日本政府は米国及びNATOの「常設拡大核抑止国際会議」新設を提言せよ

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ロシア・プーチン大統領の「核恫喝」

ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ侵略において、米国およびNATO諸国に対して自国の強大な核戦力を誇示し、ロシアの戦争目的を妨害すれば核の先制使用を排除しない旨の「核恫喝(自国への服従を目的とする核による脅迫・威嚇行為全般)」を行った。

これに対して米国およびNATO諸国は、ロシアとの「全面核戦争」を恐れるあまり、全く有効な対抗手段を欠く状態である。ロシアの「核恫喝」に対する米国およびNATO諸国の脆弱性が露呈されたのである。

今後もこのような事態が続けば、今回のロシアによるウクライナ侵略のように、核保有国による非核保有国に対する侵略行為はやりたい放題となり、国連をはじめ誰にも止められなくなる。同じ核保有国である中国や北朝鮮を喜ばせるだけである。中国については核恫喝による「台湾統一」や、北朝鮮については核恫喝による「韓国統一」も一層現実味を帯びてくる。

「常設拡大核抑止国際会議」の新設

このような「核恫喝」を許さないためには、核保有国であるロシアをはじめ中国や北朝鮮等に対し、米国およびNATO諸国が、「核恫喝」が無効であり危険であることを認識させる必要がある。そのためには、「拡大核抑止(核の傘)」強化に特化した、米国およびNATO諸国の強力なネットワークを構築する必要がある。

筆者は、この強力なネットワークとして、米国およびNATO諸国が「拡大核抑止(核の傘)」を格段に強化するため、参加国との集団安全保障条約に基づき、常設の国際協力機関である「常設拡大核抑止国際会議」を新たに設置すべきことを提言する。

上記国際会議は、米国および英・仏などNATO諸国を主要メンバーとする。そして、上記国際会議での協議や合意形成等には、参加国の首脳・防衛担当閣僚・防衛軍最高幹部が出席する。さらに、NATO諸国以外の日本や韓国、ウクライナ、台湾など、核を保有しない国や地域も、集団安全保障条約に基づき、正式メンバーとして参加可能とする。そして、協議や合意形成等には首脳・防衛担当閣僚・防衛軍最高幹部が出席する。

「常設拡大核抑止国際会議」の運営

「常設拡大核抑止国際会議」の運営は、

(1)核を保有する米国および英・仏は、常時自らの「核抑止力」及び「拡大核抑止力(核の傘)」の一層の充実強化を図り、上記国際会議がこれを支援し担保する。

(2)米国および英・仏は、核を保有しないすべての参加メンバーの国および地域に対して確実に「拡大核抑止(核の傘)」を提供・保障し、上記国際会議がこれを支援し担保する。

(3)核を保有しない参加メンバーの国および地域は、米国および英・仏の自らの「核抑止力」及び「拡大核抑止力」の一層の充実強化等のために、GDP(国内総生産)に対応した一定額の財政的拠出金を上記国際会議に定期的に拠出する。

(4)米国および英・仏は、自らの「核抑止力」及び「拡大核抑止力」の一層の充実強化のための技術研究開発・戦略的提携・技術的提携・情報交換・意思疎通を強化し、上記国際会議がこれを支援し担保する。

(5)ロシア、中国、北朝鮮等が、参加メンバーの国および地域に対して「核恫喝」を行った場合は、核を保有する米国および英・仏は、「核恫喝」を撤回させるために共同して対処し、上記国際会議がこれを支援し担保する。

(6)万一、ロシア、中国、北朝鮮等が、参加メンバーの国および地域に対して先制核攻撃を加えた場合は、国連憲章第51条の集団的自衛権に基づき、米国および英・仏は共同してこれに対処し、核兵器による大量報復攻撃を集団的に行い、上記国際会議がこれを支援し担保する。

日本は「二重の核の傘」で盤石になる

上記の集団安全保障条約に基づく、米国およびNATO諸国の「常設拡大核抑止国際会議」への正式参加によって、核を保有しない日本や韓国、ウクライナ、台湾などは、「拡大核抑止(核の傘)」の恩恵を受ける。

日本は米国単独の「拡大核抑止(核の傘)」に加え、これと重層的にさらに米国および英・仏との集団安全保障条約に基づく「拡大核抑止(核の傘)」の恩恵を二重に受けるから、日本の「拡大核抑止(核の傘)」は盤石になる(二重の核の傘)。

このように、日本は「二重の核の傘」によって、必ずしも、「核共有」や「核保有」をしなくても、ロシア、中国、北朝鮮等に対して、現在よりも一層強固な「拡大核抑止(核の傘)」体制となる。米国に加えNATO諸国との「常設拡大核抑止国際会議」への正式参加を通じて、集団安全保障条約に基づく日本の「拡大核抑止(核の傘)」が飛躍的に強化されるからである。

なお、上記国際会議への日本をはじめとする多くの国の参加により、「核恫喝」の有効性が皆無になれば、将来、「核廃絶」への道が開かれる可能性もあり得るであろう。