ウクライナ情勢については「プーチンよりバイデンが心配なウクライナ情勢」という記事を一週間ほど前に書いた。
プーチンは長期的な国家利益を考えて短期的な評判など気にせず的確に動いている。逆にバイデンは中間選挙しか考えてないから、難しい交渉などしたくないらしく、ロシアが軍事行動起こしたときに、非難すればいいとアリバイ作りだけ考えているのではないかと私は疑っている。そして、ウクライナはどうかといえば、いつもそうだが、何も考えてない。
欧米だって、本気でウクライナをEUやNATOに加盟させることは考えてないと思うし、少しは、ロシアを安心させることも必要だ。そうでないと、ロシアは本当に侵攻する可能性がかなりあるし、その場合に、経済制裁はするだろうが、そんなものプーチンが怖れるとも思わない。むしろ世界のならず者との連携を深めるだろうからコストは大きい。
と言った趣旨だったが、その通りになった。
また、昨日はFacebookにおおよそ以下のように書いた。
ウクライナについて保守系の人のあいだでも意見がかなり混乱しているように思うが、日本の国益に沿って私は以下のように整理している。
- 日本は欧米の方針に最終的には追随せざるを得ない。これは仕方ない。アジアのことでは日本の意見を尊重してもらうためにはヨーロッパのことでは彼らを支持することは不可欠。しかし、欧米にも妥協を促す努力も必要。
- ウクライナやベラルーシなどバルト三国以外の旧ソ連にNATOやEUを拡大することまで欲張るのは危険(潜在的に権利があるのは否定しないが)。フィンランドだってNATOに加盟していないから良好な平和のための緩衝帯になっている。
- クリミアは「事実上」、あきらめるしかない
- ウクライナを放置すると台湾が危ないのはその通りだが、ウクライナと台湾を同列に並べることはもっと危険。
- 2. は、外交は自由だが危険な火遊びはよくない。大韓帝国がロシアを招き入れて日露戦争は起きたし、キューバがソ連のミサイルを引き入れてキューバ危機は起きた。
- グアンタナモをキューバに返さないアメリカとアンバランス。もともとウクライナ独立のときに、軍港としての使用権は将来ともに認めておくべきだったがそこを曖昧にしたので侵攻された。(北方領土と同じで日本のものだということは支持するが具体的行動には移さないという意味)。
- ウクライナはもともとソ連の一部。いま起きていることもソ連崩壊の後始末。それに対して、台湾は共産党支配に入ったことは一度もないので一緒にするべきでない。ウクライナ侵攻より台湾侵攻ははるかに悪質というコンセンサスが必要。
保守派の人で一方的なアンチ・ロシアの人が結構いるが、彼らが忘れているのは、トランプが中国の台頭を抑えるためにも、プーチンと向かい合ってロシアをめぐる問題を整理し直してヨーロッパや中東を安定させようとしたのに対し、バイデンら民主党がロシア疑惑を誇張、追及して米露首脳会談もろくに開かず、米露の対話が四年間ほとんどできなかったのが今日の事態の原因のひとつだろう。
そもそも、バイデン・ジュニアのウクライナ疑惑に代表されるように、ウクライナを冒険に走らせたのはアメリカの一部金融資本などだった。
さて今後どう対応するかだが、制裁だとかいうのは、バイデンがそれを止められなかったことの照れ隠しとアリバイづくりにしか役に立たない。ロシアを中国や世界のならずものほうへ追いやるだけだ。
格好は付けねばならないが、それでなにか状況が良くなることはほとんど期待できない。むしろ必要なのは、上記でも書いたプーチンとロシア周辺の秩序について、落とし所を見極め、制裁などはその落とし所に誘導するための手段として位置づけた方が良い。
中国外務省の華春瑩(Hua Chunying)報道官が、米国がウクライナ危機でロシアに対する制裁を発表したことに対し、「緊張を高めてパニックを生み出している」と非難したといったが、それはかなり正しかった。
制裁と云っても、軍事技術などについてのものは有効だが、一般的な経済制裁は民衆の生活を困窮させるだけのことも多く、私は有効性を疑っている。
私はプーチンが自分が次の世代に残すものとして納得しそうなラインを見極め、そこへ収斂させることが大事だと考える。それを承知させるための制裁なら有益だ。
ともかくバイデンはウクライナに思い入れがありすぎだ。イギリスとロシアの喧嘩にはあまり他国を巻き込まないで欲しい。フランスは国際金融資本とも関係の深いマクロンは比較的強硬派だが、大統領選挙のほかの候補は程度の差こそあれ、ロシアに対して現政権よりは融和的だ。
ドイツでは、社民党のシュレーダー元首相はガスプロムの役員でプーチンの代理人。しかし、現在の夫人は韓国人で日韓関係を破壊する急先鋒。二流の政治家は、個人の利害だけで論理にへったくれもない。