もし私がゼレンスキー大統領だったら、こう演説したい!

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欧米に倣い日本の国会でも、3月23日にゼレンスキー大統領が演説します。これまで氏は、ロシアの非道さや被害の深刻さを、映像も駆使して各国議員に訴えかけ、軍事・経済協力を求めており、日本でも概ね同じような演説を行うものと思われます。

ただ今回は、ゼレンスキー大統領が何をどう話すかを予想するのではなく、筆者がゼレンスキー氏になったとして、日本に向けて何を語るべきかを考えてみました。流れとしては、前半で「国会議員・国民の賛同・理解」を得る内容を、後半で「日本に求める協力」 について具体的な要求を、スピーチしていきます。

最初に全体的な賛同・理解を得るため、これまでの演説と同様、ロシアの侵略の非道さをとウクライナの惨状について力説し、その後、特に市民・子供の被害の実態を映像で流します。

2つ目に、日本にとってもロシアがいかに脅威であるかを、具体的に「北方領土問題」を取り上げ、次のように訴えます。

第二次世界大戦後、ロシアは一方的に日本の北方領土を実効支配したまま、半世紀以上たった今も返還に応じない。ロシアがこれまで占領し、実効支配した土地を返したことなどあっただろうか? ロシアはそんな国だ。ウクライナもまさに同じ状況にある。

3つ目に、「核兵器の脅威」について、具体的に広島・長崎への原爆投下を取り上げ、次のように主張します。

ロシア軍はわがウクライナ軍の抵抗に焦っており、核兵器の使用をちらつかせている。あなたがたは世界で唯一の被爆国であり、核兵器の恐ろしさを一番よく知っているはずだ。ウクライナで同じ悲劇を繰り返さないためにも、断固としてロシアの核使用を阻止し、侵略を止めさせなくてはならない!

4つ目に日本の領土・領海問題について、具体的に「尖閣諸島問題」を取り上げ、次のように指摘します。

日本固有の領土である尖閣諸島は、現在中国による領海・接続水域侵入が常態化しており、いつ上陸・実効支配されてもおかしくない状況にある。つまり、今日のウクライナは明日の日本にもなりかねず、皆さんにとってロシアの領土侵略は決して他人事ではない。

そして後半の「日本に求める協力」ですが、日本国憲法の制約も考慮し、主に経済協力・支援を要求します。

最初に「日露戦争」に関連付けて、資金援助を懇願します。

あなたがたは”日露戦争“で当時の大国ロシアに果敢に挑み、劣勢を覆し勝利した。勝因として日本軍の士気が高かったことは大きいと思うが、イギリスなどからの莫大な資金援助がなければ戦争を継続できず、勝利することは難しかっただろう。日本の平和憲法については承知しており、軍事的支援は強く求めないが、日本には世界トップレベルの経済力があるので、その豊富な資金を使って、かつてあなた方がイギリスに助けられたように、どうか私たちを助けてほしい。

2つ目に、ロシアからのエネルギー資源の継続的輸入禁止などの「経済制裁」であり、次のように要求します。

日本がエネルギー資源に乏しいことは承知しているが、ロシアからの原油・天然ガスの輸入はそれほど大きなシェアを占めてはいない。他国に輸入先を振り替え、輸入禁止を徹底して継続するとともに、サハリンでの開発協力についても中止(中断)してほしい。欧米その他多くの国と日本が連携すれば、ロシアにはボディーブローのように効いてくるはずだ。

3つ目に、難民救済をお願いします。

先進国である日本には、経済・人道支援の一環として、できればウクライナ隣接国へチャーター機を派遣し、可能な限りウクライナ難民の受け入れをお願いしたい。

締めくくりとして、一方的な要求に終わらず、ウクライナ自身の停戦に向けた取組みを表明します。

ウクライナ政府としても、犠牲者をいたずらに増やさないために、市民の避難・安全を最優先するとともに、停戦に向けて具体的な取り組みを行っていく。例えばNATO加盟については一旦取り下げ、クリミア統治ついてもロシアの領土と認めるつもりはないが、現状のロシア実効支配を鑑み、今後継続協議できる余地を残すなど、ロシアとの停戦協議に向け最大限の努力をするので、あなた方にも経済支援を中心にぜひ協力していただきたい。

※ 最後に個人的な意見になりますが、たとえどんな理由であっても、独立国家の三要素(領域[領土]・国民・主権)を侵害する行為は絶対に許されるものではありません。ゼレンスキー大統領には、ぜひ政府や多くの市民の心が揺さぶられるような演説を望みたいと思います。


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