医療健康ロビーの強大さを知らずして、コロナ騒動を語るなかれ

こんにちは。

私の持論のひとつが、アメリカは財界と政府首脳・連邦議員・高級官僚との間の贈収賄が完全に合法化された国であることを抜きにして語れない国だということです。

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ロビイング規制法と称する贈収賄奨励法が連邦議会を通過したのは、第二次世界大戦が終わった翌年、1946年のことでした。

当時は「GDPの3分の1近くに達していた国防費が消えてなくなったら、アメリカ中の企業が業績不振となる。そうなったら1930年代大不況が再現されるかもしれない。それを防ぐためには、多少不正を犯してでも企業が儲けを維持できるような仕組みを作っておくべきだ」ということだったのでしょう。

連邦議会に登録し、四半期ごとに決算書類を開示するロビイストを通じてなら、企業や業界団体が議員などの政治家に献金することを合法化してしまったのです。

その後70年以上を経過し、今やアメリカは上から下までどっぷりとワイロ漬けになったあさましい国となってしまいました。

今般の新型コロナウイルス騒動では、都市生活をほぼ完全に機能停止させるロックダウンですとか、失業の脅しをともなう半ば強制的なワクチン接種の奨励ですとか、不自然な強硬策が目立ちました

それがなぜなのかも、ロビイング活動の大きさを認識するにつれてわかってくるはずです。

ひときわ目立つ医療関連ロビーの多様性

さまざまな業界団体、職能団体の中でも、昔から人間の生き死にに関わる仕事をしているので好収益だった製薬業界、病院業界、医師会などが、もっとも有効にロビイング制度を利用して強大な利権集団を形成しました。

まず、最新の資料でアメリカで政治家たちに対する献金額がトップ20となったグループの表をご覧ください。

まっ先に眼に飛びこんでくるのが、医療健康関連の企業や団体の数の多さと、順位の高さです。

業界横断的な団体である商工会議所を別とすれば、最高位の業界団体は全米リアルター(不動産業)協会ですが、そこには開発・賃貸・仲介とさまざまな業務内容の企業が加盟しています。つまり、これは業界団体としては中分類に当たります。

一方、第3位の研究製薬工業協会は、自社で研究開発した新薬を製造販売する、製薬業界の中でも一流のエリート企業だけを集めた小分類です。

この小分類のほうが、全米製造業者協会という中分類の団体の2倍に当たる金額を出しているわけですから、いかに製薬が儲かる事業であり、かつまた政治家を動かせばさらに利益を拡大する余地の大きな業態かがわかります。

当然のことながら、業界団体構成企業の大部分が上場企業として株主のために収益を最大化する責務を負っていますから、献金額に対して大きな見返りが得られなければ、株主への背信行為ということになります。

ついで5位に入ったのが、単独企業としては最高額を献金したブルークロス・ブルーシールズです。

アメリカ政府が提供する、低所得層向け健康保険メディケアと高齢者向け健康保険メディケイドの実務を幅広く受け持っている、国策会社とでも言うべき企業です。

なお、6位の病院協会と8位の医師会が別々にランクされていることに驚かれた方がいらっしゃるかもしれません。

アメリカでは、医学研究所や大学医学部の付属ではない病院は、基本的に医療行為は提供せず、ほぼ純粋な宿泊施設と見なすべき存在です。

ただし、大病や重い怪我を負ってほとんど選択の余地なく担ぎこまれてくる患者から、ぼったくれるだけ高い料金をぼったくる、そうとう悪質な宿泊業者ですが。

最近の相場は、1泊数十万円から百数十万円とのことです。

一般開業医や看護師は、基本的にどこの病院にも属さず、病院の場所を借りて医療行為をおこないます。

こうした医療行為の提供者や医薬品の製造業者にとって一方的に有利で、患者や利用者にとって一方的に不利なシステムが、莫大な金額のワイロによってがっちり固められています

