大麻を取り巻く現状が大きく変わろうとしている
あなたは大麻に関してどんな印象を持っているでしょうか。一般的な日本人なら大麻は違法であり、持っていると逮捕の危険性があるもの、といった認識を持っているのではないかと思います。
おおむねその通りで、現在大麻はおおむね以下の理由からその所持が規制されています。
- 身近な違法薬物である:大麻は他の薬物に移行する前のゲートウェイドラッグとしての位置づけの高い薬物である。
- 有害な作用:幻覚作用や攻撃性増大作用などを引き起こす。
- 暴力団等の資金源:売買収益が暴力団や密売組織の資金源となる
一方で大麻というものは、国の実情に応じて各国間で大きく違う取り扱いがされる少し異質な性質を持っているといえます。
日本では違法である嗜好用大麻は、以前からオランダ等のいくつかの国では個人利用目的での少量所持・使用については、軽微な犯罪として刑事罰を科さないという政策がとられていましたが、新たに2018年からカナダで18歳以上の成人による大麻(マリファナ)の所持・使用の一部が合法化されました。
※大麻由来医薬品・外国の大麻規制の状況については厚労省 第1回「大麻等の薬物対策のあり方検討会」 資料HPを参照
窃盗や殺人を罰しない国はおそらくないでしょうから、大麻の位置づけの特殊性が皆様にも理解できるのではないかと思います。
これまでは嗜好用としてある国では規制され、ある国では使用可能だった大麻ですが、最近は新たな動きも出てきています。医療のイノベーションやビジネス環境の変化により、新しい活用方法が注目されているのです。
医薬品、アロマ…表舞台に出てきた大麻由来製品
いくつかの国では大麻由来の医薬品が流通するようになりました。2018年から大麻由来の医薬品(あくまで医薬品なので、大麻草の吸引とは意味が異なることには注意が必要です。)がてんかんに効くとして、アメリカでその使用が認められるようになりましたし、2019年にはEUの欧州委員会でもてんかんに効く医薬品として承認されています。
また、大麻由来でありつつ成分としては規制対象ではないCBD(成分の名前です)を含むCBD製品が日本でも流通が広まっています。CBDは、リラックスできる、睡眠の質が改善させるといった触れ込みがされ、国内の楽天やAmazon、大手ディスカウントストアでもグミ、吸引用のリキッド、オイルといった形で販売されています。
フォーブスの英文記事によると、いくつかの前提を置いた推計ですが、CBDの市場は年に40%弱成長し、2025年までに195億ドルにまで達するとされています。今後急激に国内でも普及する可能性がある分野です。
このように大麻は違法薬物、という位置づけだけでなく、人々の生活の質を改善する医薬品として、あるいは違法ではない嗜好品としての側面も強くなってきています。製薬企業やCBD製品を販売する業者など、大麻に関わるステークホルダーも増えてきていることから、時代に合わせた制度整備が必要になってきたのです。
大麻を取り巻く新たな制度設計の議論は2021年からスタートしています。今回の記事では大麻の制度改正議論の事例から、政策を変えていきたい皆さんが明日から使える役所資料の読み方や役所への働きかけのコツをお示しします。
(執筆:西川貴清 監修:千正康裕)
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編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2022年5月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。