共存と競争のはざま:日韓台の関係

ここバンクーバーで私は日韓台関係において孤軍奮闘状態にあります。ビジネス団体の長として今年のテーマは他国のコミュニティとの関係強化なのですが、この動きに我が日系は足並みは全くそろわず、動きもなく、興味もないようです。私が声高に申し上げているのは「見ずして語るべからず」であります。ところが語るどころか、そもそも興味すら持ってもらえないのですから論外と言えるのでしょう。

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先日、韓国系団体からソウルのそばのある市から10社を引き連れてビジネス派遣団が来るのでよかったらこないか、と誘われました。日本側から行ったのはもちろん、私だけです。会議室に通されて同席したのは台湾の貿易団体と台湾ビジネス団体の代表者。先方は韓国側の市の代表、現地の代表などであとは一部の出店者がプレゼンをしてくださいました。

どんなビジネスに重きを置くのかな、と思ったら化粧品、美容関係が主流でした。ご存知の方もいると思いますが、韓国の圧倒的強みの一つにコスメティック、つまり美容、化粧品があります。日本の女子が新大久保で最も欲しがるアイテムの一つでもあります。かつて、韓国は美容整形大国と言われましたが、それより日本の女子を刺激したのは韓国人女性が真っ白で艶々した美肌の人が多いため、韓国コスメはアゲアゲの状態なのです。売り込みは熱心で聞き手が台湾系団体だと気がつくと突然、流ちょうな中国語でものすごいセールストークに私は韓国人と顔を見合わせたぐらいです。

私が韓国団体と会ったのはこの2週間で2度目。台湾系団体ともよく会っています。一定頻度で会っており、いろいろ話もするのですが、先日、クルマと携帯の話に及んだときは日韓台で熱い自慢の出し合いでした。いま考えてみれば笑えるかもしれないのですが、負けたくないから一生懸命トランプのカードを出して、ほれ、この絵札でどうだ、とくれば向こうがエースを出してくるといった感じで、結論的には日本は推せるものが少ないことに改めて気がつきました。

自動車については今回のバイデン氏の訪韓の際にヒュンデ(現代自動車)がジョージアにEV専用工場を数千億円規模で立ち上げると発表しました。あるいはバイデン氏が到着早々訪れたのはテキサス州に2兆円を投じて半導体工場を作るサムスン電子でした。産業のコメである半導体は韓国と台湾にほぼほぼ握られてしまい、それがなければどんな製品も作れない状態です。ですが、日本はかつて腰が据わった投資が出来ず、経産省はツボを押さえられず、サラリーマン経営者は目先のリスク回避で半導体は日本のお家芸からするっと抜け出てしまいました。

電気自動車の話では台湾勢は「中国で話題になっている『バッテリー交換方式』は理にかなっている」と言い、私が「トヨタがサブスク方式を取ったのはバッテリーの減価が車両本体価格に及ばないためだ」とフォローしたところ、韓国勢は「じゃあ、車両本体とバッテリー、別売りがやっぱりベストのシナリオではないか」と。そうなのでしょう。

ところで、ヒュンデが5分の充電で200キロという発表をしました。ですが、こんものは実態に即していません。350kwの出力で充電すれば、という前提があるからです。そんなモンスター充電器、街のどこにでもあるわけがないのです。まずそれだけの設備導入にいくらかかるか、そしてそれに喜んで投資する人はいるのか、であります。これはヒュンデに限らず、ポルシェなど欧州勢もそうなのですが、高出力充電が前提でそうすれば否が応でも充電時間は早くなる、という宣伝文句ということになります。ただ、実態面は全く無視ということです。

私が日韓台の連合に興味があるのは台頭する中国に勝てないこと、特に政治家に訴えたりするにあたり当地には日系の政治家がいないため、どうしても韓国系や台湾系の政治家と繋がらざるを得ない点は一つあります。日本は政府の動きも含め、カナダ人のキーマンを押さえる戦略を取っていると思いますが、それはそれで進めてもらいながらもバックアップは必要だということです。

大使館や領事館関係者は人脈作りに励みますし、それが彼らの第一義の仕事でありますが、3年前後で人事異動するのです。変わったらつながりが続くかどうか、わからない、これが弱点なのです。それゆえにどこでもローカルの人で人的コネクションをしっかり作っている人がいてその人がうまくつないでいきます。民間アンバサダーとも言えますが、上述の韓国、台湾系の人たちはまさにこのアンバサダーなのです。役人ではなく、この人たちが前線をリードする、そしてその後ろには巨大な団体組織が控えているわけです。

日本は何かにつけて役所頼みです。しかし、それはとっくに古い考え方であり、役人は役人の得手不得手があり、不得手を誰かがフォローする体制を在外日本社会でも作らねばならないのです。基本は民間主導で動かないダメだ、ということです。日本は常に役所のことを気にしながらの展開でそれゆえに世界から大きな後れを取った一つの原因を作りました。民間にも役所にもリーダーシップがなく、お互いにお見合い状態では歩は進まないことを肝に銘じるべきでしょう。

私は日韓台の関係はライバルでもあり、共存するためのよきつながりだと思っています。この価値観を共有し、一定の緊張感の下、切磋琢磨し、一緒に走ってくれる日本人がほとんどいないことにどうしたものか、と本当に悩ましい日々であります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年5月29日の記事より転載させていただきました。