その結果、アメリカ国民は世界一高い医療費を払いながら、先進諸国ではもっとも不健康で短命な生涯を送ることになってきたのです。

大分類では医療健康ロビーが突出

もちろん、医療ヘルスケア全体の企業や業界団体の献金額を全部集めれば、大分類として2位位以下を大きく引き離したトップに立ちます。


ご覧のとおり、ハイテク・バブル崩壊からの影響はまったく受けず、国際金融危機でもほんの少しへこんだだけで、順調に伸びつづけています。ちなみに大分類で2位に入ったのが、エネルギー・天然資源産業の3億1626万ドルですから、2位の2倍を超える金額を政治家たちにばら撒いているわけです。さらに、この大分類から病院・介護施設といったサービス施設と、医師会・看護師会・歯科医師会といった職能団体をのぞいた製造業関連だけの中分類に当たる製薬・健康用品産業だけでも、大分類第2位のエネルギー・天然資源産業より大きいのです。


この中分類には、日本で言えば衛星放送の深夜とか早朝のCMで次から次に放映される、効能の怪しげな健康用品の製造販売に当たっている企業群もふくまれています。アメリカは訴訟社会なので、あまりうさん臭い健康用品は大規模な損害賠償請求訴訟が怖くて売れないのではないかと思いがちですが、ちゃんとしかるべきところに献金をしておけば、責任逃れができる仕組みも確立されています。先ほどの研究開発主体の一流企業ばかりではなく、医薬部外品とか、特許の切れた他社が開発した薬品の成分をそっくりまねて造ったジェネリック(後発品)まで入れた製薬業産業全体の献金額は、以下のとおりでした。


すぐ上のグラフと比べて見ると、最近では製薬産業の献金は横ばいで、むしろ健康用品産業のほうが順調に伸びていることがわかります。社会全体が高齢化する中で、藁にもすがりたい気持ちで健康用品を買う人たちが増えているということでしょうか。あらためて生への執着を感じさせるデータです。もちろん、製薬産業よりは低めですが、病院・介護施設という中分類も安定した水準を維持しています。


また、大分類としては金融や不動産と一緒にくくられることになりますが、アメリカで中分類としての保険業界の中で注目しておくべきは、健康保険業界の力が強いことです。

オバマの国民皆保険化は戦わずして負けていた

生命保険、損害保険などをふくむ保険業界は、製薬産業とほぼ同じ規模のロビイングをしています。


しかし、その中でご注目いただきたいのは、生命保険や損害保険に比べて健康保険専業、あるいは健康保険を主業務とする企業による献金額の大きさです。


2期8年にわたったバラク・オバマ政権の公約の中で、私が唯一「これが達成できれば大統領として高く評価してもいいな」と思っていたのは、国民全員を対象とする健康保険制度の確立でした。ところが大統領就任直後から目玉政策として推進したにもかかわらず、8年かけてもほとんど進捗せず、トランプ政権下でほぼ全面撤回となりました。保険業界の献金額トップ3を健康保険を主業務とする企業や団体が占めているのを見ると、そもそも実現は不可能に近い公約だったとわかります。現状では契約者の懐具合に合わせてなるべく利益率の高い保険を提供できる企業にとって国民皆保険制度への移行は、基本契約は一律で上積み分だけが利益率のいい業務という大減益要因となるからです。こうした健康保険会社からの献金で、「国民皆保険にすると患者が医師を選ぶ自由さえなくなる」といったデマまで飛ばして、必死に現行の「自由契約」制度を守ってくれる政治家が大勢いるのですから、しょせん無理だったのです。

そして、なぜアメリカでは事業内容自体にはあまり規模の経済が働かないような業種でも、ほとんどあらゆる産業分野に1~3社突出した規模の大企業が現れることが多いのかもわかります。

事業内容には規模の経済は働かなくても、政治家を動かして自社に有利な法律制度をつくらせることにかけては、非常に大きな規模の経済が働くからです。

なかなかリーズナブルな価格できちんと必要な医療サービスが受けられるように保証してくれる健康保険が存在しないことから生まれたニッチ産業が、「医療友の会」だと言えるでしょう。

毎月定額の料金を支払っていれば、必要に応じて医療サービスが受けられる、言わば医療サブスクリプション事業です。

ただし、医療機関を選ぶことはできず、運営主体の指定したところに行かなければならないので、かなり当たり外れがあるようです。

また、ふつうの健康保険に比べてとくに治療を必要とする疾患なしで日常生活を送れる人にとってはかなり割高な制度にもなっています。

でも、とにかく命には替えられないということで、アスレチックジムなどのヘルスケア産業と「医療友の会」を一括した分野が、医療健康関連でいちばん順調に伸びています


こうして、人の命を守るという本来であれば崇高なはずの仕事が、「どこにどれだけカネをつかませれば、効率よく好収益の事業にできるか」という発想一色に染め上げられてしまったのが、現代アメリカの医療健康産業複合体だと言えるでしょう。

