大阪に引っ越して3か月なのに参議院議員選挙投票は東京で?!

東京の旧居住地から、参議院議員選挙の案内が届いた。そこには東京でしか投票できないことが記載されていた。新住所の選挙人名簿に載っていないのが理由だが、引っ越して3か月も経つのに、大阪で投票できないとはどういうことだ。

しかも、東京に出向くか、投票用紙を送る手続きをする必要がある。東京に行くとして、交通費は自己負担だし、投票用紙を送ってもらうのも書類が同封されていない。憲法にも保証されている参政権の否定に等しいようなルールだ。

いったい、マイナンバーカードは何のためにあるのだ。マイナンバーカードの居住地登録は4月初めに行ったが、選挙人名簿には手作業で入力されているというのか?住民票や印鑑証明は、マイナンバーカードを利用するとコンビニで入手可能なのに、国民の権利である投票権が、3か月経っても選挙人名簿に掲載されていないことを理由に行使できないのは納得しがたい。

4月1日付で移動した人は多いはずだが、選挙の公示日から3か月前までに住民登録をしていないと新住所で投票できないのは、行政の怠慢だ。

文句を言っていても血圧・血糖が上がるだけなので、話を変えよう、Natureの6月21日号News欄に「Many researchers say they’ll share data-but do not」が報告されていた。282のBMC系の雑誌に報告された1792論文(著者がデータセットを提供できると書かれていたもの)にデータ提供を求めたが、実際にデータが提供されたのは、わずか120件だったという。

データの提供には結構な手間がかかるので、このような研究は迷惑だと思うが、1670件は無視か、データ提供拒否だったのは、「データシェアリング」が掛け声だけに終わっていることを示す結果だ。

日本でもデータの共通基盤化が検討されているが、データの共有化プロセスに大きな壁がある。たとえば、どのレベルまで利用可能かを記載した、インフォームドコンセントが必要かである。インフォームドコンセントにはいつ、だれが、何をするかを記載する必要があるが、10年後、あるいは、数年後であっても、急速に進む技術革新を見通して利用目的を書き連ねることなど不可能だ。

今の知識の範囲でインフォームドコンセントを取得しても、いつ、だれが、どんな解析をするのか予言するのは非現実的だ。この20年間、われわれは驚異的な技術革新を目の当たりにしてきた。もっと科学リテラシーを高めて、研究推進のための仕組みを作ることが必要である。

しかし、政府を信用していない国ではワクチン接種率が低いとの報告がある。研究者は自分の論文と出世のことしか考えていないと、多くの人は冷たい視線で研究者を見ている。研究成果が還元されれば、治らない病気が治るようになるはずだし、新規産業の創出で国家経済にも寄与するはずだ。

いつまでも知的好奇心が重要だと叫んでいるだけでは、医学研究は進まない。医学研究の入口も出口も患者さんであることを自覚し、協力を求めない限り、この国は変わらず、昭和を生き続けるしかないのだ。

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編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2022年6月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。