野球のシーズンが戻ってきました。アメリカでは大谷翔平が再びセンターステージ。日本では開幕で躓いたけれどビッグボスこと新庄剛志監督の展開が注目されるのでしょう。コロナも予断は許しませんが、過去2年に比べて観戦もしやすくなりようやくニュース欄もバラエティに富んできそうです。ゴルフもこれから週を追うごとに話題になりそうです。コロナ感染者数とウクライナの惨状のニュースばかりではめいります。苦しい時のスポーツ頼み、ですかね。
では今週のつぶやきをお送りします。
市場の動きは神経質に
私のポートフォリオの中で元気な分野を3つ挙げよ、と言われたら1位石油、2位ガス、3位産金です。笑ってしまうかもしれませんが、事実は事実。それぞれの業種に4-6銘柄ずつ持っており、どれも同じような展開ですので業界の動きとみてよいでしょう。注目は産金会社です。これは金の価格が比較的安定していることもあり、あまり注目を集めなかった産金会社に割安感がありじわっとした上昇になっており、いつの間にか年初来高値銘柄が増えてきています。
人々が金に注目する時とは世の中があまりぱっとしないときです。今回は2つあります。1つはアメリカのインフレです。通常、金利が上がる局面では金は売られるのですが、インフレ率がそれを上回るなら金はポジティブに評価できます。もう1つは世の中の不安感です。特に通貨で何を信じてよいかわからなくなれば金に向かいやすくなります。日経ビジネスには国際金融の大御所、行天豊雄氏が反欧米国家が新たな金融決済網を構築してもおかしくない、と述べています。
今、我々の社会では「ありえないこと」が起こりうる時代になったことを認識しなくてはいけません。過去を見て「それはない」と断言することほど恐ろしい間違いはないのです。AIは過去を見て予想します。しかし、我々が突き進んでいる社会は異次元の世界です。プーチン氏がここまでやると誰が想像したでしょうか?その前提に立つと今注目すべきは世の中の根幹が揺るいだ時、何が必要なのかであり、案外、最もベーシックなことが重要だったりするのです。その代表例が食糧、資源、物流であり、金は最も古典的投資対象なのかもしれません。
そんなに高い給与じゃ困る!
アメリカのウォールマートがトラック運転手の給与を入社1年目で最大11万ドル(1360万円)とすると発表しました。入社1年目です。北米ではそもそもトラック運転手は大幅に不足しています。が、日本のトラック運転手の平均年収は4-500万円とされる中でいくら何でもやり過ぎだろうと思うのです。ご批判覚悟で申し上げるなら一生懸命勉強し、努力は報われるとされ、多くの人は負けじと頑張ったはずです。ですが、1年目でこの給与となればアメリカならなぜ、学生ローンをしながら大学に行かねばならないのか、という声が出てきてしまいます。
それ以上にアマゾンを含め、大手企業が提示する給与は中小企業を締め上げることになります。「人材募集をしても誰も応募がない」のは当たり前です。大手の提示額と違い過ぎるし、職場環境の心地よさも違うでしょう。とすれば社会における大企業と中小のバランスが壊れてしまうのです。本来なら大手なら安定しているから給与が安くてもほかのベネフィットもあるので就職してもよいというのが正論だったはず。アメリカは従業員争奪戦が昔から酷いですが、ついにここまで来たのかと思います。
そこまでやっても一部の会社は1年で90%の人材が入れ替わるというのですから驚きです。つまり、従業員側の忠誠心もなく、目先の人参にぶら下がり、いいとこどりとなればアメリカの健全なる経済成長はあり得るのでしょうか?こう見ると日本の賃金は安いけれどみな工夫をしながら生活をエンジョイしているように見えます。お金だけもらっても幸せ度は果たしてどうなのか、大いなる疑問であります。
岸田首相の踏み込み方
岸田首相の世論調査における支持率が就任以降、あまり崩れていないと評されています。ポリシーなき政治ゆえに岸田色がないから、と揶揄する声もあります。それはさておき、対ロシアへの姿勢はかなり鮮明で厳しい策を次々と打ち出しています。今回個人的にも驚いたのが石炭輸禁、外交官追放です。強硬ですが、基本的に欧米に足並みをそろえたものです。日本独自のものでありません。G7の一国としての使命感なのでしょう。特に林外相が参加したNATO会議で中国を名指し批判しましたが、はっきり見えるのはアジアにおける外交のリーダーシップと明白な路線づくりかと思います。
イアンブレマー氏はGゼロの社会の到来を予言します。私もそう考えています。つまりバラバラの社会です。ただ、現在だけみれば日本は戦争リスクを抱えているため、欧米の傘に入ることが戦略的に不可欠とみます。憲法解釈でぐずぐずしている間に世の中はすっかり変わりつつります。あの共産党の志位委員長の自衛隊必要発言はなぜ飛び出したのか、時代の変化だとみるべきでしょう。もちろん、夏の選挙対策もあります。
長年努力した日ロ関係は振り出しに戻ります。ロシアとは会話すらしにくくなります。北方領土問題は50年はお預けでしょう。ロシアも黙っていません。その時日本政府は「不本意、不当、遺憾」と他人事のようなコメントが意味をなさないことを肝に銘じるべきです。石炭のみならず、石油ガスの代替はたやすくありません。争奪戦です。となれば原発の再稼働議論も避けて通れません。つまり岸田氏はロシア締め付けに対するマイナス効果に対するプラスの提供が必要なのです。プラスマイナスゼロになる施策を出せますか?肝がそこまで座っていますか?岸田氏の手腕が試されます。
後記
フランスの大統領選ががぜん注目となっています。選挙活動をほとんどしなかったマクロン氏に対して戦法を変えて「脱悪魔」化した極右のルペン氏が1%ポイントの差に詰め寄っており、決戦投票は確実の情勢です。ルペン氏が圧倒的な追い上げで勝敗の行方は予想困難となっています。マクロン氏楽勝説すらあったのに今や、危機感を募らせているというのですから選挙は水物です。もしもルペン氏が大統領になれば欧州の政局は大きく変わります。それがウクライナ問題にも驚くほど波及するのは目に見えています。世の中、本当に先が見えにくくなっています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年4月9日の記事より転載させていただきました。