1週間ほど前から、当クリニックが密に連携をとっている高齢者介護施設で新型コロナのクラスターが発生しています(現在進行形)。
当院のドクター(私一人)が全ての患者のPCR検査から訪問診療まで担当し、今のところ病院搬送ゼロ、全て施設内で対応しているので、その施設内での介護対応と、診療の報告を2回に分けて報告しようと思います。
この施設の利用者は25人程度。うちコロナのPCR陽性者は今のところ5名。スタッフは20名ほどで、そのうち8名が陽性となりました。すでに陽性者と陰性者は完全に隔離されて1週間ほど経つので、これ以上の拡大はないと思われます。
というのも、この施設はPCR陽性者が続出しだしてからすぐに施設を「PCR陽性者のみ」のエリアとし、高齢者さんもスタッフも、ここで共同生活としたのです。こうすれば、高齢者さんたちは入院しなくてもすみます。高齢者施設ですので、90代は当たり前の超高齢の方ばかりですが、99歳でもほぼ無症状の方もおられます。病院に入院するよりは、住み慣れた環境で見慣れた人たちと生活するほうが安心です。点滴や酸素などが必要な方には、医師(私)が毎日往診し、その日の状況に応じて点滴や酸素の量を決めます。モルヌピラビルなどの新薬も投与しています。
実は、高齢者さん達を介護していたご家族で陽性になった方もおられたのですが、いっそ一緒に陽性者だけの施設に入ってしまいましょう。ということで施設内のお母さんのベッドの横で寝泊まりされています。自宅にいたらお母さんの顔も見られなくなるし、自宅隔離で外に出られないし、それならいっそ施設で一緒に。ということです。
スタッフも同じです。陽性になったら自宅隔離が長い。外にも出られない。完全無症状、もしくは発熱はあっても翌日には軽快してしまうスタッフも多い。それならいっそ施設でみんなで療養して、元気になったら逆にみんなのお世話をする(もちろん、小さい子がいるなどの事情で家にいなければならない方もいますが)。ソッチのほうが楽、という方も結構おられます。
こちらの写真では、「森田だけ陰性」、とありますが、これは決して「医師の私だけウイルスに感染しない強者」という意味ではなく、陽性者のみの施設に出入りできるのは医師の私だけなので、見かけ上こうなっているだけです。ちなみに、同じように施設を利用されている高齢者さんのうち、102歳でPCR陰性の方もおられます。そうした方々は、在宅でご家族に見ていただいたり、同じ会社の他の施設に一次避難したりしています。当クリニックは古民家を借りて開業しているのですが、そこの部屋も昨日までPCR陰性の高齢者さん(と付添のスタッフ)が滞在されていました。
こうしてスタッフも高齢者さんも一緒に施設内隔離、症状の重い方には往診で対応、としてしまえば、殆ど病院に搬送することなく施設内で対処できます。
よく考えたらこれってインフルエンザでも同じ。ここまで徹底して陽性者と陰性者を分けたのはコロナが2類相当の対応だからだったわけですが、インフルエンザのときだって、感染者を別部屋対応にしたり、フロアを分けたり、施設内ではそれなりの対応をしてきました。そして、在宅医などのプライマリ・ケア医は患者さんの症状に合わせて点滴したり、酸素投与をしたり、なるべく施設内で対応できるように努力してきたのです。それは、入院になってしまうと、高齢者さんの生活環境が劇的に変わってしまい、認知症の悪化・移動能力の低下など別の問題が出てきてしまうことが多いからです。
もちろん、人工呼吸器や気管切開、ECMOなどは在宅医療・施設医療では提供できませんので、それを望まれる方は入院することになりますが、そこまで超高齢になってそのような医療を希望する方はそんなに多くありません。その意向を長い時間かけて探っていくことこそがプライマリ・ケアの大事な仕事です。そのあたりのことは次回で解説します。
(次回:新型コロナ・クラスター診療日記②に続く)