ロックダウンは、まず恐怖宣伝

ここまでアメリカ社会における医療健康ロビーの強さを見てきた上で、あらためてコロナ騒動勃発当初に欧米諸国の大都市圏で乱発されたロックダウンの意味を検討してみましょう。

まず、今にして思えば、あれは完全な恐怖宣伝でした。伝染性もあまり高くなく、生活習慣病を抱えた高齢者以外にとっては致死率が極めて低い感染症を、まるで見知らぬ人とすれ違っただけでも感染するかのような大げさな恐怖をあおり立てることに成功しました。

そして、アメリカ国立衛生研究所や世界保健機関(WHO)の内部では、このあまり被害の大きくない感染症をワクチンの開発製造に携わる業者にとって最大限の収益を確保させる機会とすることは、当初からの前提でした。

どちらも、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団や世界経済フォーラムにとって、研究開発型の製薬会社に大きな収益をあげさせるとともに、ワクチン接種証明を日常的に携行させることによって、全面監視社会を実現させるための道具になっているからです。

そして、アメリカ中の政治家にとって、たっぷりワイロをばら撒いてくれる大スポンサーですから、まさにこういうときこそ忠勤を励んで日頃の恩顧に報いなければなりません

どう考えても治験期間が短すぎて危険なワクチンを強引に実用に供するまでの間、なるべく恐怖を感じさせながら、ついでにコヴィッド-19感染者も増やしておこうという作戦です。

そして、世界中でなるべく多くの人たちにワクチン接種をさせるためにも、在来薬品がコヴィッド-19の予防や感染後の治療に効果があってはならなかったのです。

ましてや、イベルメクチンのように家畜の虫下しに使えるほど安くて大量に存在している薬が、すでに感染してしまった患者の重症化を防ぐために顕著な効能があるなどとは、もってのほかです。

たとえ、真実でもそんな新しいワクチンを完成させるための研究開発費がムダになるような話は「根も葉もないフェイクニュース」として、既存の大手メディアにも、新興のソーシャルメディアにも取り上げさせてはいけなかったわけです。

そして、家族の中にひとりでも自覚症状のない感染者がいれば、ふつうの日常生活を送るよりほぼ1日中自宅で家族と濃密接触をつづけているほうがコヴィッド-19を蔓延させる効果が大きいことも、医療当事者にはわかっていたはずです。

この推測が事実であることは、とくにワクチンが実用化されるまでの期間に厳格なロックダウンを実施した国ほど感染者、犠牲者の人数が多く、あまり厳格なロックダウンをしなかった国ほど感染者、犠牲者の人数が少ないことによって立証されていると思います。

表向きは部下の女性に対するセクシャルハラスメントを理由に辞任に追いこまれたアンドリュー・クオモ前ニューヨーク州知事の、ほんとうの罪状はセクハラではありませんでした。

非常に不潔で非衛生的なので免許を更新すべきではなかった高齢者介護施設の運営業者を、巨額献金をもらっているという理由で経営させ続けていたのですが、その施設にすでに感染が確認されていた高齢者を送りこんだまま、施設全体を封鎖してしまったのです。

はたして、その施設に収容されていた高齢者で発病した方々が全員亡くなるという悲惨な結果となりました。

「これはあまりにもひどい」ということで、クオモを辞任に追いこむ運動が盛り上がりました。

ただ、州知事、州上院議員レベルの政治家にとって介護施設からの献金は非常に実入りのよい「副業」なので、そのために適格ではない業者に運営を続けさせる程度のことはほとんどだれでもやっています。

だからこそ、同時にセクハラもひどかったクオモを辞任させるために、セクハラのほうを大義名分に選んだのです。

こうした実情をきちんと明らかにせず、コヴィッド-19という感染症自体の怖さにすり替えることで、人々をなんとかワクチンが実用化されるまで不自由を堪え忍んで待とうという心境に追いこんでいったわけです。

そして、強制的な需要移転

ロックダウンには、もうひとつ大きな目的がありました。身も蓋もない表現になりますが、あまりワイロを出してくれない業界からたっぷりワイロをばら撒いてくれる業界に、消費需要を移転させることです。

