コロナ感染者数予測シミュレーションのデタラメ --- 山登 一郎

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一昨年以来コロナ流行が何波も起こり、その都度専門家会議・分科会や報道では感染者数予測シミュレーションが頻出した。本プラットフォームでは、検査とその情報収集開示不備を批判した。今回、感染者数予測シミュレーション研究者の御用学者然とした問題点を批判する。

第一波での8割行動削減の自粛を促した研究者など、多くのシミュレーション研究では、S(E) IRモデルを利用している。

  • S:感染可能状態、つまり一般の非感染者
  • E:潜伏期状態、感染しても感染拡大には寄与しない
  • I:感染拡散状態、つまり有症・無症の感染者
  • R:治癒状態、そこには隔離されて感染拡大させ得ない状態の人も含む

これらを含め、感染拡大速度に当たる実効再生産数などの情報をパラメータとして、微分方程式を計算機で解く。

問題は、日本でI、つまり感染拡大させる可能性のある人数の情報が得られないことだ。日本のシミュレーション研究では、その代わり、日々の公表新規感染者数の情報を入力値として用いているようだ(医療ガバナンス学会、メルマガ記事)。すでに指摘したように、行政・保険適用検査陽性者はその後入院や隔離・自宅待機になる。つまり、その時にはIの状態では無く、R、つまり治癒なり感染拡大不可能状態になっている。そのRの数をIとしてシミュレーションして意味のある情報が得られるのだろうか。

彼らが真摯に、まじめにシミュレーションして意味のある結果を得ようとするなら、本来のI、つまり感染拡大に寄与する市中の有症・無症感染者数の情報が必要だ。しかし日本では、市中無症状者の検査を広範には行わず、民間自費検査情報も収集せず、だから公表新規感染者情報にはそのIに対応する情報が収集されていない。そのことに気づけば、彼らはコロナ対策本部の厚労省や専門家会議・分科会に疑問を呈し、その情報を得るよう進言するべきだろう。でも、多分いまだどの研究者も、そのことを政府自治体専門家分科会などに対して訴えたようすがない。

これでコロナ感染対策の科学者と言えるのだろうか。この点が御用学者然としていると批判するところだ。政府自治体専門家の言うがまま、それを肯定・受け入れ、思考停止状態で何らかの自身が関連する範囲だけの研究活動をしているように思える。研究支援を受け、それに応えて政府自治体専門家の対策方針に矛盾しない範囲内の研究を行っていると見える。日本の科学研究の没落を憂え、将来が心配になる。

ロシアのウクライナ侵攻では、プーチン周辺のFSBなど取り巻きが誤情報を伝えたと報道されている。太平洋戦争の戦前戦中には、御用報道・御用学者が戦争遂行を肯定したとされている。コロナ対策での日本の報道や研究者にその匂いを嗅いでしまい、恐れている。日本の経済成長も低く、生産性も向上せず、世界に後れを取っているとも指摘されている。原発や経済政策も、このコロナ対策同様、科学的論理的な思考をあと回しにさせる何らかのメカニズムが働いているのではないか、と心配になる。国民も、しっかり目を見開いて、自由民主主義を守る努力をして頂きたいと念じる。

山登 一郎
東京理科大学基礎工学部名誉教授。大学では微生物学を講義していたが、7年前退職。2020年クルーズ船入港時よりコロナ関連の報道に注目、検査制度の不備を指摘し続けている。