米政治メディア「The Hill」(以下、Hill)は昨年12月25日、バイデンが次期大統領選に出馬しない場合、民主党から出馬の可能性のある有力候補10人を報じた。
先ずは副大統領のハリス。彼女はMorning Consult(MC)が先頃実施した、バイデンが出ない民主党予備選の仮想投票で31%のトップとなったが、WSJの取材には「まだ初年度を終えておらず、コロナ禍の最中なので、(バイデンと)再選については話していないし、話したこともない」と述べた。
ブッティジェグ運輸長官がMC仮想投票でハリスに次ぐ11%の支持を得た。C記事と違いこの記事では、彼が20年の民主党予備選でサンダースに僅差で敗れたこと、大統領候補者として史上初めて「ゲイをカミングアウトしたことで歴史を刻んだ」ことなどが書かれている。
MC仮想投票で8%(3位)のウォーレン上院議員(Mass.)は、かつて20年の党大統領予備選の最有力候補で、20年5月に上院の再選に出馬する予定だと述べた。MCの同率3位には若手の進歩派リーダーのA・オカシオ・コルテス上院議員(AOC)が入った。
32歳のAOC(N.Y.)には大統領選出馬資格があるが、CNNのインタビューでは「政治の世界でよくあるのは、高い役職に立候補しようとするあまり、今の人々のために戦うことに妥協してしまうことだ」と、大統領選への野心を封印するような発言をしている。
コーリー・ブッカー上院議員(N.J.)は、20年の予備選で負けたが、MCでは5%の支持を集めた。そしてリコール騒ぎを乗り切りMCで3%を得たカリフォルニア州のニューサム知事は9月のCBS Newsのインタビューで、出馬は今のところ考えていないと語った。
党内穏健派のエイミー・クロブカー上院議員(Minn.)もMCで3%の支持を得た。またステイシー・エイブラムス前ジョージア州知事は、当面は同州の知事選を共和党現職のケンプと争う予定だが、「野心として持っているか? 勿論」と「大統領選への野望を恥ずかしげもなく」述べている。
ノースカロライナ州のロイ・クーパー知事は、赤い州の民主党知事であることから24年の候補者として取りざたされ、NYTは12月初めに支援者による出馬働きかけを報じた。前ニューオリンズ市長のミッチ・ランドリューも一部で名前が挙がる民主党の大物だ。
■
共和党候補者についてもHillは12月29日、出馬の可能性が高い共和党員10名を報じた。
先ずはトランプ。彼は、決断すれば支持者は「とても満足するだろう」と繰り返し述べるが具体的表明は避けている。11月のFox Newsのインタビューでも「おそらく」22年の中間選挙後まで待つと述べた。12月中旬のPolitico/MCの世論調査では、共和党支持者の69%が彼のカムバックを望んでいる。
フロリダ州知事ロン・デサンティスはコロナ禍での放任政策と公衆衛生当局に逆らう対応で保守派の寵児となった。22年の州知事再選に集中すると言うが、全米を資金調達で飛び回っている。トランプが出馬した場合、他の多くの共和党候補と異なり、出馬しないとは公言していない。
ペンス前副大統領は、トランプのNo.2としての4年間を考えれば、当然24年の共和党の有力な選択肢だし、自身も出馬を否定していない。が、トランプは12月のフロリダでのイベントで、ペンスは1月6日の役割のために共和党内で「致命傷を負った」と述べ、トランプ支持者もそれに同調している。
16年の共和党指名候補の一人だったクリスティ前ニュージャージー州知事は、20年選挙での不正主張を巡って一層トランプに対立的な姿勢をとっていて、再び出馬を視野に入れているのではないかと噂を呼んでいる。
前国連大使ニッキー・ヘイリーは目下、出馬を検討している候補の多くが行うことをしている。その一つは22年の中間選挙に向けて共和党候補者を後押しする政治活動委員会(PAC)を設立し、重要な予備選挙や党員集会のある州を訪問していることだ。
