世界再建の道は民主政治(屋山 太郎)

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会長・政治評論家 屋山 太郎

国連が全く機能しなくなり、核大国のロシアが国際秩序をぶち壊し続けている。世界秩序をどう回復すべきか、世界中が知恵を絞る必要がある。その前提として、我々が認識しなければならないのは、世界に二種類の政治体制が存在しているという現実である。一つは自由・民主体制を守ろうとする政治、もう一つはプーチン氏のロシア、あるいは習近平氏の共産主義中国のような、軍国主義的な専制国家である。

今、世界中がプーチン氏の動きに注目しているが、ロシアはすでに国際社会の中では脱落した。プーチン氏に下された評価は「常人ではない」というものだ。常人でない人の下した判断は誰にも信用されない。中国は、中露一体となった台湾奪取を試みることはないだろう。片割れが危なっかしすぎるからだ。

プーチンはウクライナ全土をロシアに組み入れたいのだろうが、自由・民主制陣営が削り取られ、専制主義の支配下に入ることだけは阻止しなければならない。NATOやアメリカの主張、要求はビタ一文負けてはならない。ウクライナ報道を見ていると、全ジャーナリズムが勝敗の行方や惨劇だけを注視して、専制主義化が成功した場合の大きな負の部分を見ていない。ベラルーシの後を追わせてはいけないのだ。

ロシアへの金融制裁にはNATO主要国、日本が同調した。ドイツはかつてモスクワまで攻め込んだのに、ロシアが東西ドイツの統合を認めてくれたことに恩義を感じていた。だからこそエネルギーの半分をロシアに依存する程、信頼したのだ。このドイツの政策転換はまさに「目覚めた」という程の転換で、ヨーロッパ史の流れを直角に曲げる程の衝撃だった。加えてショルツ首相は軍事予算の増額を打ち出した。これをきっかけに「眠れるNATO」ははっきりと目覚めたのである。

プーチン氏が引っ込んでも、ロシアの専制主義体質は変わらないだろうが、西側は彼らが専制主義国の面積を拡大させないことを見張ってなければならない。

日米両国は中国が台湾奪取に来るのを前提に「インド太平洋戦略」を構築しつつある。日米豪印のクアッド、米英豪のAUKUSも成熟しつつある。この種の防衛構想の深化とともに、中国も対抗策を練ってくるだろう。

中国の上空から東向きに撮った航空写真がある。沖縄、尖閣列島、台湾が一列になって中国が本土から太平洋へ向かう道を遮断している。「太平洋を半分」さらに、米国本土をも視野に入れる中国にとって、台湾を所有することは必要不可欠である。台湾が国の将来の道を塞ぐように見えるに違いない。それなら香港のような一国二制度で共存すれば良かったのだが、軍国・中国は納得しない。共産党は、中国を治める政治家や官僚を操るシステムだから、予想し得る将来に亘って共産主義を捨てることはなかろう。自由・民主主義陣営にとって負けてはならぬ勝負なのである。

(令和4年3月23日付静岡新聞『論壇』より転載)

屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生まれ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、解説委員兼編集委員などを歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。著書に『安倍外交で日本は強くなる』など多数


編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2022年3月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。