参議院選挙 私見:黄金の3年になるかは岸田首相しだい

結果だけ見ればほぼ予想通りで、識者や経済界のコメントも1週間前から準備できたような内容でした。誰も波乱を予想せず、結果をみても波乱は起きませんでした。終盤、悲しい事件が起きましたが、選挙結果だけ見ればほぼ何も影響しなかったとも言えます。

岸田首相Fbより SeanPavonePhoto/iStock

維新とれいわ、N党を除き、野党はほぼ総崩れなのですが、別の見方をすれば野党間で票の奪い合いが起きたともいえるかもしれません。高齢者や女性には自民党が好きか嫌いか、という入り口時点で判断をする方も多く、その入り口から先の議論を拒否し、バシッと閉めてしまうので議論が深まらず、選挙の面白みが少ないという点は否めないでしょう。

その中で「支持政党なし」の人たちが比較的新しい維新やれいわ、N党に流れ、今回、諸派の参政党からも一名当選が決まりました。ということは「支持政党なし」の方々は何か新しい風を求めていると分析できそうです。

支持政党がある方の場合、与党にしろ野党にしろ支持する理由にしみついたイメージがあり、選挙で「頼まれたから」「前からずっとこの党だし」「知っている議員がいるから」といった一種の「ご縁」の流れも強いとみています。とすればマニュフェストを見ようが見まいが関係なしの人気投票だとも言えます。

日本の政治が三流と称される理由は結局、国民と政治の距離感が遠く、論理的には国民の声が届くような仕組みになっているのに、実質的にはその議員に託しても「議員社会の政治圧力」で議員すらどうにもならない政党政治の弱点があるからでしょう。それを敢えて改善しようという機運が政治家からも国民からも聞こえてこないところが残念であります。

さて、今回の選挙後に党首が変わる可能性ある政党として維新、共産、公明が上がっています。維新は既に松井氏が下りることを明言しているので確定です。立民の泉氏は厳しい敗北となれば辞任もありえたと思いますが、極端な敗北になっていないため、党役員の刷新程度で留まるかもしれません。いずれにせよ、野党は乱立状態で特徴を持たせることが困難になってきつつあり、また安倍氏無き自民党と対立軸を生み出しにくいという弱点も生まれてきます。こうなればより中道右派に振れやすくなり、野党の左派勢力は劣性に立たされる公算は高いと思います。

では自民党です。選挙後に内閣改造がありますが、その人事を含めて岸田氏への強い協力体制を作り上げられるかが鍵だとみています。個人的にはこちらも群雄割拠する可能性はあり得るとみています。自民の大物と称される麻生、二階、甘利氏などがもう第一線から退きつつある年齢であり、誰が政界のグリップを利かせることができるのか疑問でなのです。

生まれ育った時代背景が政治家の言動にも影響するのですが、昭和の空気をそのままずっと引っ張ってきた人たちが着実に減り、平成時代のソフトタッチで優しいタイプの議員が増えていることは時代の流れともいえそうです。そうなれば剛腕型の議員が議員政治の中で潰され、世渡りの上手なタイプが生き残るといった「技巧型センセイ方」による柔軟化が果たして日本が置かれている内外情勢の厳しい環境を泳ぎ切るだけの手腕発揮となるのか心配ではあります。

個人的には高市氏の人事が最大の注目になると思います。つい先日までは高市氏は党三役から降ろされるという噂があった中、今回の事件を受けて高市氏を重用する優しさを岸田氏が見せるような気がします。これが政党政治の人事。個人的には高市氏の手腕だけ見ればどうなのかな、という気もします。この辺りは「永田町の常識は一般人の非常識」ともいえるところなのでしょう。

最後、余談ですが、日銀の黒田氏が困るかもしれません。リフレ派の後ろ支えは安倍氏あってのことでした。この流れが変わるとすれば日本の金融政策も方向転換を目指す公算はあり、今までテレビに良く出演していたお馴染みもコメンテーターの顔ぶれも変わるかもしれません。

個人的には今回の参議院選挙は単なるスケジュール消化に近い選挙でしたが、安倍氏の逝去に伴う力学の変化の方がより大きな影響力を与えるとみています。岸田氏にとって黄金の3年ともいわれますが、いつまでも検討使では金色の輝きを生かすことが出来なくなるでしょう。岸田氏が数歩、踏み出して人が変わったような旗振りができるか、そして憲法改正や原発を含む電源問題に解決の道筋をつければ岸田氏が将来、大首相の評価を得る可能性も出てきます。全ては彼次第でしょう。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年7月11日の記事より転載させていただきました。