台湾・蔡政権が自治体独自の「福島食品」禁止措置の無効を通達

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台湾の衛生福利部食薬署は4日、政府が2月21日から輸入を解禁している福島等5県からの輸入食品の流通を、独自の地方自治条例によって禁止している一部の地方自治体に対し、その禁止措置を無効とする文書を送致した。

こうした禁止措置を実施しているのは、台北市、桃園市、台中市、台南市、高雄市の5つの直轄市と、嘉義県、雲林県、新竹県、基隆市、屏東県、彰化県、花蓮県、宜蘭県、金門県、連江県、澎湖県の11の県と市の、合わせて16の自治体だ。

何れも18年11年の統一地方選で当選したこれらの首長の内、台北市、台中市、雲林県、新竹県、彰化県、花蓮県、宜蘭県、澎湖県、金門県、連江県(馬祖諸島)は、台北市長を除き全て野党国民党の首長だが、桃園市、台中市、台南市、高雄市、嘉義県、屏東県、基隆市の首長は、何れも民進党だ。

なお、台北市の柯文哲市長は自らが率いる台湾民衆党の所属であり、また高雄市長は、18年に当選した国民党の韓国瑜が20年6月にリコールされて補選が行われ、民進党の陳其邁が当選している。

また16自治体の人口を見ても、台北市2.7百万、桃園市2.2百万、台中市2.8百万、台南市1.9百万、高雄市2.8百万、彰化県1.3百万と、新北市4百万以外の百万県市がすべて含まれており、その影響は極めて大きく、実質的に「解禁」が骨抜きになっているとさえいえる。

台湾政府が2月21日に即日施行した「解禁」は、食品安全法第4条第1項第5号に基づき「輸入検査を停止する日本食品及びその製造地域」を規定・発表したもので、別に公告した「きのこ類や野生鳥獣肉など」を除く食品は、「食品中の原子粉塵または放射性エネルギー汚染の許容基準」に違反しなければ検査をしない、つまり輸入・販売を禁止しないとした。

4日付の衛生福利部の別のリリースは、福島など5県の食品の販売を禁止する一定の規定を設けている前記16県市のうち11県市が、2月21日に書面で台湾政府に意見を提出したことに対して、以下の趣旨を述べている。

同部がそれらの意見を収集・分析した結果、特定の製品に対してとられる管理措置や各種製品の安全衛生基準や使用制限は、科学的根拠などの客観的基準に基づくべきで、リスク評価の権限は中央政府が行使すべきものである、と考えられる。

これらの管理措置は、国民の公正な価値の生活条件を確立するだけでなく、製品の輸入管理に直接影響を与え、国際貿易政策にも関わるため、措置や基準、制限の策定は、国との整合性が求められる。憲法や食品安全条例によれば、本件は中央政府の権限に属するもので、地方自治の問題ではない。

したがって、地方政府は自治規則を異なる管理規定として使用するべきではない。上記16の県と市の食品安全自治条例の関連規定は、明らかに憲法と食品安全条例に違反している。よって、111(2022)年2月21日をもって無効とすることを通知する。

知人(高雄在住の台湾人)は「流通させ、買う・買わないは個人の自由と思うが、国民党の反対が激しいし、台湾人は中心思想を持つ人が少なく洗脳され易い民族だからね」という。知人の同僚の言は「輸入すべきで、買うか買わないかは個人の選択」や「必要なら買うし、要らなければ買わない」など。

衛生福利部リリースの「国際貿易政策にも関わるため」との一語は、明らかにCPTPP加入への悪影響を念頭に置いたもので、蔡政権の思いが滲む。いずれにせよ新北市以外の台湾の百万県市のすべてが政府方針に従わないとなれば、蔡総統の指導力が問われかねない。

折しもロシアのウクライナ侵攻で北京の台湾侵攻が人口に膾炙している。蔡総統も訪台した超党派の米議員やポンペオ前国務長官の接遇の様子を発信し、国民の不安払拭を図っている。台湾国民にはぜひとも科学に基づく理性的な対応で政府を支え、結束して欲しい。