デジタル教科書が学習障害児を支援する可能性

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京都新聞に「学習障害生徒の教科書にルビ振るボランティア、母親・参加者らの思いとは」という記事が掲載された。

漢字が苦手な中学生の教科書にルビを振る作業に市民ボランティアが取り組んでいる。中学生の母親は「子どもと過ごすゆとりができた」と喜び、ボランティアは「自分自身の学び直しにもなる」と張り切っているという記事である。

人々の善意で学習障害児を支える素晴らしい活動だが、ちょっと待ってほしい。デジタル教科書にはルビを表示する機能が付いているからだ。

文部科学省が2021年に発行した「デジタル教科書  実践事例集」には、教科書を拡大表示する、マーカーで書き込みをする、機械音声で読み上げる、背景色・文字色を変更・反転するなどのアクセシビリティ機能」の一つとして、漢字にルビを振る機能もあるとの説明がある。

京都の中学生もデジタル教科書を使用すればよいのだが、いくつか課題がある。

第一は、すべての教科でデジタル教科書が使用できるようになっているか。紙の教科書しか配布されない教科では、ボランティアがルビを振らなければならない。

第二は、すべてのデジタル教科書でルビの表示が同じ方法で設定できるか。今のところ、教科書会社によってアクセシビリティ機能の設定方法が異なっている。同じ会社の教科書をすべての教科で採用することはありえないから、授業時間ごとにアクセシビリティ機能を設定し直さなければならないというわずらわしさがある。

第三は、他の中学生が紙の教科書を開いているときに、この子どもだけデジタル教科書を使うのが許されるか。教員に障害に関する知識が乏しければ、他の子どもたちと同じ学習方法を強いるかもしれない。

すべての科目でデジタル教科書を使用できるようにし、一度アクセシビリティ設定すれば繰り返す必要がないように教科書会社間で統一し、子ども一人ひとりに適した学習方法を教員が許容するように導く。そんな解決策が必要である。

様々な障害を持つ子どもの割合はおよそ10%である。30人クラスなら2人から4人の子どもがアクセシビリティの問題に直面している。京都の中学生のことは偶然メディアに取り上げられたが、同じ問題を抱える子どもはほかにも大勢いる。文部科学省はアクセシビリティ問題の解決に取り組んでほしい。