タワーマンションに住みたいと思わない理由

未来を予測する事は簡単ではありません。その中で、いずれ確実にやってくると予想できるのは、インフレと首都圏の直下地震です。

Juergen Sack/iStock

2つに共通するのは、起こることはわかっても、それがいつどのぐらいの規模で発生するかの予測が難しいことです。しかし、いずれ確実にやってくるのであれば、最悪の事態を想定し、どちらも早いうちに対策を講じておくべきです。

インフレに関しては、以前のブログにも、その対策について書いてみました。

もう一つの直下地震に関しては、日本経済新聞で首都直下地震が発生した際の、想定被害の記事が掲載されています(図表を元記事で読む)。

これを見ると、同じ東京23区でも地盤や建物の形状によって被害の内容が異なることがわかります。

荒川に近い江東区や足立区、墨田区などの地域では、液状化の危険も高く、木造の建物が多いこともあり、タイミングによっては地震による大きな直接的な人的被害が想定されます。

一方、都心部ではオフィスが集中していることにより、帰宅困難者の増加が課題です。前回の東日本大震災のように平日の日中に震災が発生すれば、帰宅時に多くの人が足止めされ、オフィス近くに宿泊せざるをえなくなります。

さらに、私が一番懸念するのは、震災によってエレベーターが停止することです。タワーマンションの高層階に住んでいる人たちは、甚大な被害を受けることになります。

水や食料の備蓄がなければ、自宅に待機することができません。また、エレベーターの運転再開までに時間がかかれば、自宅から脱出できたとしても、避難所生活をせざるを得ません。多くのエレベーターが一斉に停止しますから、復旧作業にも時間がかかりそうです。

エレベーターの停止だけではなく、高層階は大きな横揺れによって家財にも被害が出るデメリットがあります。

だから、都心のタワーマンションに住む事は、非常に大きな地震リスクを抱えていることがわかります。

私は、高所恐怖症もあって昔から高層マンションが苦手です。現在も高層ビルの低層の5階に住んでいます。

人気のタワーマンションですが、私は住みたいとは思いません。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年5月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。