透明化と出産一時金の増額では「無償化」は不可能
p>こんばんは、音喜多駿(日本維新の会 参議院議員 / 東京都選出)です。
21年の出生率1.3 出生数81万人で過去最少更新 下落幅縮まらず
https://mainichi.jp/articles/20220603/k00/00m/040/005000c
おりしも昨年の出生率・出生数が激減したニュースが流れた本日、予算委員会で少子化対策と「出産無償化」について岸田総理とガチンコの議論を行いました。
維新が今回の参院選重点公約として、「保険適用+出産育児バウチャーによる出産無償化」を掲げたことは、昨日のブログでも掲載したとおりです。
かつて総裁選で「出産無償化」を掲げたこともある岸田総理。やはり頭の中にあるのは「(出産メニューなど情報の)透明化+出産育児一時金の増額」とのことでした。
しかし、そのやり方には明らかに限界があります。
上記は委員会で使用した、出産育児一時金と出産費用の比較です。
2000年代初頭まで遡りますと、一時金は当初30万円でした。現在は42万円となっているのですが、それに比するかのように出産費用も上がり、かつては30万円代だった平均出産費用はもう50万円が見えるところまできています。
(すべての経年データがなかったので一部推測)
東京ではすでに約60万円です……。
日本でこの期間、物価上昇や賃上げが起こったかと言えば、ご承知のように起こっていません。
しかしいま現在、出産は保険適用外の自由診療であるゆえに、一時金が上がればそれに合わせて産科医療機関は価格設定を変更してしまいます。文字通りの「いたちごっこ」が生じるわけです。
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岸田総理は「出産メニューなどを透明化することで、選べるようにすることが重要」といった主張をされていましたが、これも無理筋な話。
出産医療においてはどれだけメニューを透明化しても、地方によってはそもそも選択肢がないところもあるし、事前に「ここで産もう」「金額はこれくらいで」と決めていたとしても、母体の状況によって計画通りに行くとは限りません。
切迫早産などで想定した医院や対応で出産できなくなってしまい、結局、一時金を大きく上回る費用が請求された…という話は枚挙にいとまがありません。
教育の無償化施策も同様ですが、ここで重要なのは「無償化をするのだ」という明確な意志の元、費用にキャップ(上限)をはっきりと設定する仕組みづくりです。
その点、出産医療を保険適用として標準治療を定めれば、全国一律で金額が決まります。残った3割分の負担は、出産育児などに使える「バウチャー・クーポン」を支給することで完全カバーできます。
これに対する古典的な反対論は
「妊娠出産は怪我や病気ではない」
というものですが、諸外国でも保険適用の事例はすでに複数あり、不妊治療にも保険適用がされるようになった今は我が国もここに踏み出す絶好のタイミングです。
他に病気や事故ではないものに対して保険適用するデメリットとして指摘されるのは
「逆インセンティブが働く(保険を多く使おうとする意志を促し、保険財政を逼迫させる)」
というものもあるものの、これは少子化対策としてはむしろ願ったりかなったりではないでしょうか。
仮に出産が保険適用された場合、医療保険からの給付は現在の分娩件数と出産費用を掛け合わせても2,820億円。妊産婦検診、産婦検診についてはそれぞれ860億円、15.3億円。
財源論としても実現可能性のある数字であり、あとはまさに政治判断です。
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最終的に総理からは「どちらが現実的か考えることは重要」との答弁もあり、建設的で良い議論ができました。
個人的な感触としては、総理は一時金増額ではこの問題が解決できないことはわかっている(わかった)と思いますし、政策論においては維新案の方が優れている・自信を持って打ち出せると確信した次第です。
教育無償化を原点とした将来世代への投資、そしてそのための先進的な制度設計こそ維新の真骨頂。
きたるべき参院選に向けた対立軸としてしっかりと訴えていくとともに、実現にむけて邁進をしてまいります。
それでは、また明日。
編集部より:この記事は、参議院議員、音喜多駿氏(東京選挙区、日本維新の会)のブログ2022年6月3日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。