KDDI大規模通信障害の教訓:日本の設計制度上の疲労や捻じれが顕在化

KDDIの大規模通信障害は回復までの時間、影響を受けた機器の数とも最悪の記録となりそうです。同社のサービスを使っている方のみならず、他社でも同じことは起きる可能性はあり、通信機能だけ見てもそのインフラへの偏重は想像以上である、と言わざるを得ません。特にKDDIではIoT向けサービスが大きく伸長していたこともあり、かつての大規模通信障害が個人のスマホや携帯への繋がりにくさという問題から産業全体への影響という点で憂慮すべき事態となりました。

KDDI株式会社 本社ビル

仮に20年代後半に自動運転のクルマなどが世の中に普及した場合に「繋がるクルマ」が繋がらなくなった時の影響は甚大でしょう。とすれば我々は2つのことを考えなくてはいけないと思います。

一つはインフラとしての絶対的信頼がおけるシステム作り。もう一つは顧客側から見てそのインフラが機能しなくなった時のバックアッププランの確立です。つまり、世の中には絶対確実ということがないという前提で自分の身は自分で守ることを考えるわけです。

例えば銀行のATMのシステム障害が頻繁に起きた昨年、顧客からは散々のクレームの声がありましたが、2つの銀行口座を持っていればバックアップできたかもしれません。昔の人は銀行とのお付き合いがあったのですが、最近では多くの方が案外、銀行口座は一つかもしれません。これを2つにする、というのはいざというときの対応になります。

以前、東京の高級店で食事をし、お会計の際にクレジットカード払いをしようとしたところ、海外発行のVISAカードだったこともあり、セキュリティ上、使用停止になってしまいました。「お客様、申し訳ありませんが…」と言われた時は一瞬青く、というより格好悪さが先に来たのですが、予備でMCカードを持っていたので難を逃れたことがあります。

私は以前、パソコンをハックされたことがあります。結局、パソコンそのものをデフォルト状態に戻して難を逃れたのですが、データの保存について非常に考えさせられるものがありました。詳細はセキュリティ上、申し上げられませんが、いくつかの対策を施し、また、いつ、何が起きても大丈夫なような工夫をしました。パソコン本体にはほとんど記録を保持していませんが、全然使わないのではなく、うまく使い分けるようにしています。

スマホについてはそもそも私はあまり使わない人です。1日に4-5回、テキストをチェックするぐらいであとはほったらかし。どうしても連絡を取りたければ電話をかけてくればよいわけでそれで困ったことはほとんどありません。つまり、文明の利器でありますが、それに自分の依存度のウエイトを100%かけるようなことはしないということです。

例えば今の方は誰かに電話するにしても電話番号を記憶している方はほとんどいないでしょう。自宅や実家など重要な番号すらわからない人が主流だと思います。これでは公衆電話があったとしても「はて、何番にかければよいのか」になってしまいます。(番号ぐらいなら通信障害でもスマホにストアされているのでわかりますが、電源がなくなったらアウトです。つまりワーストケースシナリオの対策とは結局、自分流のバックアップということになります。)

電気の危機はひとまず去ったようですが、ブラックアウトのリスクも常日頃から備える必要があります。電気がないと電子レンジは使えないし、店の決済システムも使えません。となればモノを購入できません。では自営となっても、食べるものがあるのか、という備えは考えなくてはいけません。

先日、居住しているコンドミニアムで水道工事をやるから日中は水が出ないと通達が来ました。「どうせ、1-2時間の話だろう」と高をくくっていたら本当に1日中出ず、トイレも一度しか流せない、手も洗えない、料理ももちろんできないという事態になりました。その時、助かったのが電気ポットのお湯。これでインスタントラーメンが作れたのです。なるほど、電気ポットごときがバックアップになるのだ、と改めてそのありがたみを感じたわけです。

インフラは絶対安全安心でなくては困ります。今回のKDDIの一件について担当行政庁は厳しいお灸を据えるのでしょう。ただ、お灸というよりシステムが以上に膨張している現代社会に日本の設計制度上の備えがあるのか、という点について行政そのものが反省すべき点もあると思うのです。KDDIは私企業として伸ばせる分野を果てしなく営業活動していきますが、当然、どこかで疲労や捻じれが起きます。

今回はメンテナンス中の事故でしたが、メンテそのものが引き起こすトラブルとはそれだけ設計制度上、無理かかかっているとも言えないでしょうか?確か銀行のATMトラブルもメンテ作業で起きた事故でした。とすれば許認可業務をする行政のスタンスが当然問われるわけで、一企業への加重な負担をどうリスク分散すべきか、これが真の課題ではないでしょうか?

ウクライナではこれだけロシアに攻められてもインフラは頑強だとされます。特に電気は切れず、通信も繋がっています。通信の場合。ローミングでA社がダメならB社に切り替えるという仕組みをアメリカの協力も得ながら数々の失敗の中で作り上げたからとされます。日本でこのようなドラスティックな発想転換ができるのか、考えるべき点は多いと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年7月4日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。