3秒で判断する癖をつけて判断力を強化する

かつて不動産事業本部に在籍していた際、部長とペアを組む特命係だったこともあり、うんちくある話や経験談を数多く聞かせてもらいました。その中の一つが「3秒で下す判断力」です。「仕事をしていると常に判断をし続けることになるが、その判断に迷っていると次々押し寄せる判断待ちで業務がマヒする、だから、3秒で判断する癖をつけなくてはいけない」というのが趣旨でした。今から35年ぐらい前の話です。しかし、この言葉は今の私を作り上げた原動力になったとも言えます。

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皆さんが判断に迷った時、どうするでしょうか?自分で調べる、人に聞く、放置する…様々だと思います。自分で調べるにしても簡単に答えがわかるものもあればわからないものもあります。例えば「あなたは年金を何歳の時に受給開始したいですか?」と聞かれたら答えはばらけるかもしれません。

理由はその人の価値観が判断を支配するからです。「俺は健康に問題があるから長生きしない。ならば早くもらったほうがいい」という人や「まだ、それなりに収入あるし、貯金もあるから70過ぎでもいいか」という人もいるでしょう。

女性は「これ、どうしたらいい」と友人に相談することが多いのですが、相談した時点で既に自分の答えは持っています。「赤い服と青い服、どちらがよいか」という判断で自分は赤が気に入っていても友人が青がいいよと言えば「そうかしら」というでしょう。デパートの店員は「どちらもお似合いですね」というのはある意味、女性の心理を知り尽くしているからで「自分で決めて」と背中を押しているようなものなのです。「赤、素敵ですよ」の一言で「やっぱり、赤にする」と言いませんか?

判断力はそのシーンが出てきたときに突然さいころを転がすように「こっち!」という訳にはいきません。天からの声も聞こえてきません。そこに至るためには準備が必要なのです。冒頭の部長が述べた「3秒の判断」の背景には常に勉強し、分析し、論理的構築を自分の中でしておくこと、そしていざ、判断のシーンになったら自分の頭にある分析回路を通じて自分なりの絶対的判断を瞬時に下す、という意味です。

このブログには様々な意見、コメントが寄せられます。これに対して「こいつ、わかってないよな」と思うのか、「なるほど、そういう見方もあるね」と思うのかでこの判断力を養う知見は大きく異なります。相手の考えを完全否定できることはそう多くはないというのが私の経験です。9割の否定の中にも1割の理はあるものです。それもあり、時として私はブラフ的なことも書くのですが、それは「えー、マジ?」と思うことで脳内の刺激を大きくし、意見を引き出しやすくさせることも大事だと思っています。

物事の判断をするには私はなるべく多くの判断材料を求めます。5つでも10でも多いほど良いのです。そしてそれらが常に頭の中に格納されています。「おまえ、今度、クルマ買い替えるなら何にする?」と聞かれた際に大局から絞り込む作業を一瞬でするのです。そう、できれば3秒以内に。普通なら「えーと、トヨタの〇〇。でもホンダの〇〇もいいな」と悩むでしょう。

私のアプローチは「今度の車に何を期待する?荷物、乗れる人数?どこを走行するか?どんな走りをするか?」で車のタイプを決めます。乗用車かSUVかですね。走り方の判断で軽か普通車も決められます。予算が見合っているかも瞬間にインプットされます。どこのメーカーの車が好きかは日頃からイメージチェックや評判を確認しているので必然的に絞り込み完了となります。

そんな私でも判断力が悪いと思うことがほとんどです。実は判断力の実践で一番多いのが、株の売買シーン。買うときはひょいと買えるのです。むしろ、盛り上がっていて株価がどんどん上がっていくと「あー、早くしなきゃ」と思い、成り行き買いをすることもあるでしょう。が、多くの場合、その後、一旦、下げます。「あの時、場の雰囲気に乗せられたな」と反省するのです。

しかし、株はそれ以上に売る時が最も難しいのです。「まだはもうなり」という株式格言があるのですが、「もっと上がるかもしれない」と思うと絶対に売れなくなります。しかし、「頭と尻尾はくれてやれ」的な発想で割り切るしかないのです。去年それなりに利益が出て売った銘柄はその後、3倍になり、「くそっ!」と思うものの未来が見えないのですからなぜ早まったのか、反省あるのみでした。

例えば10%上がれば強制終了するという自己ルールを作るのもありです。それこそ絶対的な判断材料でそれ一つであとは何も考えなくてよいことになります。ではそれが楽しいかといえばこれば別の次元の問題になると思いますが。

株をやらない方のために判断力を備えるたとえ話に私は「回転ずし」の寓話をします。「美味しそうなトロが廻ってきた。あなたは手を伸ばすか?」です。「まてよ、その後にきているウニもうまそうだ」と手を引っ込めたらそのトロは2度と廻ってこないのです。つまり、判断力が試されるわけです。

ちなみにこの寓話、どのシーンで使うか、といえば若い人向けに恋愛話をするときに効果抜群なのです。「この人と付き合うか」で迷わずにさっさと付き合ってそれから考えよ、ですよね。ぐずぐずしていると良い人はとられてしまうのです。

判断力は我々の日常に常に付きまとっていることです。それを意識して強化することはとても意味があると思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年4月10日の記事より転載させていただきました。