国立感染症研究所がついにエアロゾル感染を認める

2022年3月29日の毎日新聞に以下の記事が出た。

感染研がエアロゾル感染認める 飛沫、接触の報告書から一転

 新型コロナウイルスの感染経路について、国立感染症研究所(感染研)は28日、ウイルスを含んだ空気中に漂う微粒子(エアロゾル)を吸い込んでも感染するとの見解をホームページで公表した。感染研はこれまでエアロゾル感染に否定的で、飛沫(ひまつ)感染と接触感染だけを挙げた報告書を発表していたため、国内の科学者が「世界の知見とは異なる」と説明を求めて公開質問状を出していた。

日本は厚生労働省もなかなかエアロゾル感染感染を認めなかったが、2021年10月にやっと公式HPでエアロゾル感染を認めた。それを報じたのも毎日新聞だった。以下は2021年10月29日の記事。

厚労省「エアロゾル感染」認める 「飛沫と接触」との見解を改め

この時の状況について私はアゴラに以下の記事を掲載して頂いたので、よろしければご一読願いたい。

厚労省がやっと「エアロゾル感染」を認めた

何故今になって感染研が見解を変えたのかということに関して、京都大学教授の西浦氏がtwitterで意見を述べている。

書き方がおかしいと思いますが、Aerosol transmissionが明示的に書かれてこなかったのは感染研とか専門家判断ではなく〇〇〇の問題ですよね。。。感染研が言えなかったのは直接の下部機関的な扱いの影響があって(以下略)

ところで主たる感染経路が違うということになると、取られる感染対策も全く違ってくる。接触感染がほぼ無いということになれば、過度な消毒は行う必要がない、ということになるのだ。

厚労省が見解を変えるということは、コロナ対策を変える希望が持てるのだ。政府に対して大きな発言力を持っていると思える大阪大学教授の忽那氏は、2021年12月12日に以下のような記事を書いている。

ビュッフェの手袋、エレベーターの抗菌シート・・・そろそろ過剰な感染対策をやめていこうッ!

全く未知の感染症であった新型コロナも、この2年間で様々なことが分かってきました。
当初はとにかく感染リスクを下げるために何でもやる、ということで行っていた対策の中には、現在では「ここまではやらなくてもいいんじゃないの?」と思えるものも出てきました。
マスク着用、こまめな手洗い、3密を避ける、といった基本的な感染対策を継続していくためには不要な対策はできるだけなくしシンプルにしていくことが大事です。
今一度、ご自身の周りの感染対策を見直してみてはいかがでしょうか。

この記事が出た後にオミクロン株の大流行が起こって、結局感染対策は何も変わることなく現在に至っている。ただこういう記事が出た時点で、政府の中で接触感染対策はやめよう、という流れが出ていた可能性はある。

もう1つの飛沫感染についても重要だ。いわゆる「濃厚接触者」を認定しているのは、飛沫感染の可能性が高い人だからである。これも感染経路のほとんどは空気感染だとみなすようになれば、濃厚接触者の認定はあまり意味を持たなくなる。エアロゾル感染であればマスク着用や人と人との距離はあまり関係なく、同じ空間を共有していた人は全員感染リスクがあるからだ。

沖縄県立中部病院の高山医師が2022年3月27日に以下の記事を書いている。

沖縄県はなぜ、学校や事業所における濃厚接触者の特定をやめたのか?

実のところ、頑張って濃厚接触者を特定するよりも、空間を共有していた子どもたち全体に検査を行って、陽性者を特定する方が確実なのです。たしかに偽陽性(既感染者の長期陽性例の紛れ込みなど)の問題はありますが、空振りばかりの濃厚接触者よりはPCR陽性者に行動制限をかける方が妥当です。圧倒的に・・・

これは感染経路としてエアロゾルが中心で、現在の濃厚接触者の定義では感染していないケースが多いということを表している。マスクを外して近くにいるだけでは感染せず、逆にマスクを着用していても感染者と同じ空間を共有していれば距離に関係なく感染するのだ。

今の濃厚接触者の定義での特定をやめれば、子どもたちはアクリル板やマスクを外せるし、給食も互いに向かい合って15分以上かけて食べられるのだ。

現在の状況で「感染対策はエアロゾル防止に力を注ぐ。他の対策はやめましょう。」と言えば、コロナ騒動の大部分は終わることができる。エアロゾル対策で有効なのは換気だけだからである。

ちなみに、今回のニュースを見て「マスクに効果がないことを感染研も認めた」という意見を沢山みかけた。しかし感染研に公開質問状を提出した東北大学の本堂准教授は、エアロゾル感染を防ぐのに不織布マスクが有効だ、という意見を繰り返し主張している。以下は2022年1月3日の記事。

再び感染者が増え始めた初期段階の今こそ、速やかに科学性・効率性ある対策を
エアロゾル感染防ぐ不織布マスクと換気の徹底 変異株にも、医療・経済両面にも有効

感染者の抑制に、ウイルス対応マスクが最も重要な役割を持つことは、既に世界的に知られた科学的事実である。日本では、新型コロナ以前から不織布マスクをする習慣が根付いていたことから、欧米と比較して感染拡大が抑制されてきたとの指摘があり、事実であろう。

仮に本堂氏の意見が政府に取り入れられたとしても、今以上に不織布マスクの着用徹底が国民に求められるのである。

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