オンライン国会実現のため、憲法56条の「出席」の解釈を憲法審査会で明確にせよ

10日、憲法審査会が開催されました。

国会は、コロナ禍で明らかになった憲法上の課題に速やかに解決策を示す必要があります。特に、オミクロン株の感染拡大が続いている中、「オンライン国会」を可能とする規則の改正は喫緊の課題です。そのために、国会の定足数を定める憲法56条の「出席」の解釈について憲法審査会において速やかに合意を形成すべきです。

国民民主党を代表して発言した概要は以下のとおりです。

衆議院憲法審査会発言要旨(令和4年2月10日)

まず、憲法審査会が定例日に開催されてよかった。憲法審査会には政府側の出席が不要であり、今後も予算委員会が開催されていても定例日には開催すべきだ。憲法は国民のものであり、国民民主党は、国民のための憲法議論を積極的に進めていきたい。

■ 統治分野での改憲検討項目【緊急事態条項】

速やかに議論しなければならないのは、コロナ禍で明らかになった統治分野での課題である。

特に、2つのテーマが重要だ。

① いわゆるオンライン国会を可能とすること

そして

② 緊急事態発生時に、国会議員の任期を特例で延長することを可能とすること

である。

① オンライン国会の実現

オンライン国会を可能にすることは、オミクロン株の感染が急拡大し、国会議員本人、秘書、院の職員、政党職員などにも感染者や濃厚接触者が急増している中で、国会の機能を維持するために、速やかに結論を得るべき課題である。

そこで、この場にいる憲法審査会の与野党の先生方に呼びかけたい。本日この場で、定足数等を定めた憲法56条に規定する「出席」が、必ずしも物理的出席を意味するものではなく、オンライン国会も含み得る概念だということにつき合意を形成しようではないか。その合意の上に立ち、衆参の議院運営委員会において、速やかに、衆議院規則及び参議院規則の改正を行おう。国民民主党は規則の改正案を用意していることを申し添える。

国民民主党としては憲法改正は不要だと考えるが、憲法学者の中には、56条の「出席」は物理的な出席が必要と主張している方もいる。しかし、院の運営の話は、院の構成員である国会議員が決めれば決まると考える。憲法第4章の国会は国会自身が解釈権を持つ珍しい部分であり、解釈は国会で決めれば確定する。本日この場で、56条の解釈について確定するための議論を行いたい。むしろ、「出席」は物理的出席が必要であるとの意見のある方がいれば、この場で反論いただきたいと思う。

とにかく、コロナ禍で明らかになった憲法上の課題に、憲法審査会のメンバーとして、立法府の一員として責任ある解決策を示していこう。森会長の取り計らいをお願いしたい。

② 緊急事態発生時の国会議員任期の特例延長

緊急事態発生時における衆参の国会議員の任期の特例延長を可能とする制度創設の必要性について述べたい。昨年秋の総選挙の際、たまたま新型コロナの感染が抑えられていたが、仮に感染爆発のまっただ中で任期満了を迎えていた場合、現行憲法下では総選挙を実施せざるを得なかった。緊急時における任期の特例延長と選挙期日の特例を認める議論を速やかに行うべきだ。

例えば、憲法に「緊急事態が発生した場合であって、任期満了による衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、各議員の出席議員の3分の2以上の多数で、その任期の特例を定めることができる。」との規定を置くことも一案である。

緊急事態においても、立法機能、予算議決機能、行政統制機能といった国会の機能を確保し、行政に対する「国会統制」を適切に担保する観点から、任期特例延長に加えて、「緊急事態における解散権の制約」についても検討してはどうかと考える。

なお、自民党の改憲4項目のうち「緊急事態条項」は大規模な自然災害のみを想定しているが、コロナ禍を経た今、感染症の大規模なまん延も緊急事態に含めるべきと考える。国民民主党としては、緊急事態のカテゴリーとして、①外国からの武力攻撃、②内乱・テロ、③大規模自然災害、④感染症の大規模まん延の4つを想定してはどうかと考える。

こうした緊急事態におけるルールは憲法改正ではなく法律で足りるのではないかとの議論があるが、しかし「緊急事態という危機において国権の最高機関である国会の機能をどのように維持し、行政にどこまでの権力行使を認めるのか」という究極のルールづくりは、国民投票を必要とする憲法改正がふさわしい。なぜなら憲法こそが、国民が国家に対し権力を「与えて」いる同時に「歯止める」ことのできる唯一の最高規範だ。あえて申し上げれば、緊急事態条項自体が危ないのではなく、まともな緊急事態条項がない中、曖昧なルールの下で憲法上の権利が制限されうる状態こそが危ない。

国家統治の根本的なあり方を、改憲=9条改正=戦争へまっしぐら、というステレオタイプなレッテル貼りを乗り越えて、静かな環境の下で議論を積み重ねよう。

■人権分野での改憲検討事項【データ基本権】

次に、「データ基本権」について述べたい。人権分野に関しては、デジタル時代の「データ基本権」の議論を速やかに深めるべきだ。健全なデータ資本主義の発展のためには、価値を同じくする国々とデータ利活用の基準を共有していくことが不可欠であり、ヨーロッパのGDPR(一般データ保護規則)がそのスタンダードと目されるなかで、日本もデータに関する基本原則を憲法にうたうことには意味がある。

特に、当たり前だとされていた憲法19条の「思想・良心の自由」も、実は、データを活用して意図的に操作されやすい脆弱なものであることが浮き彫りになってきている。だからこそ、「思想・良心並びにその形成の自由」という「プロセスの自由度」にまで広げて保証しなければならない。思想や信条の形成そのものが操作できるとなれば、民主主義の在り方そのものが問われるからだ。

■開催の方式

最後に、今後の審査会の開催形式について3点申し上げたい。まず、定例日には必ず開催し、政局を離れた静かな環境の中で、憲法改正の議論を進めていくべき。その際、論点が複数ある中、論点をしぼった議論も必要不可欠であり、「分科会方式」を導入すべき。

国民投票法の議論については、CM規制・外国人寄付規制・ネット広告規制など重要な宿題が残っているが、この国民投票法の議論と憲法本体の議論は、同時並行で進めていくべき。

結びに、改めて、オンライン国会の実現と、定足数等について定めた憲法56条の「出席」が必ずしも物理的出席を必要としないことについて本日、議員間の合意を得ることを求めて、発言を終わる。


編集部より:この記事は、国民民主党代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2022年2月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。