彼女は昨年初め、トランプが20年の選挙結果を受け入れず、1月6日の連邦議会議事堂での暴動に関与したことを批判し、トランプを激怒させた。だからどうかは判らぬが、ヘイリーは昨年4月に、トランプが24年に出馬した場合、自分は出馬しないと述べている。
テキサス州上院議員のテッド・クルーズは16年、党内予備選挙でトランプに敗れた。が、彼はトランプ在任中に議会で最も声高にトランプ支持を叫ぶ一人となった。昨年初め、彼は保守系メディアNewsmaxに大統領選への出馬を「確実に検討している」と述べた。
ポンペオも表向きは22年の中間選挙で共和党候補を後押しするPACを立ち上げ、予備選挙や党員集会の州を回っていて、出馬に関する質問には答えない。昨年初めにFox Newsでトランプが出馬を見送る場合に出馬するかどうか尋ねられ、優等生らしく「常に良い戦いのためにアップしている」と答えた。
共和党の新星サウスダコタ州のクリスティ・ノーム知事も、考えていないと繰り返しているが、彼女の選挙キャンペーンも昨年初め、サウスダコタ州以外の選挙に資金を分配でき、将来の連邦選挙キャンペーンの資金源にできる連邦PACを立ち上げた。
トム・コットン上院議員(AR)は、上院で最も声高なバイデン政権の反対派の一人だ。Fox Newsにも頻繁に出演して政権を批判している。10月にニューハンプシャー州で開催されたイベントで24年の立候補可能性を問われた彼は、それを否定しなかった。
作家のリンカーが「民主党に寝返った」場合、有力候補になるとT記事が書いたメリーランド州知事ラリー・ホーガンは、共和党知事としてレーガン元大統領の流れを汲む伝統的な共和党員とされる。トランプを声高に批判し、昨年年初めCBSに可能性を「排除はしていない」と認めた。トランプが出馬表明しても出馬を躊躇しない数少ない共和党候補の一人だ。
■
バイデン政権の1年は米国版「悪夢の民主党政権」と言え、民主党が11月の中間選挙で上下両院とも大敗することはほぼ確実だろう。よってポストバイデンの民主党候補が、ヒラリーになろうと、ハリスやミシェル・オバマになろうと、それを論じても意味はなかろう。
共和党は綺羅星の如く有力候補がいるが、やはり筆頭はトランプだ。が、20日のHillは「2024年は単純ではない」との記事で、全有権者の支持率が常に40%台下位で「ネバートランパーズ」が大勢おり、また内心トランプ嫌いでも公然とは言わない共和党員が少なくない、などの懸念材料を報じている。
逆らう者は、ペンスであろうとニッキー・ヘイリーであろうと、あからさまに非難する彼の姿勢は、トランプらしいが何のプラスもない。が、良くも悪くもトランプの影響力は否定し難く、ヘイリーはトランプが出る場合の出馬を否定し、ポンペオやデサンティスはお茶を濁す。
トランプが出ないとすれば、先ずはデサンティス、次にポンペオが有力か。1月18日のHillは、共和党元議員候補フォード・オコネルの、デサンティスは「トランプの政治ブランドの側面を取り込んで自分のものにすることに成功している」との指摘を報じた。なるほど的を射ている。
先週のFoxnewsでショーン・ハニティがデサンティスとの仲を尋ねると、トランプは「共和党は団結していて素晴らしい、ロンもその一人だ」「長い友人で、(報道は)完全にフェイクニュースだ」と述べた。が、二人が同時に出馬するかは不明だ。43歳とまだ若いデサンティスは28年を目指せば良いように思う。
筆者は50歳のニッキー・ヘイリーを推す。サウスカロライナ州の上院議員と知事、トランプ政権下の国連大使を経験しキャリアは十分だし、その毅然とした保守の姿勢は女性初の米大統領に相応しく、醜聞まみれのヒラリーや笑って誤魔化す同じインド系のハリスは比べるに値しない。
【関連記事】
・24年もヒラリー?ポストバイデンの米大統領選を占う(前編)