総花的だったG7と西側先進国の疲弊感:「開催ありき」となりつつあるイベント意識

以前から引っかかっていたことがあります。それはロシアはなぜこのタイミングでウクライナを攻めたのか、です。2014年のクリミア侵攻から始まるウクライナ奪取の一幕と片づけてしまってはこの答えは出ないのかもしれません。

なんだかとても楽しそうなG7の首相たち 岸田手法HPより

誰もが驚愕した2月のあの侵攻劇は「まさかそこまではしないだろう」という大方の予想を覆すものでした。しかし諜報当局は事前に分析し、バイデン大統領を含むアメリカは侵攻の高いリスクがあるとウクライナにそれを伝えていました。しかしそれを真に受けなかった、いや、受けたとしてもどうにもならなかったというのがウクライナの立場だったのかもしれません。

ではなぜこのタイミングだったのでしょうか?私が思うのは西側世界における指導者の疲弊感を突いたとみています。2年に及ぶコロナで各国は内政に手一杯、外交もオンラインでは行ったものの緊密感は作り出せません。そしてそれ以上に強い指導力をもつリーダーが欠如したことが最大の隙であったと思います。

うるさ型とされるトランプ、メルケル、安部といった人が消え、バイデン、マクロン、ジョンソン、ドラギ各氏は国内政治問題を抱え、ショルツ、岸田各氏は新顔、古株ながらも存在感のないトルドー氏が地球を語るには迫力不足であります。プーチン氏は「このメンバーでは踏み込めない」と見たのだと思います。プーチン氏にとって各種経済制裁は当然ながら事前に予想していた範囲でそうなっても耐えうる仕組みや準備は長年してきていたことでしょう。それゆえに西側諸国が課す経済制裁が結局、西側諸国自身を物価高や食糧不足といった形で苦しめる状況になっています。

小粒化した西側諸国リーダーが今回のG7サミットを開催したのはドイツの南端、エルマウという標高1000メートルぐらいのアルプスを背景にする美しいリゾート。しかし、G7サミットがその背後に見えるアルプスの頂上を本当に目指したのか、といえば総花的な会議の内容で具体案に欠けた共同声明だった気がします。マスコミの現地特派員にはアルプスの山々がより一層高く感じられたかもしれません。

発表された内容のうち、ロシア関係ではロシア産原油の価格制限、中国にロシアへの口添え依頼といった点に留まっています。「G7はウクライナが必要とする限りの支援もする」(日経)という表現に至っては受動的支援ととられても仕方ないでしょう。西側諸国のウクライナ支援疲れが話題になり、肯定派、否定派の議論になっていますが、私は支援疲れは当然にしてあると思っています。

特に今回は先の大戦と違い、当事国のウクライナは西側諸国にとって「敵(ロシア)の敵(ウクライナ)は味方」という立ち位置です。今回の侵略まではどの国も安全保障を含め、外交的に同国とそこまで親しかったわけでもありません。あくまでもロシアの非道という道義的問題でありますが、彼らの悪さは昨日今日に始まったわけでもないことも世界はまた、分かっているのです。

当然、これに付随して食糧問題と中国に絡む首脳宣言が出ていますが、ほぼ全てが防御的内容で西側のリーダーシップを示すような新たな展望や戦略は宣言の中にほとんどありません。唯一、途上国インフラ整備に82兆円という内容はG7らしい決議だったと思います。

ところでなぜ、このインフラ整備が必要なのでしょうか?日経に「そして3極に割れた世界」という秋田浩之コメンテーターの記事があります。これはなかなかよい内容です。世界は西側諸国陣営、中国、ロシア陣営、及びその中間のどちらにも所属しない中立陣営に分かれているという訳です。そして人口で見れば中立派、ロシア寄り、及びロシア支持派で世界人口の2/3を占めるとされます。

事実、中国はアフリカを中心にインフラ整備などで強い影響力を及ぼしています。ロシアもインドをはじめ、世界中で武器輸出や資源輸出を通じて個別国家ベースでの絆を作っています。記事の一番最後に「戦略上、各国が何を必要としているのかを個別に見定め、互いの利益にかなう協力を重ねるしかない」とあります。つまり各国が個別交渉を進めるしかないという意見です。

これが正しいとすればエリートクラブとも取れるG7という絆からG7を核とした各国の泥臭い味方獲得作戦に転じる政策的転換が必要だともいえます。日本もG7の一翼ということではなく、日本の国益として何が必要なのか戦略を進め、それをG7で共有するという形に転じる必要があるともいえるでしょう。インフラ整備はその点でG7各国の共通戦略指針として味方獲得をすすめるネタともいえないでしょうか?

今回のサミットは「開催ありき」となりつつあるイベント意識をどう変貌させるか、大きな課題を残したと思います。

では今日はこのぐらいで。

岸田首相Fbより


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年6月29日の記事より転載させていただきました。