相も変わらず科学ではなく情緒が国を支配している日本

日本は相も変わらず、メディアがコロナ感染症で大騒ぎしている。科学ではなく、情緒が国を支配しているようだ。科学的な数字を元に科学的施策を実施して欲しいものだ。日本の科学力の地盤低下を象徴しているのがコロナウイルス対策だと思う。

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そんな中、米国の科学政策も揺れている。私の親しいNIHのフランシス・コリンズ博士は所長職を昨年末で退職した。しかし、彼のYouTubeが話題になっている。昔、バンドをしていたと聞いたことがあるが、ギターもピアノも、そして歌唱力もなかなかのものだ。フランシスに天晴れだ。音楽の才能が欠如している私は脱帽するしかない。

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そして、バイデン政権の科学技術政策を担うはずだったエリック・ランダ―博士がパワハラで辞職に追い込まれた。二人のゲノム研究者が米国を引っ張ることを期待していたが、がっかりだ。

ランダ―博士は「傲慢だから、こうなることを懸念していた」というコメントをしていた人がいたが、私と話をする時は人懐っこくて、いつも紳士的だった。米国にとっては、ゲノム研究にとっては、この二人の国のリーダーが退場するのは残念なことだが、日本のゲノム研究にとってはチャンスになるかもしれないと信じたい。

そして、Nature Medicineに脊髄損傷患者が切断部位での電気的刺激によって歩けるようになるとの論文が掲載されていた。論文のタイトルは「Activity-dependent spinal cord neuromodulation rapidly restores trunk and leg motor functions after complete paralysis」だ。

脊損患者の希望の光がはっきりと見える。この程度のことなら、日本の科学力をもってすれば簡単にできると思う。

科学的な発想力とそれを支える技術、そして、治せない病気を治したいと願う強い意志、それが大切だ。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2022年2月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。