昨日の朝から繰り返しお伝えしている通り、今日の電力供給が危機的な状況です。
電気は「同時同量」といって、使う量と作る量をぴったりと合致させることで周波数を一定に保つことができます。大量に貯めることはできない「究極の生鮮品」なのです。
なので、想定される需要より3%程度は発電設備が余裕を持っておくように運用することになっています。東日本大震災前は8%の余裕を見ていたのですが、余裕を見ることはコストがかかるので、「3%でええやろ」となったわけです。
しかし、その常識からいえば考え難い数字が、今日の東京電力パワーグリッドの「でんき予報」では示されています。使用率102%とか106%というのは、「発電設備ががんばって、いつもより多めに発電しております!」というわけではありません。実は「揚水発電」というバッテリーに貯めた電気を吐き出しているので、その分が加算されているのです。
先ほど電気は「大量に貯めることはできない」と書きましたが、唯一、大量に貯めることができる技術が「揚水発電」という技術です。上下2つの池がつながっていて、発電に余裕があるときに下から上に水を揚げておき、必要な時にその水を落として発電します。エネルギーロスは大きいのですが(3割くらい)タイミング命の電力供給の最後の調整役という感じです。
いまは、普通の発電設備だけでは足りないので、バッテリー(揚水発電)の電気も吐き出しているということですが、これが、今日お昼の12時時点の揚水の発電可能残量が71%でした。
8-12時の4時間で30%を使ってしまったことになります。
8-9時は需要の立ち上がり時間帯(朝皆さんが電気を使い始める時間帯)なので、実質的に3.5時間で29%、毎時8.2%ずつ発電可能残量が減っていったと考えます。
残りが71%なので、71÷8.2=8.7時間。このペースだと、19-21時のあたりで揚水が枯渇する計算になります。
揚水発電は「発電」という名前はついているのですが、バッテリーなので、充電する余力が必要で、今日使い切ってしまうと明日からが厳しくなってしまいますが‥何とか今日を乗り切れば、明日は天気が良くなり(かつ、パネルの上の降雪が溶ければ)太陽光も戦線復帰してくれると期待しています。
一日停電するくらい大したことないと仰る方もおられるでしょうが(私もどちらかというと、自分はそれほどダメージ無いです)が、世の中にはいろんな状況の方がおられるので、ぜひみんなの少しずつの節電をお願いできましたら。
家庭でできる節電はエネ庁のサイトに一覧になっていますが、例えば、すべてのお宅が今日9時間、暖房の設定温度を21度から20度にしていただくと
34.9Wh/1時間 × 暖房9時間/日 × 1900万世帯 = 596790万Wh =596.79万kWh
揚水発電所という我々の巨大なバッテリーのような設備が貯められる電気の量が東電管内に7000万kWhくらいあるのですが、それにとってこの量はかなり大きい。すみません、慌てて✖震える指で計算しているので桁間違ってたら申し訳ないです。
日経のエネルギーの記事はあまりピンとくるものが無いのですがこれはちゃんとしていました。
編集部より:この記事は、国際環境経済研究所理事・主席研究員の竹内純子氏のnote 2022年3月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。