2020年11月に、拙著「ブラック霞が関」を出版してから、1年半が経った。
もちろん、僕の本やメディアなどでの発信だけでなく、色々な人が霞が関の働き方改革の問題を取り上げてくれて、少しずつではあるが、改善が進んでいる。
2020年9月に国家公務員制度担当大臣になった河野太郎さんは、就任会見で霞が関のブラックな状況をなんとかホワイト化したいと述べて、これまでずっと変わらなかった常態化しているサービス残業を相当撲滅してきた。
株式会社ワークライフバランスの小室淑恵さんも、様々なアンケートで霞が関の働き方の実態をあぶりだしたり、提言なども行っている。
5月29日(日)、その二人と一緒にあるイベントに参加させていただいた。
その名も
“意外と変われる”霞が関大賞
イベント詳細はこちら(↓)
5/29(日)『意外と変われる霞が関大賞』ピッチイベント開催!河野太郎氏ほか豪華審査員陣も|プロジェクトK(新しい霞が関を創る若手の会)|note
省庁横断的な有志団体であるプロジェクトKが主催したイベントで、霞が関の中から変えようとしているよい取組について、各グループからピッチをしてもらって、表彰しようというものだ。
河野さん、小室さんとともに、審査員を務めさせていただいた。
また、オブザーバーとして、なんと人事院総裁の川本裕子さんも参加されていた。
当日は、8つのグループからバラエティに富んだピッチがなされた。
① 農林水産省の組織力フル発揮に向けて(農林水産省大臣官房秘書課)
② 意外と変われ「て」る!ボトムアップで切り拓く文部科学省改革(文部科学省職員有志)
③ 統計データ利活用センターにおける業務見直しのチャレンジ(統計データ利活用センター一同)
④ 当事者による中途採用市場での霞が関の魅力向上の提言(ソトナカプロジェクト)
⑤ 自らの想いを起点に政策立案を行う実践の入り口:第ゼロセクター(第ゼロセクター)
⑥ 霞が関に閉じない政策協働への挑戦(パブ☆スタ企画チーム(経済産業省3年目有志))
⑦ 変えたい!国土交通省におけるワークスタイル改革(働き方改革推進室及び国交省の各局)
⑧ 環境省の働き方改革~多様なアプローチで意外と変われる?~(環境省職員有志)
グランプリは②
河野太郎賞は②
小室淑恵賞は③
千正康裕賞は④
有志の取組ではなく、組織としてのオフィシャルな取組が3つ出てきた(①、③、⑦)ことは、とても嬉しかった。中途採用の多い農水省では、中途採用そのものの工夫や入省後のフォロー体制を構築している。こうした取組は、ぜひとも他省庁にも広げてほしい。
③については、霞が関ではなく、いわゆる現場の公務員の職場の改革であるが、現場の公務員が働きやすく、効率的に業務遂行できる環境づくりは、内部でトップがやる気になればできることも多いことがよくわかる。
また、大賞を取った②文部科学省職員有志の取組は、職員個人個人の業務改革や政策提案などの創意工夫を組織が取り込んで、実現するサイクルを作っている面白い取組だ。個人にとってもやりがいが向上するし、組織にとっても大きなプラスだ。文部科学省は、10年くらい前の新しい公共を標榜していた頃から職員の自由な創意工夫を活かそうという風土を感じていたが、今でもそういう雰囲気があるようだ。
④については、民間でキャリアを積んできて、中途採用という形で霞が関に入ってきた人たちのグループが、もっと中途採用で多様かつ有力な人材を確保し、霞が関の組織力を強化するために、当事者ならではの提言をしたものだ。離職が増えている霞が関のポストの穴埋めではなく、霞が関に求められる機能を果たすための人事戦略の中で、中の人材にない専門性やノウハウを持った職員を中途採用で確保することは、国民の期待にこたえる組織を作っていく上で、もはや必須のことだと感じている。ただ、採用のやり方も育成も、これまでの新卒一括採用のやり方でそのままやっているケースも多いのが実態だ。そうした現状を変えるべく、解像度の高い提言を打ち出している。
ソトナカプロジェクトのnoteにも、記事が出ているので読んでいただければ嬉しい。
「千正康裕賞」をいただきました!|ソトナカプロジェクト|note
⑤、⑥は、霞が関の有志が、民間とフラットな立場でつながり、自由な意見交換をできるプラットフォームを作っている取組だ。官僚の政策立案能力の基礎は情報収集能力と視野だ。無駄な仕事を減らして、外とつながる時間を確保することが、個々の職員のやりがいや政策立案能力向上にもつながるし、ひいては社会全体のためによいことと確信している。
⑧は、僕が有識者会議委員を務めている環境省の改革の取組だ。環境省が本腰を入れて、省内改革に取り組んだのは、小泉進次郎大臣の時代であるが、大臣が変わっても改革のサイクルを回し続けるために、有識者会議が立ち上がり、僕も関わっているのだけれど、職員がやらされているのではなく、創意工夫をしながら組織が後ろ盾となっているところがすばらしいと感じている。
今後も、霞が関が変わっている姿も、知られるようになってほしいし、良い取組がさらに広がっていくよう、僕も自分の立場で引き続き取り組んでいきたいと思う。
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編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2022年6月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。