米国の2021年貿易動向、経済正常化であの国の数字に異変

米国の2021年貿易動向は、追加財政政策を追い風に需要が急拡大した米国の実態と共に、海外景気の復活を表すなど、経済正常化を印象づける内容でした。

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2021年の国別動向(財ベース)の上位10カ国を振り返ると、以下の通り。

・貿易赤字
→上位4位は中国、メキシコ、ベトナムで変わらず。一方で、日本が前年7位→5位に浮上したほか、カナダ(前年15位→7位)がトップ10に食い込んだ。そのカナダの代わりに、スイスが圏外に転落した。

・貿易額
→1位にカナダ、2位にメキシコが入り、2020年にトップだった中国は3位に転落した。また、半導体不足が問題となるなか、台湾が前年の16位から8位へ急伸したほか、インドも前年の10位から9位へ順位を上げた。一方で、貿易赤字と同じく、スイスが圏外に落ち込んだ。

・輸出額
→1~4位はカナダ、メキシコ、中国、日本と前年と変わらずのところ、韓国が前年の7位から5位へ上昇し、代わりに英国が7位に転落した。また、インドが前年の13位から10位へランクインし、台湾が圏外へ転じた。

・輸入額
→1~3位は中国、メキシコ、カナダと前年で変わらず。ドイツが前年の5位から4位に上昇した、代わりに日本が5位へ転落した。その他、台湾が前年の10位から8位へ順位を上げ、インドも前年の11位から10位へランクイン。一方で、スイスが圏外に落ち込んだ。

チャート:貿易相手国別、上位10カ国の2021年の貿易動向(単位:10億ドル)

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(作成:My Big Apple NY)

経済正常化の波が押し寄せた影響が最も色濃く表れた国は、中国ではないでしょうか。ご覧の通り、貿易額で中国が2020年の1位から3位に転落していたのですよ。貿易額自体は前年比17.4%増でしたが、カナダやメキシコに抜かれてしまいました。半導体不足に見舞われながら前年の反動で自動車関連が支えたほか、エネルギーも好調で、両国の貿易額の伸びが中国を上回ったことが一因です。その他、中国固有の理由もあります。コロナ関連の輸入品目のうち消毒剤やマスクなどの医療消耗品、医療用品など、中国のシェアが高い品目の輸入の伸びが、鈍化あるいは減速という憂き目に遭ってしまったのです。

チャート:コロナ関連輸入品目別、上位5カ国のシェア(単位:10億ドル)

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(作成:My Big Apple NY)

チャート:コロナ関連輸入品目別、上位5カ国のシェア

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(作成:My Big Apple NY)

特にマスクは、2020年に中国が輸入の84.6%と大半を占めるなか、2021年は11月までの年初来でマスクを含む関連製品の輸入が48.3%減少しており、これが効いたとみられます。

同様の理由で、スイスは貿易額や輸入額でトップ10から転落していました。スイスと言えば医薬品で、米国にとってはアイルランド、ドイツに次いで3位の輸入国なんですね。その医薬品と言えば、2020年の輸入品目の金額ベースでトップ5で5位から4位に浮上。経済活動停止の余波で供給制約に陥るなか、医薬品の輸入だけは2020年に前年比8.8%増だったんです。

チャート:米国、輸入品上位5品目で医薬品のみ2020年は増加

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(作成:My Big Apple NY)

この恩恵を受け、米国によるスイスからの医薬品輸入額は前年比13.1%増の177億ドルでした。2021年は11月までの年初来では前年同期比15.9%増の190億ドルだったとはいえ、経済正常化に伴う他製品の需要増に圧されたと考えられます。

その他、コロナ以外の観点でいえばインド太平洋での関係強化が進むインドでは、貿易関係の強を確認しました。米国で経済正常化や脱コロナ・ウィズコロナが進む過程で、2021年の米貿易動向はまさに正常な状態に回帰しつつある状態を表したのではないでしょうか。翻って、米株市場では動画サービスのネットフリックスや、フィットネス事業を展開するペロトン・インタラクティブ、投資アプリのロビンフッドなどコロナ禍で需要拡大という恩恵を受けた銘柄がアンダーパフォーム中。少なくとも一部で急速に高まったコロナ禍での需要増は、「一過性」のものだったと言えそうです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2022年2月17日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。