黒田日銀総裁の「円安ギャンブル」は成功するか:「バカでもできる為替介入」で日本経済は変わる

1ドルが一時136円を超え、円安が加速している。今年の初めには1ドル=116円だったので、半年で20円も円安になった。このような急速な円高になった最大の原因は、世界的な金利上昇の中で、日銀だけがYCC(イールドカーブ・コントロール)で長期金利を抑え込んでいることだ。

日銀の掲げた2%のインフレ目標はすでにほぼ達成しているが、黒田総裁は「物価上昇の大部分は資源価格の上昇によるものだから、量的緩和を続ける」という。誰もが「こんな無理な金利操作は長続きしない」と思っているが、黒田総裁はやめない。それは彼の本当の目的がインフレではないからだ。

黒田総裁の最大の誤算

2013年3月に黒田東彦氏が日銀総裁になり、「2年間でマネタリーベースを2倍にして2%の物価安定目標を実現する」と宣言した。その結果、1ドル=90円台から翌年には110円台まで大幅な円安になったが、インフレにはならなかった。2014年には消費者物価上昇率は一時的に3%を超えたものの、しばらくすると0%に戻ってしまった。

その1つの原因は、為替レートがストックの物価水準だからである。円が下がっているときは輸入物価が上がるが、1ドル=110円台で落ち着くと、フローの物価上昇にはならず、インフレは止まる。

しかし最大の原因は、国民がインフレ目標を知らないことだった。日銀のアンケート調査によれば、2%のインフレ目標を「知っている」と答えた人は、2018年でも29%。36.4%が「見聞きしたことはあるが、よく知らない」、33.6%が「見聞きしたことがない」と答えている。つまり国民の7割は2%目標を知らないのだ

外為市場でインフレ目標を知らないプロはいないので、ドル円レートは大きく反応したが、社会全体のインフレ予想は起こらなかった。これが黒田総裁の最大の誤算だったと思う。エリートが間違える原因は、一般大衆が自分と同じように頭がいいと思い込むことである。

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