国家として人材を大切にしているか

航空自衛隊小松基地所属のF15戦闘機が離陸直後に墜落した事故でお亡くなりになられた田中公司1等空佐と植田竜生1等空尉の葬送式が3月12日、同基地で行われました。

お二人は空中戦技能を指導する「飛行教導群」の所属。群司令の田中1佐は曲技飛行チーム「ブルーインパルス」の隊長経験もあるベテラン。先般、私もF15に乗せて頂きました(体験談は私のyoutue「るいチャンネル」ご参照)が、空中での任務には実に8Gもの重力がかかる過酷な環境です。その中で敵機を見つけ、排除する任務を軽々とこなすF15戦闘機パイロットは、自衛隊の誇る選ばれた能力の持ち主です。日本にとって本当に貴重な人材を亡くしました。

これまで日本防衛のために、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえることを誓います。」との宣誓どおり、職務を遂行して下さったことに心からの敬意を表します。

防衛省・自衛隊自体はとても人を大切にする組織です。今般も、岸信夫防衛相ご自身もご葬儀に参列されました。空自トップの井筒俊司航空幕僚長は「まさに慟哭(どうこく)の思いだ。二度とこの様な事故が起きないよう、一層の努力を誓う」と弔辞を述べ、熟練パイロットの死を惜しみました。

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ただ、たった1年の防衛大臣政務官の経験ではありますが、自衛官の待遇にはまだまだ改善しなければならない点が多いと感じています。その一つが、退職後の人生設計についての配慮です。

自衛隊は軍隊ですから(国際法上は)、ピラミッド構造です。若年層人口が多く、年齢が経つにつれ幹部以外の自衛官はどんどん退職していきます。退職も、一般の国家公務員は60歳ですが、53歳という割合早い年齢から退職が始まります(自衛官は特別公務員に分類されます)。また、もっと早い年齢でおやめになる方も少なくありません。ですから、防衛省が、ご本人が希望されれば退職後の就職のあっせんをします。

ところが、この就職あっせんは60歳未満までであって、60歳以上の将補クラスになると、幹部ということで、突然あっせんが禁止されてしまいます。自分で勝手に探せというわけです。今、国家公務員の定年は65歳に引き上げられていることを考えると、不公平に感じます。不正があってはいけないということでしょうが、きちんとした形でであれば、あっせんしてもよいのではないでしょうか。

若年で辞められた方については、民間に転職した際に、自衛隊での経験が評価され、普通の転職以上に評価が高くなるようにできないものかと思います。

自衛官になったら、できれば、一生、金銭的には心配せずに安心して生涯を送ることができるような体制を作っていきたいと思います。そうでないと、優秀な人材が門をたたいてくれませんし、また、国のために危険を顧みず身をとすことを要求していることに対して釣り合わないように感じています。

本日、私が所属する外交防衛委員会で、その件を質疑させて頂こうと思っています。とはいえ、今日の持ち時間は10分なので、ほんの頭出し程度になるかとおもいます。

自衛官に限らず、人材の活用が日本は出来ていない気がしています。科学技術分野における若手研究者しかり、霞が関の国家公務員しかり。平成の失われた30年は、国家としての人材のリソース配分の間違いと、人材を大切にしなかったことのつけのような気がしています。


編集部より:このブログは参議院議員、松川るい氏(自由民主党、大阪選挙区)の公式ブログ 2022年4月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は、「松川るいが行く!」をご覧ください。