円安で溶ける防衛費

急激な円安が進んでおります。

円急落招いた、異例の「連続指し値オペ」 黒田ライン割れで日銀は

日銀はどこまで円安を容認するのか。円安が長引けば、原油などの輸入品の値上がりに拍車がかかり、景気を冷やしかねないだけに、市場では日銀の出方を注視している。

日銀は市場にこうメッセージを出すことで、金利を抑える姿勢を強く打ち出した。これを受け、金利が低い円よりも、金利が高いドルの方が運用益などが得られるとみた市場で、円売りドル買いが加速。同日朝には1ドル=122円台だった円相場は、123円台まで下落した。

だが、日銀の思惑とは裏腹に、肝心の長期金利はむしろその後、再び上昇に転じ、日銀が上限とする0.25%まであっさりと上がってしまった。

日銀の黒田東彦総裁が円安の行き過ぎに警戒感を示す水準について、市場では1ドル=125円近辺としていて「黒田ライン」と呼ばれている。

日銀の黒田総裁はこれまで、「円安は経済にプラスに作用している」と述べ、円安を容認する姿勢を強調してきた。

この円安は企業や国民生活だけではなく、防衛予算にも大きな影響を与えます。

例えば1ドルが110円の想定だった場合から、150円になると36パーセントになります。例えば1機100億円の航空機を米国から輸入すれば136億円になる、ということです。現在防衛省の装備調達では米国からのFMS(優勝軍事援助)が多くを占めますが、その他の国からの輸入品も少なくありません。

「国産装備」にしても大きいものはエンジンから、小さなものはコネクターの類など少なからずコンポーネントは外国の供給に頼っています。これらも相応に値上がりします。当然ながら完成品だけではなく、部品や消耗品、弾薬の類も値上がりします。

そして艦艇、車輌、航空機の使用する燃料も大幅に値上がりします。そもそも原油などが大幅に値上がりしている上に、円安によるコスト高騰ですから燃料費の確保は大変です。のみなず、基地や宿舎などで使用する電気料金も当然ながら値上がりします。

食料も値上がりしますから、防衛費の約4割を占める、人件糧食費も値上がりします。

今年度の予算を昨年度の補正費を、本来補正ではありえない「お買い物予算」あるいは「第二の防衛予算」化して、防衛費を過小に見せかけていますが、実態は6兆円です。同じレベルを維持するだけでも1~2割防衛費を増やさないといけなくなるのではないでしょうか。そしてその原資は恐らくは将来の国民が背負うであろう国の借金によって賄われます。

アベノミクスという荒唐無稽な詐欺同然の経済対策、そして同じく荒唐無稽な黒田日銀の金融政策が10年も掛けて日本の経済をおかしくしました。そもそも異常な上に、金融緩和で、2年でインフレ率2パーセントにする、できなければ2年でやめると言ったのにもう10年も日銀総裁の地位にしがみついています。

無能でしかも嘘つきの老人が日本経済を奈落の底に突き落とそうとしているのに、政府は何もできません。この国の将来が大変不安になります。

【本日の市ヶ谷の噂】
海上自衛隊の潜水医学実験隊には既に潜水医学の専門家はいない。既に訓練が業務であり、研究は業務ではないなどと言い出している始末、との噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2022年3月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。