先進諸国ではどこでもそうですが、個人消費支出はどんどん製造業からサービス業へと移転しています。

ところが、寡占化の進んでいる製造業には巨額献金のできる大企業が多いのですが、あまり寡占化していないサービス業には、政治家たちにとって太っ腹にワイロをばら撒く大企業が少ないのです。

大都市圏ロックダウンの効果は覿面でした。それまで延々と下がっていた個人消費支出に占める製品の比重が上がり、ずっと堅調に伸びつづけていたサービスの比重が下がったのです。

現在でも、製品消費はコロナ前の傾向線を上回る水準で推移し、サービスはコロナ前からの傾向線より低い水準で推移しています。

ところで、インターネットを舞台に急速に成長しているソーシャルネットワーキングサービス(SNS大手各社は、いっせいに「コロナは大疫病であり、ロックダウンやマスク着用には効果があり、ワクチンの効能を疑うのは悪質なデマ宣伝だ」と唱えました

なぜだとお考えでしょうか。

見落とされがちですが、SNSはサービス業の中では例外的に寡占化の進んだ業界であり、しかもロックダウンで都市型サービスが壊滅状態になっても、むしろマイナスよりプラスのほうが大きな業態なのです。


ご覧のとおり、業界全体としては、まだロビイング支出総額が1億ドルに達していない、中堅規模の業界ということになります。ただ、非常に小さな業界だった頃から、企業規模に比べればかなり大きな金額をロビイングに投じていた企業が多いのです。ふつうに考えれば当然独占禁止法違反となるような商慣行が横行している業界で、政治家に鼻薬を嗅がせなければ議会で喚問を受け吊し上げられることも多かったからでしょう。また、個別企業で見るとすでに非常に巨額の献金をしている会社が続々登場しています。


この表で社名が赤になっているのは、アメリカを本拠とするSNSおよびeコマース(ネット通販)企業で、緑になっているのが中国を本拠とするSNSおよびeコマース企業です。この表で1~2位となっているメタとアマゾンは、個別企業だけではなく、中分類以下の全産業団体をふくめたランキングでも7位と9位という高い順位を占めています。こうした企業にとって、大都市圏のロックダウンは「現実に会うこと(オフ会)ができないので、せめてオンラインで連絡しあおう」ということで需要を拡大してくれます。とくに米中それぞれでeコマース首位企業となっているアマゾンとアリババにとっては、小売業界の中で実売店舗を営業している企業のシェアをさらに浸食する絶好のチャンスです。それに比べると、実売店舗側は、あまりにも無防備でした。


アメリカ経済に占める地位は一貫して高かったのに、20世紀末まで業界全体としての献金額が1200万ドルにさえ達していませんでした。最大の理由は業界の規模は大きくても、業界に関する法律や規則を自社に有利に変えさせようとするほど圧倒的に大きな企業1~3社による寡占化が進まなかったからでしょう。2000年代半ば頃から急激に伸び始めますが、これは業界内でウォルマートが突出した首位になったからなのか、遅まきながらeコマース企業の成長を脅威と感じ始めたからなのか、理由はわかりません。ただ、業界全体のロビイング支出が、2021年になってもメタとアマゾン2社の合計額より約1000万ドル高いだけですから、政治家の好意を呼びこむにはあまりにも少なすぎます。これはアメリカのように高度利権社会化した国では弱点ですが、政治家の好意をカネで買って自社と自社が属する産業を有利にすること自体が、どう考えてもまっとうな経済活動とは言えないでしょう。

社会全体がまともになればマーケットシェアが極端に大きく、価格決定力まで握ってしまう寡占企業の存在する業界より、数多くの企業がドングリの背比べで発展する業界のほうが健全なことは間違いありません。

その小売業界よりもっときびしい立場に置かれているのが、レストラン・バー業界です。

この業界の場合、日本のようになんとかロックダウンはまぬかれた国でも、緊急事態とか、蔓延防止とか称して、営業時間の制限、客1グループ当たりの人数や店内滞在時間の制限、アルコール飲料の提供禁止といった措置でいじめられつづけてきました

その第1の理由は、業界全体としてワイロに遣える金額の少なさです。


小売業界のそのまた5分の1しか政治家に献金していないのですから、いじめられるのも無理はないと思います。それに加えて、じつはこの業界に対すること細かな営業制限は、すべて業界内で大手による寡占化を促し、個店経営で頑張っている中小零細独立店舗を根絶やしにしようという政策的意図が働いているのです。


