2022年はメタバース元年となりそうです。これから自分の分身であるアバターが自分に代わって表舞台で活躍し、自分は後ろに引っ込んだライフになるかもしれません。まだこの社会が具現化していない以上、その長短は分かりにくいものですが、ある程度は想像できるかもしれません。
パンデミックでリモートワークになったと話題になりました。つまり、本当は出社して同僚や他部署の人たちと直接やりとりをしながら仕事を進めていたやり方が大きく転換しました。しかし、企業によってはもっと以前から社内の人との接点は薄くなっているところはいくらでもありました。特に合併で巨大になった企業では出身会社間でなかなか交流が進まない弊害があったところもあります。
私も以前、ある大手銀行さんの方と業務の話をした話をした際、「すみません、私、社内人事に疎くてそちらの方面に詳しい社内の人を知らないんです」と言われたことがあります。
かつて会社でデキる社員には2通りあるとされました。真に実力があって誰もが認めるエース級社員、もう一つは社内人事に異様に長けていて様々な社内情報に精通しているタイプです。例えばドラマ「半沢直樹」で及川光博演じる渡真利忍がそれにあたります。この手の人は午後5時から仕事が始まると思います。
今後、リモートワーク、メタバース主導になった場合、後者の社内事情精通組は脱落するでしょう。情報が採りにくくなると同時にそれを有効に活用できるチャンスが無くなるからです。
つまり、働き方、それもクオリティ オブ ジョブや査定が全く変わってくるのでしょう。この場合、個人的には女性に分があるとみています。それはいままで女性活躍の弊害とされていた様々な問題、子育てや外見、ハラスメント、雑用からの解放などいろいろあるでしょう。他方、男性はその進化に耐えらえるのか、ここが関門になりそうです。
次にショッピングについて考えたいと思います。今、我々はデパートや繁華街、ショッピングモールに出かけることを当たり前としています。しかし、買い物をするのに本当に店に出向きたいのでしょうか?アマゾンや楽天で購入する際、そこにリアルはありません。しかし、多くの人は何のためらいもなく購入します。ZOZOは衣料を、テスラを自動車をネットで販売します。一部の若者向けの店では売らない店舗が登場しています。そこでは見せるだけ。サンプルを見て現物は後から届く方式です。
つまり既に現実にはオンライン上で買い物をするのが当たり前になっているのです。それでも現物を見たいというのはまだ確信が持てない人のためにあるといってよいでしょう。ですが、仮に仮想店舗でアバター店員があなたに最も似合う服を画面上で選択してくれたいらどうでしょうか?その選択はAIがあなたの性格、手持ちの服、今欲しいと思っている種類を読み、アバター店員かAI店員がそれを察して素敵なセールストークをするでしょう。あなたはもうその服を買わないわけにはいかないはずです。
ではこの店は何処にあるのでしょうか?山手線でも新幹線でも行けないところかもしれません。いや、日本にもないかもしれません。これがこれからの社会です。
世界では一部の国がリモートワークを前提にして就労ビザをくれる国がぽつぽつ出てています。ドバイ、アイスランド、エストニア、ジョージア(グルジア)などでリモートワークすることができます。今後、もっと増えてくるでしょう。つまりノマド族が再度注目されることになるのです。
彼らは必ずしもその国の経済に貢献するとは限りません。ただ、居住することで消費を通じた経済貢献はあるかもしれません。それが正しい国家の在り方かどうかは議論を要するでしょう。
仮想現実の時代がやってきたときのリスクは何でしょうか?これは非常にたくさんあり、ここには書ききれません。確実に言えるのはその社会の流れに乗れない脱落者がたくさん出る点です。そもそもリモートにメタ、アバターと聞くだけで???となる方だらけの中、実際にそれを駆使して「これサイコー!」と叫ぶのは当初はたぶん、1万人に1人ぐらいかもしれません。これが年月をかけて少しずつ増えたとしても「普及の限界」に到達します。どれだけうまくいっても7割。下手したら4割程度でしょう。
ではその分断に社会は対応できるのか、これが私には予想ができません。例えば商業地はとても限られるようになり、仮想現実に入れない非主流者は不便を講じるかもしれません。リアル店舗には欲しい商品が全部そろっていないかもしれません。
それ以上に繁華街に人が集まらなくなった時、その高額の価値ある不動産を何に使うか、これがまだ都市計画上全く創造されていません。現時点では空いたスペースを別のテナントで埋めるというチカラ技が主流となっていますが、5年もすればそれは厳しくなるかもしれません。同じことはオフィスビルにも言えるでしょう。今、日本は空き家問題が話題になりますが、そのうち、空きオフィス問題が主流になるかもしれません。
人と人のつながりはどうでしょうか?オンライン上でイベントを通じたコネクションにオンライン飲み会が当たり前になったとしたら私は世の中、孤独者で溢れるとみています。飲食店はおひとり様客ばかり、そこで逆にリアルソーシャルネットワーキングができるという笑い話が現実となります。
まるでSFストーリーのようですが、この現実はもう手が届くところにやってきています。より進んだテクノロジーは人間生活を充実させるはずでしたが、これは人間生活の基本を破壊的創造しようという試みです。抵抗するのか、服従するのか、降参するのか、今、既にその岐路に立たされているようです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年2月2日の記事より転載させていただきました。