10日は大臣、統幕長、陸幕長、空幕長の会見がだんごになっていたので全部行ってきました。
空幕長にはF-35A、B併せて147機、次期国産戦闘機100機、併せて250機のステルス戦闘機を調達維持することは可能かと質しました。
F-35は調達単価は米空軍ではF-15の3倍、機体寿命は半分、維持費は2倍。我が国の場合調達コストはF-15とさほどは変わりません。ですがLCCは4倍になります。その巨額の費用を空自の予算でまかなえるのか。
これに関しては適宜見直しをして検討するとのことでしたが、明確な回答はありませんでした。
それからアラート任務について聞きました。昨今中国は運用コストが安価で乗員の負担もない無人機を寄越しています。対して我が国は有人機で対応しています。この先F-35や国産ステルス機が増えれば、調達単価、維持費が極めて高いステルス機をアラートにも多数あてることになるでしょう。
であれば中国は無人機による侵犯を多数繰り返せば、ステルス機の寿命を削り、空自の予算を浪費させて戦わずして空自の戦力を削ぐことが可能です。
これに対しては空幕長もかなりの危機感を持っておいでのようでした。
さらに空自の基地には三沢など一部を除けばバンカーがなく作戦用機が裸同然で置かれています。最大の脅威は中国の弾道弾でしょう。通常弾頭でも飽和攻撃を受ければ被害甚大です。その他無人機によるスオーム攻撃、また迫撃砲などの攻撃にも脆弱です。
何らかの防御策を今後講じるのか、それはステルス機を多数調達運用して同時に可能なのかとも質問しました。
これに関しても随時様子を見ながら進めたいとのことでした。
ですが、ぼくは予算規模からみてそれはほぼ不可能ではないかと思います。
そんなやり取りをしていて、抗堪性という面ではF-35はA型ではなく、B型、C型に特化して方が良かったのでは思いました。B型は既に導入決定ですが、垂直及び極めて短距離で離着陸ができて、分散配備も可能です。
C型は艦載型ですからA型より短距離で離着陸が可能です。ですから比較的小さな民間空港で運用することもできるでしょう。
またB型、C型はともに塩害対策ではA型よりも優れているでしょう。基地が海辺に近いことが多い我が国、例えば沖縄ではF-15も塩害対策が大変だと聞いております。
A型を沖縄などに配備した場合、塩害によってより維持修理費が掛かる可能性もあります。そうであればLCCは更に大きくなるでしょう。
無論、A型はもっとも運用制限が少ない機体であり、性能的には一番いいでしょう。ですが、戦力の冗長性、維持費を考えれば、B型とC型の混合という案ももっと検討されてよかったのではないでしょうか。
ぼくはFXに関してはユーロファイターを採用し、その後F-35Bを2個飛行隊程度導入する案を提案していました。F-35のメリットはセンサーフュージョンです。単体で戦うというよりも、より搭載能力の大きいF-15など組み合わせて使えばよろしい。またステルス機を多数保持するカネは既に我が国にはないからでした。
日本の防衛を語るときに抗堪性や費用対効果を忘れた議論が多いように思えます。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2022年2月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。