ご覧のように、最大の支出をしている全米レストラン協会と、第9位の独立レストラン連合以外は、みごとにファストフード店やファミリーレストランのチェーン展開をしている企業ばかりです。ファストフードやファミレスにとって、アルコール飲料の提供禁止や1グループの滞在時間制限は、まったくと言っていいほど苦痛になりません。何本も酒瓶を空けて長居がしたくなるような雰囲気の店は皆無といっても良く、食べ終えたらそそくさと帰るか、なんならドライブスルーで注文しておいた品を持ち帰るだけという客ばかりになったら、むしろ回転が速くなって大歓迎です。つまり、こうした制約にはなるべく業界全体を寡占化して、政治家にたくさんワイロをやれる企業を増やそうという業界内大手と政治家の暗黙の了解が存在していたのです。東京のいい雰囲気の居酒屋や大衆食堂がとうとう日常生活の復活を待ちきれずに潰れていったについては、欧米とはまた違った特別な悲哀があります

欧米では、業界全体の寡占化促進、そしてワイロの増加というそれなりに目的のある個店経営レストラン潰しとして、どんなに悪辣でも少なくとも意味のある行為でした。

そもそもコロナ自体の感染者数も犠牲者数も少なかった東京で延々とレストランいじめをしてきたのは、だれにとってもまったく意味のない大量殺戮と言っても過言ではありません。

欧米で流行っていることならなんでもマネしたがり、悪いことほど長くマネしつづける目立ちたがり屋がたまたま都知事をしていたという以外に、これだけ不幸な事態に至った理由がないからです。

在来メディアの言動は、恥も外聞もない延命策

ところで、SNS系メディアに日々シェアを奪われているテレビ、新聞、雑誌といった在来メディアも、まるで新興ネットメディアそっくりにゲイツ財団=世界経済フォーラム=WHO公認情報を横流しするだけなのは、いったいなぜでしょうか。

ふつうであれば、どんどん劣勢に立たされるだけの情勢を挽回するために、あえて新興メディアとは正反対の立場を取っても良さそうなものです。

でも現実には、日本で言えば夕刊フジや日刊ゲンダイに当たるタブロイド新聞くらいしか、そうした気骨を見せた媒体はありませんでした。

なぜかと言えば、一流紙とか全国ネットの大手放送網とか呼ばれている媒体ほど、経営悪化が急激で、今や業界全体としても大物政治家にははしたガネとさげすまれる程度の献金しかできないからです。


こちらが新聞・雑誌に出版業界までふくめた中分類でのロビイング支出額です。業界全体としてほんとうに少額のレストラン・バー業界とほぼ同水準です。ただ、あまり歓迎できない変化ながら、レストラン・バー業界のほうはチェーン経営の大企業が増えるにつれて伸びています。それに対して、新聞・雑誌・出版業界はハイテク・バブルがはじけた頃まではなんとか1500万ドル程度を拠出できていました直近のピークは2020年でしたが、2002年の3分の2にとどまっています。新聞業界の凋落は昔から続いていたことですが、テレビ業界、とくに地上波全国放送網や有料ケーブル配信各社の没落は急激でした。


こちらのピークは2014年でした。1970年代以降、ありとあらゆるメディアの王者として君臨していたこと、支出企業・団体数が35と小分類の中でも際だって少ない寡占化した業界であることを考えれば、ピークの3200万ドル自体、意外に少ない金額です。これだけ利権社会化が爛熟したアメリカでも、自分たちのようなオピニオンリーダーなら、かたちばかりの少額ワイロしか出さなくても、大きな影響力をふるいつづけることができると思っていたのでしょうか。新聞・テレビのロビイングは、他産業のようにもっと儲けるために法律規則を自分たちに有利に変えてくれという悪いなりに積極的な支出ではなく、本来であれば潰れてもおかしくない経営状態でもなんとか生き延びさせてくれという支出です。これまで延々とバカにしつづけてきた共和党保守派に今さら取り入っても相手にしてくれませんから、昔は自分たちが擁護者だと思い上がっていた民主党リベラル派を庇護者としてすがりついていくしか、生き延びる道はありません

だからこそ、民主党リベラル派の主張ならどんなに奇矯な言説でも喜んで請け売りしているのです。


編集部より:この記事は増田悦佐氏のブログ「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」2022年4月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」をご覧ください。