ウクライナに対して我が国は防弾チョッキやヘルメットなど防衛装備品の供与を決定ました。ですが本来「防衛装備移転三原則」は明確に紛争当事国には提供しない、ということが記されています。
確かに「防衛装備移転三原則」には「我が国の安全保障の観点から、特に慎重な検討を要する重要な案件については、国家安全保障会議において審議します」とありますが、「原則」をNSCが勝手に変えて、黒を白だと判断していいものでしょうか。
政府がNSCに白といわせれば、紛争地にミサイルやら潜水艦でも輸出することが可能ということです。そうであれば「防衛装備移転三原則」空文ということになります。どこにでも紛争当事国にすら、何を輸出しても構わない、ということです。
まさか、政府は防弾チョッキやヘルメットは「火の出ない玩具」だからいいというのでしょうか。そうであればAWACSも供与することができます。
供与にしてもせめて国会で議論してから行うべきではないでしょうか。政府の胸先三寸で、政府が決定した「原則」を簡単に曲がることは民主主義の否定ではないでしょうか。
「防衛装備移転三原則」防弾チョッキのウクライナへの移転に係る審議について
国家安全保障会議四大臣会合での審議の結果、我が国からウクライナへの防弾チョッキの移転について、海外移転を認めうる案件に該当することを確認しました。経済産業省は、本件海外移転に関する許可申請に対し、外為法に基づき適切に対応していきます。
断じて認められない力による一方的な現状変更は、欧州のみならず、アジアを含む国際秩序の根幹を揺るがす行為であり、これに対して我が国が国際社会と結束して毅然と行動することは、我が国の今後の安全保障の観点からも極めて重要です。そのため、ウクライナ政府からの要請を踏まえ、防衛装備である防弾チョッキを含む装備品等を迅速に供与することは、我が国の安全保障の観点から積極的な意義を有します。
本件海外移転の仕向け先はウクライナであり、最終需要者はロシア連邦の侵略に直面するウクライナ政府であるため適切です。加えて、移転される防弾チョッキは下記のとおり適正管理が確保されることとなっているほか、防弾チョッキについては、諸外国や民間の同様の装備品と同等の性能を有するものであることを考慮し、我が国の安全保障上の問題はないと認められます。
防衛装備移転三原則の運用指針の改正(令和4年3月8日)
ウクライナへの自衛隊の装備品等の提供に伴い、運用指針に定める「防衛装備の海外移転を認め得る案件」として「国際法違反の侵略を受けているウクライナに対して自衛隊法第116条の3の規定に基づき防衛大臣が譲渡する装備品等に含まれる防衛装備の海外移転」を追加しました。
「防弾チョッキについては、諸外国や民間の同様の装備品と同等の性能を有するものであることを考慮し」
これは失笑しました。自民党の先生方は我が国の個人装備は列国同等以上とでも、防衛省やら陸幕からレクを受けて真に受けているのでしょう。
ですが、88式鉄帽は既に時代遅れで、小銃弾が当たれば5センチも凹みます。防衛省は貫通しないから大丈夫と採用しました。そして今の主流である、内張りパットではなく、古いハンモック型ハーネスを採用しています。
当然当たれば脳挫傷は当たり前で、頭部に大きな被害を使用者は受けます。列国同等ではありません。
防弾チョッキにしても形状が実戦的とは言い難く動きづらい、しかも開発に関しては医官らの研究を退けて開発されました。ソフトアーマーも、プレートも大概怪しいと疑うべきです。
何しろ個人衛生キットが止血帯、包帯各一個で、米軍のIFAKに匹敵する主張していた「軍隊」です。弾当たることを前提に装備を開発しているのか怪しいものがあります。
更に申せば、戦略備蓄しているものを供与するならともかく、3型は陸自でもまだ普及していません。「自軍」への装備を後回しにしていいのでしょうか。
ウクライナは紛争当事国じゃない? 自衛隊の防弾チョッキ特例で提供 防衛装備移転三原則の歯止めどうなる
NSCでは三原則の運用指針を改定し、輸出先として「国際法違反の侵略を受けているウクライナ」を特例的に追加した。指針の改定には閣議決定や国会審議は必要ない。岸信夫防衛相は同日夜、「国際社会と結束して毅然と行動することはわが国の今後の安保の観点からも極めて重要」と説明した。
第2次安倍政権は2014年、「防衛装備移転三原則」に転換し、国際平和への貢献や日本の安保に資する場合、紛争当事国向けなどを除いて輸出を解禁した。今回、ウクライナは国連安全保障理事会による対応が講じられていないことを理由に、紛争当事国には当たらないと認定した。
(1)移転を禁止する場合の明確化(第一原則)
(ア)当該移転が我が国の締結した条約その他の国際約束に基づく義務に違反する場合、(イ)当該移転が国連安保理の決議に基づく義務に違反する場合、又は(ウ)紛争当事国(武力攻撃が発生し、国際の平和及び安全を維持し又は回復するため、国連安保理がとっている措置の対象国をいう。)への移転となる場合は、防衛装備の海外移転を認めないこととしています。
実戦を想定していない「お飾り」の陸自装備を紛争国に提供するのは、ぼくは犯罪的な行為だと思います。欧米製の装備を着用していたら助かった命が失われる可能性は少なくありません。
そのようなことを岸田首相、自民党の国防族の先生方は考えたことがあるのでしょうか。
また、供与するのであれば、それらがどのように使用され、どのような効果があったか調査をすべきです。我が国ではありえない、貴重な実戦経験を得る機会です。これをのがす手はないでしょう。
ですが、防衛省はやらないでしょう。実戦では使いもにならなかったと分かれば、メンツを失うからです。実戦を通じて不具合が露呈すればそれを、改良や開発に活かすべきですが、むしろ隠蔽して「ないこと」にするのが防衛省、自衛隊の体質です。ですから何度も同じような過ちを繰り返し、税金を浪費するのです。
仮に自分が戦場取材をすることになったら、間違っても国産のヘルメットや防弾チョッキは使用しません。命が惜しいですから。
【本日の市ヶ谷噂】
今回のワクチン大量接種センターも前回同様、N社などが不要な係員を多数送り込み、現場がむしろ混乱している。そして費用の多くが中抜きされていると医官たちは怒りまくり、との噂。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2022年3月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。