オミクロン株に対するワクチン効果:アドバイザリーボードのデータは不自然

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小島氏が、オミクロン株のワクチン効果に関して問題提起をされました。地方自治体のデータを用いて計算したワクチンの感染予防効果と、アドバイザリーボードのデータより計算される感染予防効果が大きく異なるというのです。アドバイザリーボードで提示されている数値には過去にも不自然なものがありました。そのため、今回のアドバイザリーボードの数値の信憑性を検証してみることにしました。

検証は、Worldometerより取得したデータとの比較により行いました。感染率は、10万人・1日あたりの感染者数です。設定期間は、アドバイザリーボード、浜松市において、それぞれ設定しました。比率は、アドバイザリーボードでは全国民(1/24~1/30)を、浜松市では全国民(1/1~1/27)を、1.0とした時の比率で記載されています。浜松市のデータは、小島氏の提示したデータを使用しています。広島県には在日米軍基地が存在しているため、他の県よりオミクロン株の感染拡大が早かったという特殊要因がありますので、今回の検証の対象より外しました。

計算結果を以下の表にまとめました。

感染は、1月中旬より下旬にかけて急速に拡大しています。そのため、設定期間により感染率は大きく変動します。したがって、感染率を比較する場合には、同じ設定期間で比較しないと意味がありません。

アドバイザリーボードの70代接種2回目の感染率は、 全国民(1/24~1/30)のそれの0.17倍であり、 80代接種2回目の場合も0.18倍であり、不自然に低い感染率です。 未接種の高齢者の感染率は1.2倍~3.5倍ですから、高齢者自体の感染が少ないわけではありません。 また、高齢者の後に接種した20~69歳の2回接種者の感染率が0.59倍ですから、 普通に考えれば70代~80代の感染率は0.59倍より高くなるはずなのです。

この不自然に低い感染率のため、感染予防効果が不自然に高くなってしまったのです。 接種後直後ならともかく、接種後6か月以降で、感染予防効果が86%~96%と高い数値であることは、 海外の報告より考えてあり得ないのです。 高齢者の感染予防効果が本当に86%~96%と高ければ、高齢者の3回目接種は不要という結論になってしまいます。

アドバイザリーボードの感染率が不自然に低くなった原因は、HER-SYSデータの参照日にあると、私は推測します。1月24日~1月30日のデータを、1月31日に参照してデータを作成しているのです。感染者の急激な増加のため、HER-SYSへの入力はかなり遅れているとされています。設定期間の直後にデータを参照してしまうと、多数のデータが入力前であり、その結果、感染率が本来より低くなってしまう可能性があるわけです。

ただし、この推測には、一つ不可解な点があります。2回接種者の感染率が低いということは、2回接種者の未入力数の方が、未接種者のそれより、多いことを意味します。入力の遅れがあるならば、未接種者の未入力数も、2回接種者のそれと同程度に多くなるはずです。両者の感染率が同程度に低くなれば、感染予防効果は低くなります。2回接種者の感染率のみ低くなったため、感染予防効果が不自然に高くなってしまったのです。

アドバイザリーボード(2月16日公開)において最新データが公開されていました。設定期間は1月31日~2月6日で、参照日は2月7日です。このデータを用いて計算しますと、感染予防効果は、70代で85%、80代で95%、90歳以上で94%となりました。同様に不自然に高い感染予防効果です。

アドバイザリーボード(2月9日公開)のデータより、感染率と感染予防効果を計算して、表にまとめました。

小島氏の解説では、アドバイザリーボードのデータを用いて計算すると、10月~1月においても、海外と比べて不自然に高い感染予防効果が維持されていると指摘されています。今回の私の計算でも、10代~60代の感染予防効果は66%~80%と、高齢者ほどではありませんが、高く維持されています。これらの現象は、参照日が不適切であることのみでは説明できません。入力が遅れた場合に、2回接種の未入力数の方が未接種者のそれより毎回多いということは、あり得ないのです。厚労省は、このような不自然な数値となった原因を解明するべきです。

浜松市のデータも検証してみます。浜松市の感染率は、全国民(1/1~1/27)のそれの0.80倍~1.10倍となっており、不自然ではありません。

以上の分析より、アドバイザリーボードのデータより計算される感染予防効果:66~95%より、
小島氏の提示した感染予防効果:20~35%の方が信憑性が高いと、私は考えます。