「底辺の職業ランキング」って何がどうヤバいの?と思ったときに読む話

先日、新卒向けの就活情報サイト「就活の教科書」内のとある記事が炎上しました。

「世の中にある仕事を勝手に底辺とかなんとかレッテル張るのはいかがなものか。っていうか自分はそんなに偉いのか」という批判は既に多くの人がしている通りなのでここでは繰り返しません。

【参考リンク】就活情報サイト「底辺の職業ランキング」に批判殺到

就活情報サイト「底辺の職業ランキング」に批判殺到 12の職を羅列...運営会社は削除し「事実関係を確認する」
新卒向け就職情報サイト「就活の教科書」が公開した「【底辺職とは?】底辺の仕事ランキング一覧」などと題した記事に対し、2022年6月下旬から「職業差別を助長する」といった批判がツイッター上で相次いでいる。運営会社は指摘を受け、28日までに記事を削除した。「底辺の仕事ランキング」の内容記事は2021年5月までに公開された。...

むしろ筆者としては、記事の中身のズレっぷりが気になりましたね。結論から言うと少なくとも10年くらいはセンスが古いんですよ。

何がどうズレているのか。キャリアというものを見直すいいきっかけになると思わるので論点をまとめておきましょう。

kazuma seki/iStock

今一番ヤバいのはホワイトカラーの中にいるこういう人

筆者は仕事柄、中途採用をやっている人事担当者や経営者、人材紹介会社の転職コンサルタント等と話しますが、そういう時に「いくら転職市場拡大中といっても、こういう人はヤバいよね」という話題によくなります。

で、それはどういう人かというとだいたいこんな感じでほぼ一致しますね。

・新卒で入社以来、一度も転職したことのない40代以上
・キャリアとは会社から与えられるものだと考えていて、当然自分では何もしていない
・ずっと会社から言われた仕事に従事、結果、一般的な事務職としてのキャリアしかない
・これといって売りになる職歴やスキルはない
・ビジネスでもプライベートでも同じ会社の人間以外と接点がまったくない

上記ポイントのうち2つ当てはまるという人は黄信号、3つ以上当てはまる人は赤信号でしょう。

他人様の仕事を勝手にランキング付けしてキャッキャしてる場合じゃないと思いますね。自分の心配したほうがいいです。

なぜ自分の心配をするべきか。それはこれから先どう転んでも、どんどん居場所が無くなることが確定だからです。

<会社がジョブ化に舵を切った場合>

日本企業がジョブ化に続々と舵を切っている理由は色々ありますが、やはり「年功給の上に胡坐をかいて自分からは動こうとしない漬物石みたいな中高年をなんとかしたい」という熱い思いは各社共通です。

そう、それはまさに上記のような方々なわけです。

黒字リストラで追い出すか、年功給をはぎ取って若手と横並び再スタートさせるかは会社によりますけど、少なくとも従来と同じ居場所はもうないと考えるべきです。

<早期退職して転職市場に打って出た場合>

では転職市場に打って出たらどうなるか。当たり前ですけど、上記のような方々にはなかなか採用ニーズというのはありません。

というのも、そもそも上記のような人たちは「会社が会社都合で育成してきたメンバーシップ型雇用に特化した人材」です。

でも企業の中途採用というのはほぼ例外なしにジョブ型に基づいて行われているため、マッチングしようがないわけです。

これ、意外と勘違いしている人が多いんですけど、ごりごりのメンバーシップ型企業だって中途採用では「今、組織にとって必要なスキルがあるかどうか」つまりジョブ型で判断します。

「メンバーシップ型でウン十年歯をくいしばって滅私奉公してこれたか」とか「ジョブローテ続けた結果これといって専門性は無いけど会社の幅広い部門の管理職に顔が利く点」とかで評価なんてしませんから。

「メンバーシップ型の人材育成したんだから中途もメンバーシップ型で採るのが筋だろう」と憤る小学生もいるでしょうが、社会とは常にそういうものなので諦めましょう。

でも、転職市場には上記のような方々でもウェルカムしてくれる求人もあるにはあります。たいていこんな感じのキャッチコピーがついてるところです。

「未経験者歓迎、50代以上の活躍する職場です」

でも、そういう求人には同じようなタイプが集中するため、処遇はどんどん切り下がってブラック度だけが上昇することになります。

<大丈夫!うちの会社はジョブ化とは無縁です!>

ことここにいたっても年功序列でやっていこうと考えている会社は別の次元でヤバいです。10年後は存在してないと思います。

まとめると、現業系の仕事を下に見るのは10年以上古い考え方で、今本当に危ないのはメンバーシップ型で働いてきたホワイトカラー職の中にいるということです。

大卒者が大卒学歴を隠す“逆学籍詐称”問題なんて10年以上前から問題になってますからね。

【参考リンク】大阪市職員「逆」学歴詐称 「免職」でなく1ヶ月停職の理由

大阪市職員「逆」学歴詐称 「免職」でなく1ヶ月停職の理由
自治体職員が採用された時の学歴詐称が問題になるなか、大阪市でも大量の学歴詐称が明らかになった。一説によると、自分の学歴を低く申告した数は400人以上。だが、それに対する処分は「停職1ヶ月」。これまで他の自治体で下されてきた処分は「免職」だったはず。この違いは、どのようにして出来たのだろうか。大阪市では400人以上が「自...

以降、
実は言うほど悪くない“底辺の職業”
今起きているのは「メンバーシップ秩序の崩壊」

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Q: 「NTTのテレワークロボットってどう思いますか?」
→A:「一か月くらいで使わなくなると思いますよ」

Q: 「リモートワークの有無を転職の理由として挙げるのはアリですか?」
→A:「転職活動では言いたいことはどんどん言っちゃってかまわないです」

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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2022年7月7日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください