NHK党の立花党首が『テレビの情報は危険である』『テレビは国民を洗脳する装置である』『テレビは核兵器にも勝る武器である』『テレビは真実を隠している』と主張して物議を醸し、テレ朝報道ステーションでの中途での発言制止、退場を促した事が問題視され、民事訴訟にまで発展している。
立花党首の目的の為に手段を択ばない行動には賛同できかねる部分も多分にあるが、各所での批判は、全体像を把握せずしての切り取り印象、誹謗中傷の域を出ない批判も多く、是々非々で判断する必要がある。
筆者が予てから提言している第4の権力としての強力な権力を有する『情報』に対しての問題提起として、少し丁寧に検証し、本質的な問題に対峙するべきであろう。
テレ朝退場事案の事前背景
まず前提として立花党首が疑われる原因を作っていたのは事実である。
それはある俳優の過去のアイドルへの淫行疑惑をテレビは報道せずに隠していて、自分が暴露して国民に知らしめる主旨の発言をしている。その俳優は連続ドラマの主人公としてドラマ放映される予定であり、スキャンダルを隠しているとの主張なのだ。
事実関係は分からない。だが通常ならスキャンダルとして報道されて然るべきと考えるのも妥当かもしれない。裏取りが出来てないという理由もあるだろうが、果たして過去のスキャンダル報道で同様の裏取りが前提であったかは疑問も残る。事の是非は事実関係が明らかになる事を待つ以外に無いだろう。
これらの背景に、立花党首の過去の破天荒とも呼べる行動もあって、テレビ局側が必要以上に何を発言されるか分からないと危機感を抱き、『警戒すべき』とのレッテル貼りが行われたと容易に想像できる。
かくして立花党首への事前の警告文発信につながったのだろう。内容的には番組の趣旨にそぐわない発言を控える様に言い、その様な発言があれば然るべき対応を取るという、ある意味脅しと取られても仕方がないものであった。実際、立花党首自身が恐怖を感じたと発言している。
番組編集権の範囲で発言内容を統制するという主旨であれば、全出演者に同様の発信をするべきであっただろうが、立花党首にのみ発信されたのは、明らかに個人に対する『警戒すべき』というレッテル貼りに基づくものだろう。
テレビ局による発言統制の流れ
この番組自体、参議院選挙を控え、国政政党としての要件を満たす9党の党首に限定して、国民に各党の政策、志向の相違点を伝えるものだったので、本来テレビ局側が発言に関わるのではなく、寧ろ選挙向けの綺麗事を言って誤魔化す発言者の本音を引き出す役割を果たす必要がある。それを番組側の趣旨に沿った発言以外は排除とするのは傲慢というより、そもそも趣旨に反する予定調和の誹りも免れないだろう。
立花党首と局との事前のやり取りも配信されている。
立花党首は「どの様な発言が趣旨に添わずダメなのか分からない」「発言の予定原稿を送るから事前に放送可能か確認して欲しい」と要望し、番組での発言のあらましとして「テレビの情報は危険だ」「テレビは国民を洗脳する装置だ」「テレビは真実を隠している」「テレビは核兵器にも勝る武器だ」とも伝えている。
それに対して局側は、原稿確認実施に関して即答を避けている。その場では、「政治家の発言を制限する趣旨ではない」「生番組で自由な討論を期待している」と説明し、数十分後に折り返して「テレビ局が政治家の発言をチェックするのは恐れ多い」と原稿確認を固辞している様だ。
どうだろう、番組側テーマの趣旨に添わない発言は禁止すると言い、どこまでが許容範囲かの確認要請には、チェックするのは恐れ多いと、明らかに矛盾ではないのだろうか。
果たして番組が始まって、立花党首の発言の場面で、前述の趣旨の発言が行われた。但し、注目すべきは俳優のスキャンダルに関しては一切発言していない。あくまでテレビの情報としての危険性を語っていた。ある意味、ウクライナ情勢が情報の武器としての利活用、プロパガンダの威力を世間に知らしめたのも事実であり、安全保障の問題として情報に関して語ることに何ら違和感はない。ましてやNHK党という政党の性格上、テレビ報道、電波利権等の是正を訴えるのは納得ができる方向性なのだ。
だが番組キャスターは発言を制止し、私の目からは不快感すら覚える上から目線の自分が正義だと言わんばかりの態度で1党首を切り捨てた。警戒はしていたのかもしれないが、立花党首はあくまで自党の安全保障に関わる提言だと信じての発言であり、スキャンダル的な事は一切発信していないのにだ。つまり、番組としては『情報』の安全保障上の問題性を全否定した事になる。ありえないだろう。
本事案は、立花党首により、局とキャスター個人に対して民事訴訟を起こすとの事である。
これらの事実関係を地上波メディアは報じない。それ自体が既に都合の悪い情報を隠ぺいする姿勢に当たるとも思える。本来、椿事件の反省が全くないと言われても仕方がない重大な事案である。それが故、第4の権力とも称せる『情報』を担う権限を有し、国民の財産である電波を低コストで独占する権益を持つ事を認識する謙虚な姿勢が必要であり、改善無ければ、権力の監視、牽制を本気で考えないと日本はダメになるだろう。