ゴーン事件:ケリー被告実質無罪判決を米国政府は歓迎

日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告の報酬隠しに関与したとして、金融商品取引法違反罪に問われていた元代表取締役グレッグ・ケリー被告の判決は、ケリー被告に懲役6月、執行猶予3年(求刑・懲役2年)が言い渡された。

しかし、判決では、「ゴーン被告に確定した未払い報酬があったかどうかについては、有価証券報告書で開示すべき未払い報酬が存在した」と認定したが、報酬隠しがあったとされる8年間分のうち、2010~16年度の7年間分はケリー被告に報酬隠しの認識があったとは認められないとして無罪とし、17年度分については、ケリー被告にも未払い報酬の認識があったとして、共謀を認めた。

元日産代表取締役グレッグ・ケリー氏とカルロス・ゴーン氏

7年間分はゴーン被告と検察と日本版「司法取引」に合意した元秘書室長が未払い報酬を認識した上で、有報の虚偽記載をしたと指摘したが、元秘書室長の供述内容は、司法取引の当事者という「特有の事情」があり、検察官の意向に沿う危険性があると指摘。慎重に検討すべきだとした。

はっきり言って、人質司法、99%以上有罪の恥知らずの司法制度を否定できず、論理も何もないが、アメリカからの司法批判を心配して実質無罪に近い扱いにしたということだ。

これを受けて、エマニュエル駐日米大使は3日、日産自動車元代表取締役グレッグ・ケリー被告(65)に対する東京地裁判決を受け、「法的手続きが終了し、ケリー夫妻が帰国できることに安堵している」「ケリー家にとって長い3年間となったが、この件には区切りがついた」「ケリー家の今後が、喜びと幸福に満ちたものになるよう祈ってやまない」と述べ、ケリー被告の地元テネシー州選出の上院議員を務めるハガティ前駐日大使は「グレッグは米経済界では決して考えられない状況にさらされてきた」「グレッグは無実だ」と空港で出迎える予定である。

これを見て、ゴーンが公正な判決を受けられないとみて逃亡したことに一理あると見るべきか、フランス政府に協力してもらって圧力をかけてもらうべきだったと見るべきか、微妙なところだ。もともと事件のきっかけがマクロン大統領とゴーンの対立(基本的にはゴーンが日産の利益を擁護したので対立)にあったからアメリカ政府の圧力ほどのことはしてくれなかっただろう。

ただ、私は繰り返し言ってきたが、外国人のVIPで日本経済の功労者として評価されてきた人物に対して、社内抗争の一方の思惑に沿って、これまで日本人も含めていちども罪に問われたことのない斬新な容疑で逮捕するなど辞めた方が良いということがひとつ。

日本の司法はやはりおかしいとういことがもうひとつ。

こんなことでは、日米地位協定の改定だってアメリカが嫌がるのはもっともだ。