パリ国立オペラ座バレエ「ジゼル」(2回目)

パリ国立オペラ座バレエ、”ジゼル”。今日が、私のシーズン最後の公演。

カトーズ・ジュイエのパレードの影響でバスが動かず、メトロでガルニエへ。

ホームは、観光客で大賑わい。バスケットやサンダルがひしめく中、シュッとエレガントな靴が目に入る。惹かれて視線を上に上げていくと、これまたシュッとした細身の脚、ピンと伸びた背筋。さらに視線をあげると、チャーミングな顔。おー、アレッシオ!

アレッシオ・カルボネは、数年前にオペラ座バレエを引退した、大大大好きダンサーたちの1人。(24年間オペラ座バレエ見てきて、大大大好きな男性ダンサーは、カデールを別格として、ヤン、エルヴェ、ジョジュア、マチアス、そしてアレッシオ)。どおりで靴から素敵なはずだ。もちろん彼は、(フランス人ではなく)イタリア人。

久しぶり~!で、おしゃべり弾み、楽しいメトロ車中。彼は”真夏の夜の夢”を見にいくそうで、オペラ駅でチャオ。

今日の”ジゼル”は、お待ちかね&待望のミリアムとジェルマン♪

この2人、以前は組むこと少なかったけれど、2年くらい前のガラでの”ロメオとジュリエット”バルコニーが素晴らしく、今回のこの配役が決まった時から、すっごく楽しみにしてた。

ワクワクしながらガルニエの階段登る。

今日も暑くて快晴のパリ。フォアイエも昼下がりの自然光を受けてキラッキラ。

席について指揮者の譜面をちらっと見ると、ん、ジゼルのじゃない。今日はカトーズ・ジュイエ。指揮者が登場して腕を下ろすと、”タララララララララ~、タ、タ、タ”というジゼルの出だしでなく、”タタッタ、ターターターターターータラ~”と、”ラ・マルセイエーズ”の調べが、立ち上がった奏者たちの楽器から流れる。観客もすぐに総立ちになり、”オザーム・シトワイヤーン!”と合唱。

フランス万歳♪

さて、”ジゼル”。予想通り、極上の2人。

ミリアムは、演技も表情も完璧。というか完全に好み。一つ一つの線(特に首筋)、動き、仕草があまりにも美しすぎて、目も胸も痛いくらい。

円熟が生み出す素敵な一幕ののちの二幕は、ただただ崇高、、。徹頭徹尾、素晴らしい表情で、オペラグラスを離せない。”ジゼル”二幕は、表情演技ができないダンサーがやるととんでもないことになるよね。。

昔からオペラ座で最高と思っている、頭の先からつま先まで美に包まれたアラベスクや、セ=ウンに負けず劣らずの見事な高速バックもため息もの。(この技術、”ラ・バヤデール”でも出てくるけど、数ヶ月前のミリアムinニキアは、ここ、今ひとつだった。パートナーによって気分の上げ下げあるよね(笑))

一幕の2つ目ヴァリエーションだけは、あまり前進できず、投げキス(=手を動かさなくちゃいけないのでバランス取るの大変なのだと思う)もしなかったけど、そんなのどうでもいいくらい、かわいい♪

前回の上演時は産休で踊ってないので、久しぶりのミリアムinジゼル。そしてこれが、彼女の最後のジゼル。2年後に迫った引退を考えるだけで、あまりに素晴らしいジゼルに目がうるうるしてるのに、もっと泣きたくなっちゃう。これからの2年間、ミリアムを見逃すことがありませんように。(パートナー、ちゃんとした人を選んでくれますように。マチアスが早く復帰してミリアムの横に立ってくれますように。)

極上ミリアムの横で、ジェルマンも期待を超えてきた。

登場した瞬間、思わず、”うわっきれい、、、”とマスクの中でつぶやいたら、後ろで同じタイミングで”ケスキレボー!(なんてかっこいいの!)”、”イレトレボー、ノン?(彼、素敵じゃない?)”と数人がつぶやいてる(笑)。ほんっとに美しいよね。ここ1~2年で美しさに磨きがかかった気がする。好みの顔ではないけれど、客観的に見ても本当にきれいだし、脚の美しさは誰もが認める今のオペラ座No.1でしょう。惚れ惚れ。

2年前の初役の時もなかなかよかったけど、今回はさらに奥行きが出てる。アントルシャ・シスは30回でまあまあだけど、墓にすがる時の脚を見るのは文字通り眼福だし、マントの落とし方もなかなか、ジゼルが地下に降りるシーンも悪くない。ラストは、横に少し戻ってからゆっくり観客側に近づくやり方で、最後にきれいなお顔を見せてくれるリップサービスならぬフェイスサービス。

そしてなにより、ミリアムとのパートナーシップがとてもいい。2人揃って音を消した跳躍も素敵。どの作品もそうだけど、”ジゼル”はとりわけ、交わし合う視線や雰囲気の共鳴感など、2人の関係性がとても大切だと思う。

脇は揃って普通。期待しないことを覚えたので、辛くもないかな・・。

あ、パ・ド・ドゥのブリュエンヌはなかなかお上手。この間”ラ・バヤデール”でガムザッティに抜擢された時も、技術力高かったね。顔がきつめというかこわばった笑顔なので、それが柔らかくなるといいな。将来楽しみなスジェちゃんの1人。2人のウィリーも、前回がコンテンポラリー得意な2人だったので、比べると今回の方が柔らかくていい感じ。

知り合いと、”ミリアムさいっこー!ジェルマン成長著しいねー!脚見てるだけでも満足ねー!”と、素晴らしいカップルを見られた幸せを喜び合う。

2021-2022シーズンは、前半は今ひとつだったけれど、春になってからいい舞台が続き、今日の”ジゼル”だけでも全てを許せそう。終わりよければすべてよし。シェークスピアは正しいね。

(7月4日のセ=ウン&ポールの”ジゼル”の様子はこちらからどうぞ)


編集部より:この記事は加納雪乃さんのブログ「パリのおいしい日々4」2022年7月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「パリのおいしい日々4」をご覧ください。