人類を疫病から守る砦:『世界最強の研究大学ジョンズ・ホプキンス』

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2人は「COVID-19ダッシュボード」の原型となるウェブサイトをわずか1日で作り上げた

サイトは立ち上げから数日間で、1日当たりのアクセス数が2億回を突破した

追跡サイトを学内の研究に留めておくことをせず、広く世界に公開したことで、各国の政府や保健機関がサイトを有効活用するようになった

疑問が一気に解消した。個人の好奇心や自発的な行動が組織を動かし、世界を救った一連の経緯にも驚愕した。3年目を迎えたコロナ禍であるが、当初から政府もメディアもジョンズ・ホプキンス大学名のサイトを引用して、世界的なパンデミックの動向を論じていた。しかし、その理由については誰も、なぜジョンズ・ホプキンス大学が引用元になっているのかを明確に答えることが出来なかった。

世界中を未曽有の危機に陥れたパンデミックに対して、突如として現れた救世主がジョンズ・ホプキンス大学に籍を置く准教授と中国人留学生2人によって生み出された情報提供サイト「COVID-19ダッシュボード」。

本書は、その経緯とコロナ禍を通じて生み出された誤情報、偽情報に対するジョンズ・ホプキンス大学による反論や対策について、米国駐在中にコロナ禍に直面した著者による渾身のレポートである。

実は、2018年の段階でジョンズ・ホプキンス大学としてパンデミックに警鐘を鳴らす報告書を世に送り出していた。保健衛生コミュニティで生かされなかったが、内容はコロナ禍にも応用できるものであった。

「人間は忘れる動物である」と著者は振り返るが、報告書が読まれることなく倉庫に眠ったままという事例は、どの分野においても枚挙にいとまがない。したがって、一時のパニックから脱しウィズ・コロナに世界が移行しようという今こそ、これまでの検証が必要だ。そして、今後いつ再発するとも分からない新たなパンデミックに対して、この2年半の教訓が確実に生かされるような世界的な仕組み作りが欠かせない。

私が仕えた佐藤正久議員は観光客減を心配する議員たちからたしなめられながらも、2020年1月の早い段階からコロナ禍を安全保障問題として捉えて厳しい入国制限を訴えていた。

「ザルどころか底の割れた鍋」と政府の水際対策を批判した際にも、毎日COVID-19ダッシュボードの更新データを手元に置いていた。佐藤議員のみならず世界中が頼りにした情報源は、個人の意欲と、それを柔軟に支える組織によって生み出された。日本にとっての敗戦は、ワクチンだけではない。