薬剤師における免許制度が話題になっているが、免許制度はその職業への参入を制限するものだから、既に当該職業に就いている者の利益を守っている。したがってその職業集団が徒党を組んで、免許制度を維持したいと主張するのは、当然と言える。
しかし、どのような職であれ、業務独占は、公正な競争を阻害し、技術革新を妨げる。感染症に対応する医療サービスについては、外部効果があるため、能力のある者に限って従事すべきという論理は理解できるが、それでもやはり、適正な競争環境の中で、常に効率化を検討し、進歩を続けることは重要である。
さて、医療費の削減に関連して、今年4月から始まったリフィル処方箋の制度について述べたい。リフィル処方箋とは、症状が安定している慢性疾患患者について、医師の処方により、一定期間内反復利用が可能となる処方箋である。開始してから3ヶ月余り経ったところだが、そもそも制度が知られていないのか、あまり広がっていないように感じる。
リフィル処方箋は、症状の安定した慢性疾患患者を想定している。例えば花粉症で薬を繰り返し服用している患者などにリフィル処方箋を用いれば、繰り返し通院する必要回数が減るため、まず通院負担の軽減になる。
さらに言うと、薬剤を利用している慢性疾患患者においては、医師に処方箋を交付させるためだけに通院することも少なくなく、医師においても、前回の診察にのみ基づいて投薬を繰り返す場合がある。しかも厄介なことに、医療機関においては、投薬目的の患者に対して処方箋を交付するだけでも、処方箋料とは別に再診料まで算定する。無診察投薬を行えば医師法第20条違反となるため、実際にはまともに診ていなくても書類上は再診料も算定しておかなければ体裁が整わないという事情も、ひょっとするとあるのかもしれない。
とにかく、患者にとっては薬さえ手に入ればそれで良いのにも関わらず、通院を強いられ、再診料も請求されてきた。このような現状を踏まえると、リフィル処方箋を活用し、まずは薬剤目的の受診を抑制することで、不必要な医療費を少しは削減できると考えられる。厚生労働省においても、一定期間処方箋を反復利用できる制度を作ることが、再診の効率化につながるとして、0.10%(470億円程度)の医療費適正化効果が見込まれると説明している。
他方、m3が公開している、リフィル処方箋の発行経験を問うアンケート結果によると、「発行した」との回答は、5月時点では医師のおよそ5%に留まっている。これは、医師におけるリフィル処方箋に対する消極的態度の表徴にも見えるが、なるほど再診の効率化は、医療機関にとっては、収入の低下にもなり得る。しかし医療財源については、医療費・薬剤費の高額化や、人口構造の高齢化に伴い、さらなる逼迫が予想され、効率化は避けられない。
好むと好まざるとに関わらずリフィル処方箋の制度は既に始まっており、これにより0.1%でも医療費適正化効果が見込まれるのであれば、やはり医療業界としても活用を促していくべきだろう。
せっかくのリフィル処方箋の制度が棚ざらしとならないよう、これからは患者からもリフィル処方箋の交付を医師に依頼していかなければならない。制度の周知が目下の課題だが、医師の奮励は期待できない。制度を周知するインセンティブが働くのは、例えば薬剤師ではないだろうか。