今年もまた教員採用試験の時期がやってきました。近年教員志願者数の減少や、採用倍率の低下が叫ばれる中、いまだに多くの自治体・教育委員会では、志願者減少に歯止めはかかっていないようです。
それでも大都市圏は危機的な倍率にまでは至っていませんが、地方の教員不足は極めて深刻です。
小学教員倍率2年連続最低の佐賀県、採用試験年2回に「一人でも多くいい人材集めたい」
「志願倍率1.4倍」「年2回の採用試験」など、佐賀県では、まさに公教育の存続が危ぶまれるような危機的状況です。そんな中、危機感を持った全国の自治体・教育委員会は、教員志望者を増やそうと、様々な試みを行っています。
「職場体験を通して、素晴らしい先生に出会うことがモチベーションつながる」という考え方自体はよくわかるのですが、果たして本当に受験者は増えるのでしょうか?
学校によっては、超過勤務が常態化する中、日々忙しく悲壮感を漂わせながら働く教員を目の当たりにして、学生が採用試験に二の足を踏むような逆効果になりはしないか危惧されるのです。
また、「非正規雇用教員率の高まりが、教員不足に影響している」と指摘する記事もあります。
学校だよりで「教師の募集」、教員不足で過労の「ドミノ倒し」が起こる
確かに筆者の地元県でも、非常勤講師不足は常態化しつつあり、管理職は年度末を迎えるたびに講師の確保に苦慮していますが、実は人数不足の問題だけではないのです。非正規教員は原則1年ごとの契約ですから、クラス担任や部活顧問を担っていた常勤講師が、翌年度には別の学校に転勤してしまうようなケースは、当たり前に起こりうるのです。
子供たちや保護者が、せっかく良い先生に巡り合ったと思っても、翌年には転勤してしまうことの落胆・ショックは、想像以上に大きいかもしれません。
こうした多くの問題を抱える中で、教員志願者を増やし、教員不足を解消するためにはどうしたらよいのでしょうか?
筆者は、教育予算の継続的な増額、明確な線引きがされないまま拡大した教員の仕事(職務)の精査、勤務条件の改善(給特法の廃止など)が、必須条件と考えます。具体的な理由・提言内容については、筆者の過去の投稿記事を参考にしていただければ幸いです。
もはや日本の長期的人口減少が避けられない中、政府・自治体は、教員志願者数の減少という現象面だけを捉えて右往左往するのではなく、教員が仕事に生きがいや働きがいを感じ、子供や保護者のために、意欲的かつエネルギッシュに働けるような職場環境の構築に取り組むべきではないでしょうか?
そのためには、既成概念にとらわれず、現存の教育予算枠や教育法規を根本から造り直すくらいの大胆な発想や決断が求められます。部活動の地域への移行が話題になっていますが、小学校の教員はほとんど関係ありませんし、中高校の教員も部活指導だけが超過勤務の原因ではありません。部活指導を正式に職務から外すことでお茶を濁し、「給特法問題」を棚上げにすることなどあってはなりません。
「教育は百年の大計」と言われます。対処療法的に目先のつじつま合わせをするのではなく、日本の将来(2050年、2100年など)のあるべき姿をリアルに思い描き、実現のためには今からどんな教育を行ったらよいか? そのための教師の職務・役割は何か? を腰を据えて真剣に議論したうえで、具体的政策につなげていくべきだと思うのです。
子供たちは先生が生き生きと楽しそうに働く姿を見て、大人へのあこがれや尊敬を抱くはずです。子供の健全な心身の成長を後押しするためにも、教員の勤務条件や職場環境の改善、職務の精査は喫緊の課題ではないでしょうか。