスタイルの実現を目指すコンセプトカー

→操作反応の良さと、五感を刺激する反応音を楽しみながら悪路用車両でも行けない場所へ一歩踏み込み、自然と触れ合う事で、自然と共生しながら、走りを楽しむ生活態様の実現を目指す技術提示実験車両

また、本年開幕するエアレース世界選手権に「LEXUS/PATHFINDER AIR RACING」チームより参戦する、室屋義秀選手のエアレース機体Zivko Edge 540 V3の1/3スケールモデルを展示します。LEXUSは、エアレース・パイロット室屋義秀選手とチームパートナーシップ契約を締結し、互いが持つ技術やノウハウをよりスピーディーにレース機の開発に繋げ、レースオペレーションも共に行います。新たなチーム体制の下、室屋選手と「新生エアレース初代世界チャンピオン」という新たな歴史に挑戦していきます。また、過酷なエアレースを通じて得られる空力・冷却・軽量化の技術やノウハウを活かし、カーボンニュートラル社会の実現に向けた、もっといいクルマづくりを加速します。

→また、本年開幕する航空競争競技世界選手権に「LEXUS/PATHFINDER AIR RACING」共同集団より参戦する、室屋義秀選手の航空競技機体Zivko Edge 540 V3の1/3縮小模型を展示します。LEXUSは、航空協議操縦者、室屋義秀選手と協業契約を締結し、互いが持つ技術や専門的知識や経験をより速度感を持って競技機の開発に繋げ、共同集団の競技運営も共に行います。新たな共同集団体制の下、室屋選手と「新生航空競技初代世界王者」という新たな歴史に挑戦していきます。また、過酷な航空協議を通じて得られる空力・冷却・軽量化の技術や専門的知識や経験を活かし、炭素中立社会の実現に向けた、もっといい車両づくりを加速します。

〜中略〜

>主要諸元
ボディサイズ 全長3,120mm×全幅1,725mm×全高1,800mm
パワートレーン 1.0L 直列3気筒 DOHC4バルブ
使用燃料 圧縮気体水素
トランスミッション シーケンシャルパドルシフト+リバース
駆動方式 セレクタブル2WD&4WD with デフロック
乗車定員 2名

→主要諸元
車両寸法 全長3,120mm×全幅1,725mm×全高1,800mm
動力機 1.0L 直列3気筒 2動弁開閉偏心軸4弁式
使用燃料 圧縮気体水素
変速機 舵輪軸装備型桿式選択方式逐次変速機構+後退
駆動方式 選択式2WD&4WD 差動装置固定機構付き
乗車定員 2名

主な特長
パワートレーン
1.0Lの水素エンジンは、圧縮された水素を高圧タンクに貯蔵し、水素をダイレクトインジェクターで正確に噴射することで、環境への配慮とエンジン車ならではのリアルなエンジンの鼓動を感じ取れる走りの楽しさと水素の高速燃焼による応答性の高いトルクを実現。また、走行中のエンジンオイル消費をごく僅かに抑え、CO2排出をほぼ発生しないようにしています

→主な特長
動力機構
1.0Lの水素内燃機関は、圧縮された水素を高圧槽に貯蔵し、水素を筒内直接噴射機構で正確に噴射することで、環境への配慮と内燃機関車ならではの臨場的な内燃機の鼓動を感じ取れる走りの楽しさと水素の高速燃焼による応答性の高い軸力を実現。また、走行中の内燃機関潤滑油消費をごく僅かに抑え、CO2排出をほぼ発生しないようにしています

走行性能
頑丈なパイプフレームと軽量で小型なボディを採用
LEXUS独自の乗り味「Lexus Driving Signature」を表現
トランスミッションはシーケンシャルパドルシフト+リバース、駆動方式はセレクタブル2WD&4WD with デフロックを採用。水素エンジンのレスポンスの高さと共に、ダイナミックなオフロード走行性能を実現

→走行性能
頑丈な鋼管骨格と軽量で小型な車体を採用
LEXUS独自の乗り味「Lexus Driving Signature」を表現
変速機は舵輪軸装備型桿式選択方式逐次変速機構+後退、駆動方式は選択式2WD&4WD 差動装置固定機構付き。水素内燃機関の操作反応の高さと共に、力強い悪路走破走行性能を実現

デザイン
エクステリア
あらゆる自然環境に適したプロテクション・ケージや泥道を走るためのオフロードタイヤなどを採用
乗員を保護し、次世代LEXUSのデザインランゲージを追求したフロントグリル、石や泥のはね上げを防ぐフロントフェンダーを採用
リヤの水素燃料タンクにつながるサスペンションカバーは、機能部品の保護に加え、LEXUS SUVから受け継いだ耐久性を表現
L字型フロントヘッドランプ/リヤコンビネーションランプ、新型NXから採用されたリヤの「LEXUS」ロゴなど、次世代LEXUSのデザインランゲージを表現
ボディカラーには、Iron Oxide(アイアンオキサイド)を採用

→意匠
外観
あらゆる自然環境に適した車両保護枠や泥道を走るための泥濘用車の輪などを採用
乗員を保護し、次世代LEXUSの意匠言語を追求した全面保護枠、石や泥のはね上げを防ぐ前輪泥よけを採用
後部の水素燃料槽につながる懸架装置覆いは、機能部品の保護に加え、LEXUS SUVから受け継いだ耐久性を表現
L字型前照灯/複合型尾灯、新型NXから採用された後部の「LEXUS」商標など、次世代LEXUSの意匠言語を表現
車体色には、Iron Oxide(アイアンオキサイド)を採用

