コロナ流行に際し、政府自治体専門家による検査およびマスの療養施設準備不作為で、国民は大きな被害を被った。医療ガバナンス学会メルマガ上で、何度も市中感染状況情報の収集開示不備を批判した。ここでまた指摘する(引用する韓国、上海、欧米、日本のコロナ情報については、それぞれのコロナ関連サイトで確認して下さい)。
1. 日本のコロナ検査体制
一昨年当初、37.5度以上4日以上発熱で保健所に連絡して受検できた。その受検制限は批判され、発熱外来などで医師に相談して保険適用検査を受けられるようになった。それら検査陽性者周りの濃厚接触者も定義され、彼らは保健所が検査した。以上の各種検査結果が厚労省発表の日々の公表新規感染者数として公開される。
一昨年6月第一波が終わり、夏前にはJリーグなどでのPCR検査が認められ、競技がスタート。その検査陽性者は、上記保健所経由の行政・保険適用検査を再受検して陽性確定される。こうした非感染・無症状者対象の検査は民間検査として有償だ。この種の検査は高齢者施設などでも広く行われるようになった。一昨年12月には、一般市民に対しても民間自費検査センターがスタート、市中一般人が陰性確認のために受検する。ただ、これら民間自費検査の検査結果、検査数も陽性者数もどこにも収集されず、公開もされない。
一昨年の暮れから正月の第三波急増に際し、この民間自費検査情報が“見えない化”されていることに気付き、各所にその収集公開を訴えたが、政府自治体専門家報道国民どこもそのことに注意を払っていない状況だ。
昨年末オミクロン株への置き換わりで感染拡大し、マン延防止等重点措置が発令された。政府はその際市中無症状者対象無料PCR検査を行うと発表、暮れから大阪や東京でスタートした。やっと市中無症状者の無料検査が始まった。その陽性率は正月には東京3%と報告された。丁度都で1万人程度の公表新規感染者数の時、14百万都民の3%、40万人の市中無症状感染者の存在が推定された。ところが1月末には検査資材の不足が言われ、“みなし陽性”もスタート、厚労省も当初検査情報収集体制の放棄を宣言することになってしまった。3月末には当のマン延防止等も全面解除され、無料検査も停止状態である。
つまり公表新規感染者数は、基本的に発熱有症者を中心とした陽性者数を示す。一方無症状者の多いことが当初から知られていた。その無症状者は症状がなくとも感染拡大させることが知られ、隔離されるべきとされる。その感染状況情報が“見えない化”されているのだ。
2. 諸外国の検査情報
市中無症状者も特定するために、欧米や韓国などでは“誰でもどこでも”検査を街中で行っている。それらすべての検査結果である検査件数、陽性者数などを公開している。これで国民が“市中ではどの程度の感染者がいるのか”把握でき、的確な行動を判断選択できる。
- フランス、昨年12月25日、155万件の検査で10万人陽性者、陽性率6.5%との報告。全国民では400万人感染者と推定できる。
- 韓国3月上旬、40-60万人感染者と報道、陽性率50%近いとされた。つまり日に120万件の検査を行い、全国民の半数が感染していると推定できる。
- 最近の2千万人超上海市のロックダウンでは、2-3日で全員PCR検査を行い、93%が無症状感染者との報告がある。
3. 日本の検査不足およびその情報収集公開の不備
この1月の無症状者対象無料検査の結果で、上記のように都内では公表新規感染者数の40倍もの無症状感染者がいると推定できた。ところが、日本ではこれまでずっとこうした無症状者中心の市中感染状況は把握されてこなかった。今も報道では、有症者中心の行政・保険適用検査の結果である公表新規感染者数だけを報告している。しかも現在ですら、日本の最大全検査能力は日に41万件でしかない。
諸外国の情報も入手でき、無症状者も多数存在することが知られているのに、日本では公表新規感染者数情報だけが市中感染状況を示すと受け取られ続けている。その根拠として、分科会メンバーは、感染者の3割が無症状者だとの報告があり、一方公表新規感染者数のうちの3割程度が濃厚接触者からの陽性判明者であることから、まるで公表新規感染者数が日々の有症無症すべての新規感染者を網羅しているが如き説明をする(メルマガ記事)。そんなデタラメを誰が信じるのだろうか。
日本のコロナ流行では、失う必要のなかった多くの命・健康、医療従事者等の逼迫状態、緊急事態宣言などによる国民の自由の制限・経済的損失、補償や医療などでの税金の無駄遣い等々国民は多大なる被害を被った。その大きな要因として、論じてきたように検査不足と的確な情報の非収集・非開示がある。
こんな情報不足で、どんなコロナ対策を打てるというのだろうか。国民も、自らの行動を律するに、何を根拠に行おうというのだろうか。是非ともしっかり目を見開いて、現行検査制度の不備を見定め、政府の情報操作に惑わされることなく、コロナ感染状況を正確に把握するための検査情報入手努力をして、自らの行動を律して欲しいと期待する。
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山登 一郎
東京理科大学基礎工学部名誉教授。大学では微生物学を講義していたが、7年前退職。2020年クルーズ船入港時よりコロナ関連の報道に注目、検査制度の不備を指摘し続けている。