野党分断、国民民主党のトリガー

他のニュースに紛れて案外、見落とした方も多いかもしれない政界の話題が小さな国民民主党から引き起こされました。本当の意味でのトリガー(引き金)となるかもしれない「玉木雄一郎の変」、少しのぞいてみましょう。

そもそもは令和4年度の国家予算案の衆議院での採決で国民民主党が賛成したことで波紋が広がりました。国民民主党、つまり、旧民主党は与党、自民党のやることなすこと、「ハンターイ!」と叫び続け、その後、分党や解党となり、紆余曲折します。所属政治家は党利党略とお山の大将探しでどちらが有利かという自己都合の論理となりましたが、困ったのは連合など旧民主党を支持していた支持母体です。

途中のストーリーは省きますが、結果として共産党と連携した立民は党の存在が危ぶまれるほど追い込まれ、連合は「共産党と仲良くするなら終わりになるよ」を告げます。

その間、連合もおかしなことに自民党にどんどん吸い込まれていくのです。代表が芳野友子氏に代わり、今年の連合の新年交歓会に岸田首相が自民党党首として9年ぶりに参加しています。その際には芳野氏は「立民が軸」とは言っているのですが、実態としては急速に立民離れが進んでいます。連合の基本方針には「連合の政策実現に向けて、立民、国民と引き続き連携を図る」とあり、立民と国民は並列の「連携」だという点です。つまり、状況次第で判断するということです。

事実、連合は岸田首相の「新しい資本主義」構想を一緒に進めていく立場にあります。つまり、こういっては何ですが、芳野氏が昨秋、連合の代表についてからそれまでのイデオロギー優先から実務重視、つまり現実路線に大きく舵を切ったということです。これは逆に言えばイデオロギーの塊だった立民の枝野氏に強烈なパンチとなったわけです。

これが何を意味するか、といえばいつの間にか、日本の政治がより「強いものに巻かれよ」になり、自民を中心とした体制が強化されるということに他なりません。

私は岸田氏が期待すべきリーダー像だとは微塵も思っていませんが、彼の政権は長くなる、と就任当初から申し上げていました。それは岸田氏が「敵を作らず、うまく抱き込む」姿勢である点に「しょうがないな」と妥協の産物を生む政治となっているからです。安倍氏のように強いポリシーを持っていれば当然、賛成、反対で国すら割れます。が、岸田政権はそもそもがリベラルで、中道右派の自民党でもより中道寄りのリベラルでボリュームゾーンの所得中間層に最大の力点を置いています。

今の国民民主党はそもそもが中道右派であり、自民党との相性は正直、公明党より良いはずです。それゆえ、今回の玉木雄一郎代表が昨今のガソリン価格高騰に対して政府が「トリガー条項」の凍結解除を検討することを条件に令和4年度予算案を支持するとしたのです。これは背後で自動車総連がガソリン価格高騰への対策を求めていたものを受けたのです。

ところで、トリガー条項が本当に凍結されることがあるのか、といえば私はまだ疑問を持っています。法律改正というプロセスがあるため、時間がかかるのです。一方、原油価格が100㌦に手が届いた今、ガソリン価格が更に暴騰する公算はあります。仮にトリガー条項が解除、凍結されればリッターあたり25.1円下がります。大きいけれど逆に大きすぎるため、凍結した時と再度、条項が復活した時のギャップが大きすぎる「激変問題」が指摘されています。

悪評の「石油元売りへの補助金」を今の5円から大幅増させる声も出ています。高市政調会長からトリガー条項の金額と一致する25円を視野に入れる発言も出ています。いずれ、何らかの対策が出ると思われ、国民民主党としては予算案支持をした成果はあったと強調するでしょう。

立民の小川淳也政調会長が怒り狂っています。「予算を承認するということは今後1年の与党の政権運営を原則的に支持していることと同じ意味であり、野党としてあり得ぬ行為」という訳です。私はしかし、小川氏、ひいては立民の焦りとは野党として一緒に声を上げてくれる仲間が誰もいなくなった、ことだと思います。維新は独自の道を歩むでしょう。まさか、共産と再び歩調を合わせるわけにもいかないでしょう。あと残りは推して知るべしなのです。つまり、国民民主党が自民寄りになった瞬間に立民は生きる術が無くなるところまで追い込まれたということです。

但し、これが日本の政治に健全な体質か、といえば違います。国会は議論し、政治家は国民の声を政治に反映させる義務があります。だからこそ、私は自民を今、割るべきだと思うのです。自民内の不協和音は最近とみに大きくなっています。国民民主党のトリガーは思わぬ方向に行かないとも限りません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年2月25日の記事より転載させていただきました。