インテリア
ドライバーが運転に集中でき、必要とする情報を瞬時に読み取れるシンプルなメーターを採用
上質な革のステアリングホイール、洗練されたシフトノブ、耐久性のある丈夫な合成皮革シートを採用

→操縦者が運転に集中でき、必要とする情報を瞬時に読み取れる虚飾を排したメーターを採用
上質な革の操舵輪、洗練された変速把手、耐久性のある丈夫な合成皮革座席を採用

ということで、まあ比べて見て「ここ日本語の方が良いんじゃない?」という箇所は確かにあるが、それと「No カタカナ」はまた別の話。本来「カタカナ語に過剰に頼りすぎるな」という話だと思っている。

ただし、文章というのはその部分だけ抜き出してみるものではない。例えば「運転者が運転に集中できる」みたいに「運転」が直近で2回出て来れば、ボクは可能であれば「運転者がドライビングに集中できる」と書く。そういう所で同じ言葉を繰り返すのは美しくない。この辺りを分かって指摘している人はほぼいない。反復を避けるためのカタカナ語はかなり有用だ。

それとカタカナ批判の背後には大きくわけて2つの流れがあると思っている。ひとつは単なる不勉強。「俺が知らない言葉を使うな」という話だ。そういう時、書く側に一定の力量が有る場合「あなたはターゲットではない」ということだ。例えば上の文例に出て来た「シンプル」という言葉。これは筆者は結構翻訳に困った。「単純」とか「簡素」というのでは意味が違う。そこには手間を省くという文脈はなく、むしろ手間をかけて雑音を排し、美的かつ分かりやすくの両立を狙うミニマリズムの知的概念がある。

だからこれを単純とか簡素と訳したら違う。少し座りの悪さを自覚しながら「虚飾を排した」と訳したが、これなどはシンプルの方が明らかに意図を正確に伝えられる。

そもそもカタカナ言葉を全てその包括的ニュアンス込みで日本語に置き換えられるわけではなく、そこに言葉の面白さがあるし、書き手としてはそういうニュアンスを共有できない層は読者に含めていないのだ。

さらに言えば、そういうサブコンテキストにいわゆる隠しコマンド的なものを含めて書くのも技術で、それが読み解ける人は「俺はわかった」とうれしくなる。だからサブコンテクストの作り込みは読み手に対するサービスなのだ。そしてその対象者以外にはわからないということをもって、あなたは選ばれた読者であるということを伝えている。

例を挙げれば「左舷弾幕薄いよ。なにやってんの」と書いた時、仕掛けは2層に考えられる。1層目は「ああ、ガンダムのブライトさんね」と思うし、2層目は「本編では言ってないありそうな台詞ってヤツだな」と受け取る。こういう引用をやるのかやらないのか。そして1層目で仕掛けるのか2層目でしかけるのか。それは絶えず考えながら書いて居る。

そして決めた客層の仕掛けで喜ぶ人がいるかわりに「ガンダムなんてわからんよ。勝手に基礎教養みたいに扱うな」という人も必ず出て来る。書き手は自分のファンにどっちが届くのかを考えながら書くのである。

で、これを推し進めた先に、いわゆるコンサル業の方々の文章があって、「何か次世代のキーワードになる新しい言葉はないのか?」と常に新しいマウントワードを探している層に対して、新しい言葉を供給してやるというお仕事である。だからこの場合、むしろ共有できていない言葉を探して使うことが目的だ。文章全体の中でその概念を定義して、次から訳知りに使えるようにしてあげるための文章である。良いとも悪いとも言わないが、この人たちにカタカナを使うなと言っても全く意味がない。それが目的だからだ。

そして最後に、カタカナ禁止派の多分最大派閥にあたる理由。まあ理念としては分かる話として、「日本語を使おうよ」という話である。

けれども、では日本語って何だ? と言う話になるとややこしい。日本語はそもそも書き言葉を持っていなかった。誰もが知っている通り、文字は中国からの輸入品であり、外来語である。だからほとんどの漢字2文字の言葉、例えば「概念」とか「理論」とか「供給」とかも漢語もしくは和製漢語である。それを排除するならば「やまとことば」しかない。

例えば今回の文例で言えば「タイヤ」は余りにも普及し過ぎて、日本語訳がない。色々調べたが和語のところまで遡って初めて「車の輪」という言葉が出て来た。乱暴に言って音読みを使わない表記ということになる。そんなやり方で書いた文章はおそらくもう読めない。というか売り物のとして成立しない。

翻って、日本語の最も日本語たる本質は、その途轍もない雑食性にあると思う。外来語を動詞にしてしまう感覚なんて多分世界中のどこにもないのではないか。「ネゴる」「ディスる」「サチる」。

そもそも和製漢語がなければ今の中国語も成立していない。海外由来の事物を漢字表記したのは日本で、本家中国はそれらを輸入して成立している。自由だって科学だって哲学だって、明治日本が欧米文化を取り入れるためにわざわざ発明した言葉である。

もし本当に純粋な日本語を絶対視して行くと、こういう言葉も使えない。社会なんて言葉を我々の語彙から失った時、一体われわれはどうやって生きて行くのだろうか?

結局のところ、カタカナ語を無理矢理に排して書くと生硬な漢語もどきが圧倒的に多くなる。実際上の翻訳文もそういうものになっていて、決して褒められたものではないと思う。カタカナ、漢語、文字そのもの、どこかに線を引けるかと考えると、ボクは無理だと思う。むしろ「日本語スゲぇ」とばかりに、バンバカ外来語を使ってしまえば良いと考えている。それが日本語だから。


編集部より:この記事は自動車経済評論家の池田直渡氏のnote 2021年1月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は池田直渡氏のnoteをご覧ください。